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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第3話 大都会の喧騒3(通常版)

「へぇ・・・結構ありますね。」

「私達の装備も一新しましょうか。」


 大都会の広さに翻弄されつつも、何とか防具屋に辿り着いた。この大都市での一番の規模を誇る店舗だ。その品揃えは、他に類を見ないほどのものである。


「お嬢さん達は自身の装備を整えてくれ。俺はメカドッグ嬢達の筐体を見繕ってくる。」

「お嬢さん・・・ですか。」


 俺の言動に不服そうに見つめてくる。先のミツキTの言動もそうだが、その畏まった様相に違和感を感じているのだろう。


「向こうでの言動はこれが当たり前だったよ。今までは形作っていたが、お嬢さん方の強さがモノホンだと分かったんでね、当然の流れさ。」

「ですね。それに私達は嘘は付けないクチなので。元来から敬語の連発でしたし。」

「正に“敬語者”そのものだわな。」


 簡単なボケを言い笑い合う俺とミツキT。それに呆気に取られる妹達。だが、何処か安心した表情を浮かべだしつつ、それぞれの行動をしだした。


 さて、問題は山積みだ。先ずはメカドッグ嬢達の筐体となるものを見つけねばならない。彼女達の超絶的な行動力をすれば、ミツキTの様な全身鎧では隠密に適さない。かと言って防御力を減らすのは得策でもない。


 ここは可能な限りの静音性を維持しつつ、ウィークポイントとなる胸・腰・両腕・両脚を守る防具を選ぶべきだろう。全身鎧はスーツ的なものがいい。俺が着込んでいる万能スーツと同じ感じが無難か。


「宿屋に10人ほど待機させているんだが、それだけの防具は揃うか?」

「倉庫も掻き集めれば、100人規模もご用意できます。臨時のご注文が入った際に、直ぐに対応できるようにしておりますので。」

「助かるわ。」


 流石は大都会一の防具屋、その規模自体もケタ外れだった。これなら、10人分の防具が揃える事ができる。


 何故最初に全身鎧を選んだのか。それは身体の脹らみを再現させるためだ。ミツキTの場合だとそれが叶ったが、今度のメカドッグ嬢達は事情が異なる。隠密行動をさせるのを主題とするからだ。


 ミツキTとメカドッグ嬢達の精神体は、実体がないため幽霊的な存在となる。何らかの筐体に付着できるなら、それを動かす事は可能だ。問題は、生物らしさを表現できるかどうか。


 そこで選んだのが、狩人が装備する全身服。金属性の装備は胸と脛しかないが、その布地は何層にも折り重なれているため、かなりの硬さを誇っている。つまり、下手に潰れる心配がない事だ。


 試しに1着ほど見繕い、ミツキT・アクリス・ジェイニーにご足労して貰った。試着室に入り、ヒドゥン状態のメカドッグ嬢1人を表に出し、その彼女に見繕ったものを着て貰う。結果だが、布状の衣服でも生物らしさを表現する事は可能だった。


 当然、外部から表情を窺わせる訳にはいかない。目元は可能な限り黒い状態を維持し、頭は頭巾で覆い被さるようにする。精神体故に実体がないのだが、付着する事で“元となる存在”は具現化できる事が判明もした。これなら、ミツキTも軽装備に換える事ができるだろう。



 防具の方は何とかなったので、次は武器の方になる。こちらはメカドッグ嬢達の機動力を考えて、ダガーに弓矢で良いだろうか。俺達地球組は魔法が使えないため、物理的な遠距離攻撃を行うしかない。


 幸いにも、メカドッグ嬢達の戦闘ロジックは、地球でデュヴィジェ達が色々と組んでくれていた。万般に渡って行動ができるようになったとの事なので、ダガーと弓矢で十分だろう。彼女達のウリは、機動力による高速戦闘になるしな。


 妹達は既に選び終えている。シュリーベルで装備を整えた武具を、よりアップグレードした感じだ。それでも、自身が強くならなくては意味がない。そこは把握しているようである。




