第12話 竜の里4(キャラ名版)
時計回りの進軍をしつつ、目的地の一歩手前へと辿り着く。そこは、明らかに隠蔽された領域だと直感できた。各作品群を例えるなら、濃い霧の先に目的の場所がある、と言う感じになる。この様相を決定的だと思わせるのは、その先から魔物が現れるからだ。
ミツキ(その時代、世界は色の無い濃霧に飲み込まれた。)
ラフィナ(魂を捧げよ、ですか。)
デュリシラ(悪魔が発生し続けている、と。嫌なほどに当てはまってますよね。)
恒例のボケが出たのかと思ったが、その先の補足が今の現状を的中させている。苦笑いを浮かべたいのだが、この現状がそれをさせまいといった雰囲気を醸し出していた。
ミスターT(・・・形振り構わず、力を使うぞ。バリアとシールドを三重に重ね掛けする。物理と魔法の攻撃からは、絶対にお前さん達を傷付けたりはさせない。)
デュヴィジェ(了解。ただ、精神攻撃の場合は、小母様の治癒力が頼みとなりますが。)
ヘシュナ(委細承知。)
万全の体制で突き進むと一同に語る。それに力強く頷いてきた。同時に、バリアとシールドの防御機構を三重に重ね掛けを行う。
普段は身体が淡い色に包まれるのだが、三重の重ね掛けを行うと、ハッキリと防御機構が働いていると窺えた。それぐらいしないと、この状況は非常に危険だ。しかし、このバリアとシールドは、物理攻撃と魔法攻撃しか防げない。精神攻撃は実質、貫通攻撃という感じだ。
ここは、治癒の能力が使えるヘシュナ頼みとなる。また、他の宇宙種族組も同技が使える。回復支援は彼らに任せ切るしかない。下手をしたら、俺達全員が精神攻撃を受ける可能性が出てくる。その場合は最悪のパターンだわ。
現状で出来得る限りの支援を行い、一同でゆっくりと濃い霧の先へと歩みを進めていった。
我が目を疑った・・・。眼前に広がるのは、大森林だと思われた場所が、深い渓谷となっていたのだ。そして、予想していた事が見事的中した。大空を飛び回るのは、様々な竜である。そう、間違いなくここは竜族が住まう場所だ。
今となっては補足となるが、そもそも自然的に濃い霧が発生する事は希である。更にそれがその場に停滞していた。意図的に発生させたとしか思えてならない。それに、高度な魔法を使う存在でなければ、その様な芸当は到底できないだろう。
ファンタジー世界観では、竜族は全ての生命体の頂点に位置する最強の種族。であれば、何でも可能であるという事になる。これが、黒いモヤが創生させたとしたら、俺達の知識が生み出したと言えてくる・・・。
ゼデュリス(・・・後付けになりますが、1つ伝承を挙げてみます・・・。)
ミスターT(・・・このセレテメス大陸には、何処からともなく竜が現れる、だな。)
ゼデュリス(お・・お見事です・・・。)
先読みで語ってみたが、それに静かに頷く彼女。普通なら茶化しが入る可能性があるが、眼前に広がる様相が娯楽の考えを起こさせない。今はただただ、驚き続けるしかない。
ラフィナ(一応・・・ゲームの設定では、各竜族は類希なる力を持っているとなります。しかし、それらは設定上の話であり、実際にそうだとは言い切れません・・・。)
ミスターT(・・・俺も1つ、嫌な推測を挙げてみる。結論を言えば、これは俺達が作り出した。黒いモヤと対峙し、それが時間と空間を超越して、ここに生まれ変わったとは、以前挙げた通り。だが、もしその間にアイツが俺達の知識と経験を吸収したとしたら、この異世界惑星の成り立ちが全て説明できてくる。)
デュリシラ(・・・本来なら大いに否定しますが、今は大いに肯定させて下さい。マスターが仰った推測は、事実だと言わざろう得ません。)
俺の推測に再度絶句する異世界組の面々。だが、地球組と宇宙種族組の面々は、ただただ頷くしかないようだ。俺も含めて、余りにも当てはまる事が多いからだ。それに、この不可解な世界観が現実である以上、そう考えた方が全ての辻褄が合ってくる。むしろ、そうしろと思考自体が促してもいた。
ミュティナ(だとしたら、黒いモヤは進化をしているという事ですね。同時に、弱体化をしたとも言えてきます。)
ミスターT(そうだな。純粋無垢な無明の力を維持していれば、究極の破壊神となっていた。そこに俺達の概念が加われば・・・。)
ルビナ(知識と経験を経て成長はするが、要らぬノイズが入り真の力を発揮できない、と。)
推測の域だった思いを語った事が、それが現実のものとなったと確信できる。実際に王城に黒い愚者こと黒いモヤがいるのを感じるからだ。同時に、宇宙種族組にとっては、確定的な必勝論を立てる事ができる。
ヘシュナ(・・・少し悪態を付きます。はぁ・・・これで、全てが確定して楽ができるというものになりますわ・・・。)
ナセリス(フフッ、私も同伴します。本当にそう思いますな・・・。)
デュヴィジェ(悪態と言うより、安堵感と言う方が良いかと。)
ミツキ(なぬぅー! 聞き捨てならんわぅー!)
