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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第13話 全ての起源1(通常版)

 推測の域だった、黒い愚者の起源。それは、ほぼ俺達が誕生に関わってしまったとなった。しかし、あえて“ほぼ”と挙げたのは、まだ完全確定には至っていない事を踏まえてのものである。


 恐らく、この竜の谷で全てが判明する。俺達の知識と経験が誕生に至っているのであれば、ファンタジー世界観の概念は大凡読めてくる。確定的とするならば、今後の流れ次第という事になる。


 また同時に、あの黒いモヤ事変が、異世界惑星の誕生に関わってしまった事。となれば、ここに住まう全ての生命体は、俺達が誕生させたとも言える。善人も悪人も全てだ。俺達の存在は、この異世界の創生者そのものだ。


 本当であって欲しくない所だが、余りにも信憑性が高過ぎる事が数多い。最早、腹を括り進む以外にないだろうな。




(小父様のナレーターの如くの一念、漠然とした内容ばかりですよね。)

(はぁ・・・もう何度でも心中読みしてくれ・・・。)


 恒例の如く、心中読みをしてくるデュヴィジェ。恐らく、周りの面々全てに読まれている。まあ隠し事ではないため、読まれても問題はない。ただ、非常に遣る瀬無いのは確かだが。


(今はまだ、仮定から抜けだせていないと取るべきですよ。)

(確かに。十中八九は的中していると言えますが、まだ完全確定ではありませんし。)

(とりあえず、この竜の谷の調査を行いましょう。多分、ここで全てが分かると思われますので。)


 それぞれの宇宙種族組がフォローをしてくれる。しかし、念話による会話なため、彼女達の心中も手に取るように読めてしまう。俺と同じく、不確定要素に対して不安なのだ。


(しかし・・・ついにドラゴンまで登場ですか。全ての事変が終わったら、ゲームなどの開発を行おうと思っていましたが、これは良い経験になりそうですね。)

(そこも大いに同意します。マスターの推測通りなら、黒いモヤ事変前までの私達の知識と経験が生きた世界になりますし。)

(マスター、例の手帳の内容も反映されているかも知れませんね。)

(ああ、宇宙戦艦群を名付けた時などに使ったアレか。)


 不確定要素に対しての不安を除けば、自分達の思いが反映された世界観に興味津々の身内達。これは俺も当てはまるため、不謹慎ながらも不安と感動が入り混じっている。


 ちなみに、エリシェが挙げた手帳は、今もベストの胸ポケットにしまってある。これは彼女やラフィナが持つ手帳に肖り、俺も持ちだしたのが淵源だ。ミツキT達の話では、俺が警護者になる前は、ゲーム開発に携わりたかったと言っていたらしい。


 今も、ふと思った事やら閃いた事があれば、この手帳に色々と書き綴っている。それがこの異世界惑星の誕生に関わったとしたら、本当に皮肉以外の何ものでもない。


(あの・・・もしかしてですが、私達の名前とかもあったりしますか?)

(いや、該当する設定群はないよ。だが、啓示やら異世界やらのネタは、思い付いた箇所に綴っていたけど。)

(私も同じです。最近の作品群は、異世界モノなどが多いですからね。少なからず影響は受けていますので。)


 各種設定群から創生されたのが、異世界組の面々か・・・。それが事実なら、本当に申し訳ない感じになってくる・・・。しかし同時に、彼らは俺達の息子や娘達になる。大切な存在だと、より一層思わざろう得ない。


(・・・まさかですが・・・、その内容を消したりした場合は・・・。)

(それは絶対にないですね。もし、黒いモヤ事変前にそれを実行したら、ゼデュリス様が思われた事が当てはまると思います。しかし、既に転生者となる黒い愚者により、皆様方は創生されていますので。)

(消すなら・・・殺す以外にない、だな・・・。)


 態とらしくニヤケ顔で言ってみると、この上ない様相といった感じで顔を青褪め、震え上がりだす異世界組。またそれは、地球組と宇宙種族組の面々も顔を青褪めている。俺の気質なら、やりかねないと思ったのだろうな。


(ぬぅーん! Tちゃんの本気モードは、精神面の超強化になるわぅね!)