 全ての装具が揃ったので、宿屋へと向かう俺達。冒険者ギルドが手配してくれた、大都会で一番大きな宿屋である。そこで、改めて10人のメカドッグ嬢達を具現化させる。予め、主軸となる防具をソファーに置き、そこにメカドッグ嬢の精神体を付着させていく。


 ただ置かれているだけの狩人服が、一気に膨らみだしていく。女性特有の身体のラインを醸し出していく様を見て、妹達は驚愕の表情を浮かべていた。かく言う俺も驚愕している。他の9人も同じ作業を行い、精神体から実体化させていった。


 そして、残りの防具全てを装備させ、晴れて異世界版メカドッグ嬢達が完成した。地球での機械兵士の筐体を使っていたのとは別の姿である。これなら、この異世界でも縦横無尽に活躍ができるだろう。


 宿屋の方には追加10人分の代金を支払った。後から駆け付けると言っていたので、それを実行した感じである。あのまま黙っていたら、無賃宿泊状態だったしな。


 ちなみに、メカドッグ嬢達10人とミツキTは、食事などの外部の補給が一切いらない。元から無限大の行動力を得た精神体なため、無尽蔵に動き回れる。疲れ知らずの完全無欠と言えた。


「何と言うか・・・マスターの常識は、私達の非常識と言うべきか・・・。」

「まあそう言いなさんな。これで不測の事態の対策は申し分ない。お嬢さん達に1人ずつメカドッグ嬢を護衛に着ける。これなら単独行動も可能だろう。」

「勇者一行の横槍対策ですね。」

「悪党は、陰でコソコソと暗躍するのが通例だからな。何時何処で襲撃されても大丈夫なようにしないと。」


 隠密メカドッグ嬢達の具現化は、今後の戦力には欠かせない存在になる。異世界への対策は万全にしておかないといけないしな。


「ただ、最低でも2人一組で動いた方がいい。メカドッグ嬢達が2人着くから、4人での行動となる。これなら連中にも引けを取らないだろう。」

「他の10人の方はよろしいのですか?」

「残り10人のメカドッグ嬢達は、ミツキTが指導で情報収集に動いて貰う。ヒドゥン状態・・・つまり姿隠し状態なら無限大に動ける。」

「10人が姿現し、10人が姿隠し、見事な布陣ですよ。」


 最初は付いて来れなかった彼女達も、今では俺達の世界観が定着しつつある。そもそも、護衛などを長期間行うと、それが警護者の礎になるのは言うまでもない。つまり、彼女達も警護者の訓練を受けていると言っていい。


「ミスターTさんは単独で行動されるので?」

「俺は誰かと組んで動こう。中心で据わる人物が必要だろうし。」

「連絡なら、メカドッグ嬢同士での意思の疎通ができますから、問題はありません。」

「便利っすよね、それ。」


 メカドッグ嬢達の連携に感心する一同。まあこれは、意思の疎通たる念話があってこそのものである。各ペンダント効果を持つ俺が、ミツキTとメカドッグ嬢達とリンクする事で発揮できる業物だ。今の妹達にはできないものである。だからこそ、専属の護衛を着けたのだ。


「よし、明日からはここで修行を繰り返すか。掲示板にあった依頼も、相当な難易度のものばかりだったしな。」

「ゆっくり進んで行きましょう。」

「やったりますぜ!」


 カネッドの言葉に雄叫びを挙げる妹達。出逢った頃の初々しさは全くなく、今では歴戦の傭兵軍団のようである。


 さて・・・今後どう出るか・・・、変な興味が湧いてくるわ・・・。




 翌日からは、団体での行動を開始した。妹達10人にメカドッグ嬢達10人、合計20人の冒険者軍団となる。更に護衛としてミツキTがおり、裏では10人のヒドゥン・メカドッグ嬢達が待機中だ。


 俺の方は単騎でも問題なく動けるため、オブザーバー的に動く事にした。今は彼女達の方が心配事の種でもある。まあ、ミツキT達がいるので、全く以て問題はないが。


(ぬぅーん! 座標の特定ができたわぅー!)

