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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第3話 大都会の喧騒4(通常版)

「・・・人混みは好かんわ。」

「まあまあ、そう仰らずに。」


 宿屋から移動後、冒険者ギルドへ入り浸りとなる。大都会の様相を知らないため、とにかく情報収拾も兼ねた行動が必要不可欠となった。


「彼女達の気力を分けて欲しいものだわ・・・。」

「若さですよね。」

「若さ、ねぇ・・・。」


 掲示板を凝視し続けている妹達。前にいたシュリーベルより、各段に難易度がある依頼ばかりなので、慎重に吟味しているようだ。そんな彼女達をメカドッグ嬢達が付き従っている。隠密の如く、である。


「他のメカドッグ嬢達はどうだ?」

「情報収集に奔走中。目立ったものはなさそうですね。」

「勇者共が横槍を入れて来ると警戒してたんだがな。」


 昨日の勇者共の言わば襲撃は、後の火種になると踏んでいた。しかし、実際に目立った横槍はなさそうである。何かあれば、一際感知能力があるメカドッグ嬢達が逃す訳がない。


「もう20人ほど追加しますか?」

「お前さんの身体に負担にならないのか?」

「ご冗談を。既に死せる身ですよ。今は無限大の行動力を持つ精神体、死ぬ事すら許されない状態ですし。」

「ハハッ、そうだな。では頼むわ。」


 俺の言葉にニヤリと微笑むミツキT。精神体であるため、正に疲れ知らずの不死の存在だ。今の下りは彼女が生身の肉体と勘違いしたからだろうな。


「・・・でも、そうしてご心配して下さって、本当にありがとうございます。」

「気にしなさんな。あの様相を見てきたんだ、否が応でも気にしちまうしな。」

「フフッ、そうでしたね。」


 サラッと言うそれだが、実際には筆舌し尽くし難い様相だった。だが、当の本人は、今の生命を横臥しているとも取れる。無粋な考えだろうな。


 有限実行のミツキT。先の20人のメカドッグ嬢達と同じ様に、追加で20人を創生していく。彼女達は機械兵士の筐体がベースなため、プログラミングの応用で複製が可能らしい。これはミツキTやデュヴィジェが得意とする分野である。


 創生された追加のメカドッグ嬢達。当然精神体なため、一般的には認識できない。それを活かしての隠密部隊となる。先の10人は近辺の情報収集に、残りの20人は4人一組として異世界の情報収集に回って貰った。


「これ、本来では有り得ない業物だわ。」

「ですよね。各RPG作品では、手探り状態で旅路を繰り広げますし。敵側が裏方で暗躍しているのは、実際には察知ができませんから。」

「だが、生命の次元に回帰したお前さんなら、全てを見通す事が可能とな。」

「私に隠し事など不可能ですよ。遠方は魔王や大魔王の様相も、手に取るように分かりますからね。」


 不気味に微笑むその姿に、流石としか言い様がなかった。この場合、言わば俺達はシステム面から関わっていると取れる。しかし、相手も生命体なため、その場での臨機応変の対応は健在だ。COMやNPCでは絶対に真似ができない手法だしな。


「さて、そろそろ合流するか。」

「何時も通りで動きますね。」


 掲示板前で暴れていた妹達が、1つの掲示を掴んで受け付けへと向かう。どうやら、今回の依頼のようだ。俺達は彼女達に付き添う形なので、依頼の内容の是非は問わない。


 今回の依頼は、大都会の北側に位置するダンジョン、ここの討伐クエストらしい。大都市の近くにダンジョンがあるとか、大丈夫なのかと思ったりするが・・・。


 某ゲームの場合だと、街の地下に大空洞的なダンジョンがあった。終盤では崩壊して大変な事になったが・・・。そして、それは主人公が行ったのだと、濡れ衣を着せられたが・・・。


 ともあれ、今は大都会の喧騒に慣れる事が優先だろう。騒がしさ以前に、その全ての規模が規格外に近い。こういった場合は慣れるに限る。




 既に上級者レベルではと思わされる妹達。大都会の北側のダンジョンには、ミノタウロスや各種魔物が巣食う場所だった。そんな様相を物ともせず、怒濤の如く蹴散らし進むのだ。


 また、今回からは狩人版メカドッグ嬢達も参戦するとあり、20人規模での大パーティーとなっている。全員がバリアとシールドの防御機構があるため、一切ダメージを受けていない。毒や麻痺のトラップなども全て無効化していた。実に恐ろしい限りである・・・。


 まあでも、良い傾向だと思うのが、バリアとシールドは保険という位置付けだ。相手の攻撃の殆ど全てを、回避ないし防御で防いでいる。保険に奢れる事なく、己の実力で勝ち進んでいる証拠だ。この部分は心から安心している。


 それと、一同には身丈に合った盾を装備して貰った。回避は誰でもできるが、防御は受ける物がなければ非常に厳しい。獲物でも受ける事ができるが、完全な防御とまではいかない。某ゲームでは、盾の性能が生き残りに大きく貢献している。不測の事態は避けるに限るわ。