(確かにそうね。ポチのノホホン度も凄いけど、Tさんが本気を出した時の雰囲気は、先の暴走状態そのものになるし。)

(特に、理不尽・不条理の概念に対しては、強烈なまでの怒りと憎しみを抱くしねぇ。)


 念話を通して、嫌味なほどに補足してくる3人。それが事実になるため、余計周りの面々は顔を青褪め、恐怖に震え上がっている。


(まあでも、さっきのT君のそれはフェイクだからねぇ。むしろ、もし貴方達の誕生に携わったのなら、己の生命を賭してでも守り通すでしょうし。)

(ああ、そこは間違いない。と言うか、誕生に携わっていようがいまいが、総意を守り通すのは間違いないがな。)


 徐に一服しながら、吐き捨てるようにボヤいた。この姿勢は、地球だろうが異世界だろうが、全く変わらない。リューヴィスの女性陣がそれだ。無意識レベルで実行するぐらいだしな。


(呆れもしますけど、何か心から憧れますね・・・。)

(本当にそう思います・・・。)

(はぁ・・・君も罪な男よね。)

(真顔で言わんで頂きたいが・・・。)


 俺の気質を再確認し、感嘆の声を挙げる異世界組の面々。特にアルディアからは、特別な一念を感じれた。その彼らを見て、呆れの声を挙げるシューム。彼女は俺と気質が似ているため、こうして通じる部分があるしな。




(・・・こちらです・・・。)


 突然の念話に驚愕する。俺達以外からの声だったからだ。その先を窺うと、先程案内役を買って出てくれた竜からだった。今も巨大な竜の体躯をしているが、その念話からして知能は俺達と同じ感じだろう。


 その彼が指し示した先には、数多くの竜がこちらを窺っている。威圧感が半端ではないが、その雰囲気は敵視ではないのは確かだ。むしろ、何処か懐かしいような感じもしてくる。


 その中で、一際大きな竜が複数鎮座していた。合計7体の巨竜で、鱗の色が“とある色”を醸し出している。それは、地球組と宇宙種族組の面々が、確実に分かるものだ。


(・・・では、私はこれで・・・。)

(待った。お前さんが仲介役を買ってくれたのなら、このまま補佐を頼むよ。)

(・・・七竜王の御前なので・・・私には烏滸がましいのですが・・・。)


 物凄く怖じ気味の竜だが、何か特別な雰囲気を感じずにはいられなかった。恐らく、これは俺達が良く使う言葉、縁と言うべきだろう。


(気にしなさんな。お前さんには、何か特別な絆を感じる。このまま、俺の補佐をして欲しい。)

(ここは、竜ちゃんの負けわぅね!)


 そう言いつつ、自身の数十倍以上の竜の巨体をバシバシ叩くミツキ。と同時に、直ぐにその手を痛そうに振っている。竜の堅固な皮膚は思いの他硬かったようだ。それを見た俺達は、不甲斐無いばかりに笑ってしまった。恒例の純粋無垢な生き様を演じる姿に、流石だとしか言い様がなかった。


(・・・お主方が異世界の闘士のようだな・・・。)

(失敬、先ずは自己紹介を。俺はミスターT、身内達は・・・。)


 そう言うと、我勇んでといった感じで自己紹介を始める一同。それに呆気に取られる巨竜。いや、この場にいる竜達全てが呆気に取られていた。


 と言うか、案内役を買って出てくれた竜もそうだが、この巨竜も普通に念話が使えている。つまり、善心を持ち、宇宙種族に近しい力を持った存在だという事だ。これは、ここにいる全ての竜族が該当するだろう。


 ただし、その巨竜達は“今は”名前を述べる事はしなかった。それを窺い、俺の考えていた事が確実に当たったと言うしかない。




 その後、呆然とその様相を眺めるしかない。ヲタク気質の身内達が、竜族達との対話を開始している。念話を中心としているが、それを普通に繰り出している姿には、ただただ凄いとしか言い様がない。


 この念話の手法は、地球上で俺達だけしか使えないと思われていた。他は5大宇宙種族の面々が顕著だが、彼らと面識があるのは俺達だけである。そもそも、善心がなければ使えない手法なため、その使用者は非常に限られてくる。