(へぇ・・・早かったな。)


 突然の念話に驚く。それは地球のミツキからであり、どうやら異世界たる惑星の特定が完了したようだ。


(ですが、まだ飛ばせるまでには至っていません。これ、結構な距離がありまして。)

(下手をしたら、亜空間に飛び出す恐れがあるそうですよ。)

(ワープ航法ですら難しい感じか、難儀だな。)


 ワープ航法は、先の黒いモヤ事変で実際に使った戦術だ。天の川銀河の端まで赴くのには、従来の航行速度では数百年や数千年掛かる恐れが出てくる。ワープ航法や転送装置での移動しか不可能となる。


(まあでも、絶対的に不可能ではありませんからね。何とか解決させてみせますよ。)

(アレだ、お前さん達も来たくてウズウズしているんだろうな。)

(オフコースわぅ!)


 気迫で物語ってくる。念話を通してでも、異世界への興味が沸々と伝わってくる。しかし、一歩間違えば大変な事になりかねない。


(そこは一切合切お任せを。警護者の端くれ、無様な醜態は曝しませんから。)

(ですね。ただ、魔王と大魔王でしたか、相手が理不尽・不条理な展開を示すのなら、当方もそれなりの力を示しますけど。)

(何となく読める、言わんでいいよ。)


 俺の言葉にニヤリと微笑むヘシュナとナセリス。念話を通して、その様相が伝わってきた。特にヘシュナは“場の力の出し加減の触り”を心得ているため、最大限の力を発揮する事ができる。帝王の如く振る舞うのが想像できた。


(ところで、ルビナや三姉妹はどうした? 何時もなら食い付きそうな感じだが。)

(あー、何でも“来るべき時”に備えて獲物の作成中との事で。)

(・・・なるほど、分かった。)


 間違いない、こちらに来た時に対応できる獲物の作成だろう・・・。地球でも四天王と共に数多くの獲物を作ってきた。今回は異世界用の特殊兵装を開発していると取れる。


(しかしアレだ、魔法の概念はよく分からん。)

(推測するに、生命力から繰り出されるのが魔力、と取れると思います。ミツキT様が一番ご理解されていると思いますよ。)

(なるほど、この何とも言えない感覚はそれだったのですか。)

(当の本人がアッケラカンとしてるのがな。)


 ヘシュナが言うそれは、ミツキTが精神体の生命体だからという事だろうな。しかし、当の本人はそれに疎いようである。確かに生前の彼女の雰囲気を踏まえると、魔法使いよりは戦士などが向いているとも取れる。


(推測ですが、ドラゴンハート一族とカルダオス一族でしか、魔法適正能力はないと思います。ギガンテス一族・ガードラント一族・デュネセア一族は、戦士系の家系とも取れますし。)

(戦士系と言うより、超能力系とも取れますね。魔法の概念は超能力とは異なる感じだと推測できますし。)

(お前さん達でも、魔法の概念には理解に苦しむ感じか。)


 地球人の俺やミツキTからして、デュヴィジェやヘシュナ達5大宇宙種族の概念は、とても理解できるものではない。その彼女達ですら、異世界の魔法の概念は理解し難いようだ。


 確実に分かるのは、魔法の概念は生命力に帰結している事だ。魔力自体も生命力から発するとも取れる。よく挙げられるのが禁呪法だろう。己の生命力を消費して、多大な魔力を引き出すというアレだ。


(人体練成は禁じられている筈わぅ!)

(何その某錬金術師の謳い文句。)

(錬金術は魔法に近い感じだからねぇ。極め付けが賢者の石だし。)

(野郎の石はないわぅか?!)

(それ、実に嫌な石よね。)


 この美丈夫は・・・。何処からどうボケが出るのか分からない。しかし、その一撃は周りを爆笑させるには申し分ない威力のようだ。何ともまあ・・・。


 久方振りの念話だが、ホームベースとなる地球の感覚を補給できた感じだ・・・。


    第3話・4へ続く。

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