「自分は言うのも何ですが、大都会の近くにダンジョンとか、大丈夫なんですかね?」

「大都会の領土内全域が、ダンジョンじゃないみたいだからな。ダンジョンの崩壊で上部も崩壊とまではならないだろう。それに、地理的に領土外にあるみたいだし。」

「不穏な空気はなさそうなので、大丈夫だと思われますよ。」


 ここ最近の戦いで、魔法使いとして腕前が上達しているジェニーにアクリス。更に魔法適正がないとされていた、アーシストとダリネムも魔法使いの力を持っている事が判明した。


「私達も簡単な魔法が使えるようになりましたからね。」

「剣士や戦士だと、魔法は使い難い傾向にあるのにね。」

「定められた概念なんぞ、己の実力で覆してしまえばいいだけの事よ。」


 吐き捨てるようにボヤいて見せた。本当にそう思うわ。


 魔法は魔法使いや僧侶などの、魔法が使える人物にしかできないという。俺はこういった概念が非常に気に食わない。誰でも努力さえすれば、それなりの魔法は使えるようになると思われる。規模の問題ではプロとアマとの差はデカくなるが、それでも誰にでも道が拓けても良い筈だ。


「ミスターTさんと姉さんは、魔法が使えないみたいですけど。」

「魔法の魔の字すら分からんよ。」

「ですねぇ。まあでも、私達は特殊能力があるので、大して気になりませんが。」


 迫り来る魔物を超能力で停止させたり、電撃を飛ばして麻痺させたりしてみせるミツキT。これは俺にもできる業物だが、端から見れば魔法を使っているように見えるだろう。


「そう言えば以前、シュリーベルでエネルギーを放っていましたが、アレは何なのです?」

「あー、レールガンか。俺達の世界では、5大宇宙種族が必殺兵器の1つよ。実弾の弾丸を電磁加速させて射出させるものと、エネルギー自体を電磁加速させて射出させるものがある。あの時のは後者になるね。」

「アレだけでも、十分魔法能力と言い切れるのですけど・・・。」

「科学の力だがの。」


 俺やミツキTが魔法の概念を理解できないのと同様に、妹達は科学の概念を理解できていない様子だ。根本的に概念自体が異なるため、理解しようにもし難いだろう。まあ、この異世界では特効兵器なのは言うまでもない。


「その力ですが、魔王軍からすれば喉から手が出るほどに欲しがりそうですよね。」

「そうだな。でも、これら力だが、自身が持つ生命力に少しでもマイナス傾向の一念があれば、使う事すらできないのよ。こちらの世界で以前、悪党がその力を使おうと躍起になっていたが、最後まで使う事ができなかった。」

「生命の次元からして、プラスかマイナスか、善か悪かの一念を察知する。それにより、各種力を使えるかどうかを判別している。5大宇宙種族のテクノロジーは超大ですが、それ相応のストッパーがありますからね。」

「ある意味、身丈に合った服を着ろ、でしょうかね。」

「ほむ、良い事を言うじゃないか。」


 傍らにいるカネッドの頭をポンポン叩く。それに呆気に取られるが、嬉しそうにしている。実際に意味合いは異なってはいるが、自分に合った力を使えという意味合いは実に正しい。


「身内に語った事がある。特殊能力などを経ても、胡座を掻くなと何度も戒めている。それらに胡座を掻けば、努力する事をしなくなるのが人間だ。」

「楽して進め、それが人間の堕落した姿になりますからね。」

「何度も言っているが、バリアとシールドに関しては、余り過信はし過ぎるなとな。」

「本当にそうですね。」


 妹達に口煩く言っている、バリアとシールドの防御機構に関してのそれだ。これに慣れ過ぎると、防御や回避が疎かになってくる。地球での各種依頼時でも、同じ様に防御状態は維持し続けていたが、それでも全弾回避などの行動は心懸けていた。


「まあでも、力があるのに使わないのは愚かだ。要はそれらをどう使い続けるか、ここが重要になるしな。」

「大丈夫っすよ。そこまで私達は腐ってはいません。補佐してくれるだけで十分です。」


 カネッドの言葉で他の妹達がウンウン頷いている。常に精進し続けるその姿勢は、俺も見習わなければならないものだ。肝に銘じておかねばな。



 その後もダンジョン探索は続く。討伐対象の魔物以外にも、可能な限りの魔物を撃破して回っていった。言わばレベルアップである。枯渇しなくならないかと心配になるが、そこは大丈夫のようだ。


 これだけの下積みを経ているのだ、彼女達の戦闘力は相当なものになるだろう。それでも、修行する姿勢は一切崩さない。これこそが強者への最短ルートである。


 地球はトラガンの女性陣も、常に鍛錬を怠らなかったな。自分達でチームを組み、集団戦闘を何度も繰り返していた。この姿勢は妹達と全く変わらない。故に強者達と言われるようになったのだから。


 何時の時代も女性の底力は凄まじいものだ。そして何度も思うが、野郎の時代は終わりを迎えたに等しい。女性が輝いてこその世上であろう。野郎の俺が言うのも何だが、女尊男卑であると言い切りたいわ。


    第4話へ続く。

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