 まさか、この異世界でも通用する手法になるとは、実に驚くしかない。それに、俺達からすれば、唯一の利点とも言えるのが何とも・・・。


(念話が一種のキーパーソンな存在と。)

(そうだな。王城連中には絶対に使えない業物だ。それに、竜族の概念は、その殆どが善心に満ち溢れている。某シミュレーションゲームだと、暗黒竜などの悪心に満ちた存在がいるがな。)

(正に力に“奢れる者”ですよね。)

(ハハッ、本当だわ。)


 近場の岩に座り込み、他の面々を見守り続ける。今も念話による対話は続いていた。特に5大宇宙種族の面々が、率先垂範で対話を繰り広げている。竜族は宇宙種族と何ら変わらないからだろうな。


(と言うか、七竜王方との対話は、マスターも参加された方が良いと思いますけど。)

(俺は頭に立つ存在じゃない。その大役は、宇宙概念が働く5大宇宙種族に任せるわ。)

(私達は実働部隊になりますからね。)


 身内の全てが念話による対話に臨んでいる様相、誰1人として声を発していない。実に不気味な感じだわ。しかし、念話は心中の思いも透写するため、胸襟を開いての対話には打って付けのものとなる。


 それに、念話自体は双方の生命の次元からの会話となるため、お互いどんな種族であろうが確実に話せる。魔物娘達との対話が正にそれだ。その彼女達は、俺の傍らで寛いでいる。


(あくまで設定群の話になりますが、よくぞ怖じずにいますよね。)

(魔物娘さん達か、確かにな。)

(今思われた、生命の次元からの対峙なら、どんな種族であろうが対等ですからね。王城で暗躍していると思われる、黒い愚者ですらそうですよ。)

(まあ確かに。)


 対等の立場、か。ラフィナが挙げたそれは、敵味方問わずのものだろう。しかし、俺の場合だと、どうしても敵と味方では目線がズレてくる。全ての生命体と捉えれば、その限りではないのだが・・・。


(マスターは生命体の次元を除けば、敵という概念に強烈なほどの怒りと憎しみを抱きますからね。確かに理に適った概念ですが、時と場合では損をする事もありますし。)

(明確な敵対者には、俺は絶対に容赦はしない。偽勇者共・伯爵共・男爵共がそれだ。正直、アレらは生かしておくだけ無駄そのもの。災厄の目は摘んだ方がいい。)

(相変わらずですよね。)


 呆れ気味に溜め息を付く2人。俺のこの姿勢は、彼女達に何度も見せてきた。その果てが、自己嫌悪となるのが何とも言えないが。それでも、この姿勢だけは崩したくない。



(・・・貴方様、損な生き方をされますね・・・。)


 ふと気付くと、遠方からノッシノッシと歩み寄る竜。俺達の道案内をしてくれた彼である。その彼が念話を通して、エリシェやラフィナの様な語りをしてきた。


(お前さんにも読まれるとはの。)

(・・・それに、私の性別は女です・・・。)

((はぁ・・・。))


 とんでもない事を語ってきた。道案内の竜が男性ではなく女性だったのだ。それに気付くと同時に、エリシェとラフィナからは呆れの溜め息を付かれた。殺気の一念と共に・・・。


(気付かなかったのは、マスターだけだと思いますよ。)

(それに、この竜の谷の比率は、男1に女9ですし。)

(何その様相・・・。)


 2人の言葉を聞いたら、ミツキがボケをカマし、ナツミAがツッコミを入れる、その時の言葉が自然と出てしまった。その俺の声を聞いた総意から、嫌味なほどのニヤケ顔の一念をぶつけられてくる。


 竜族の設定などは分からないが、大凡が男尊女卑の流れが色濃いと挙げられる。この流れは全ての種族に該当するとも。しかし、この異世界惑星では、明らかに女尊男卑の流れだろう。流れ着いたという意味合いを除けば、リューヴィスの全人口が女性で占めているのがそれだ。


 もしこの様相が俺達を淵源とするなら、その発端は俺にあるのかも知れない・・・。


    第13話・2へ続く。

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