言うか否か、脱兎の如くデュヴィジェに肉薄するミツキ。そのままの勢いで、彼女の肩へと乗り掛かり肩車状態になる。襲撃されるのかと思ったデュヴィジェだが、ミツキの意外な行動に呆気に取られている。
何故、ヘシュナとナセリスが悪態と言う名の安堵感を出したのか。それは、黒いモヤが形を成した者になったと確定できたからだ。今までは王城に感じられたそれは、ただ漠然とした感覚でしかなかった。それが生命体だと確定できたのだ、これ程の安堵感はない。
同時に、生命体であれば倒す事が可能となる。そもそも、万物全てには生老病死の理が顕然と備わっている。黒いモヤの時点では形を成さなかったため、ただ漠然と超越的な規模の存在でしかなかった。それが人型の生命体になったのだ、確実に倒せるという事だ。
だが、俺達の知識と経験を吸収したのなら、実質的に最強のラスボスとなる。天の川銀河にを覆い尽くす程の黒いモヤが、凝縮されて黒い愚者になった事を踏まえれば、相当な戦闘力を持っていると確信できる。
倒す事は出来るだろうが、確実に苦戦させられるのは言うまでもない。
シューム(いいわねぇ~、ゾクゾクしてくるわ。)
ナツミYU(眼前に迫る、超絶的な絶望感。でも、その規模は天の川銀河クラスではなく、人間型となるなら、殴り合えますよね。)
ミスターT(お前さんのその気質、マジで分けて欲しいわ・・・。)
現状を踏まえれば、圧倒的な絶望感に支配される。俺達が窺ってきたラスボスの中で、確実に最大最強の存在だ。尻込みしてしまうのは言うまでもない。だが、シュームとナツミYUの2人は、更なる強敵に興味津々の様子。この姿勢は本当に見習いたいものだわ・・・。
デュヴィジェ(そんな怖じている小父様に朗報を。今回も特効薬は小父様の殺気と闘気の心当てになりますよ。)
ヘシュナ(確かにそうですね。相手の凝縮度を踏まえると、物理と魔法の攻撃は効き難いと思われますが、精神攻撃は痛烈に通じると思いますし。)
デュヴィジェ(それに、今回の規模は人間サイズ、面と向かっての放ちが可能でしょう。もし、あの黒いモヤに戻ったとしても、規模の拡大だけで知識と経験は失われると思います。)
エリシェ(人間型に凝縮したからこそ、得られる力ですか。)
自信有り気に語るデュヴィジェ。ヘシュナとエリシェも補足をしてくれた。今回の特効も俺が決め手らしい。まあ、相手が生命体であれば、殺気と闘気の心当ては必ず通じる。特に規模が人間型になるのなら、カルテット・キャノンによる増幅装置はいらないだろうしな。
デュヴィジェ(まあでも、不測の事態としては、そこに魔力と魔法が重なると、厳しくなりそうな気もしますけど。)
ミスターT(そのための、この異世界組の総意の力、だろう?)
デュヴィジェ(フフッ、流石です。相手は烏合の衆。突飛して力を持つのは黒い愚者のみ。私達は総じて互角の戦闘力を持ちますし。後は団結力ですよ。)
肩車状態で歩みを進める。肩上のミツキが周辺の様相を窺い、不測の事態に備えて構えるデュヴィジェ。それを見た一同も、彼女に付き従い歩みを進めて行った。
ミツキ(ぶっちゃけ、最大戦力を地球に残しているのがミソですからね。私達は、まだまだ本気を出していませんし。)
ナツミA(ポチのあの本気を出せば、更に有利になるからねぇ。)
ミツキ(暗黒面の兆しがあるので、多用は禁物ですけど。)
ミスターT(何とも。)
ミツキの半暴走状態を挙げるナツミA。確かにその状態なら、全てにおいて相手を圧倒する。俺など話にならないレベルの戦闘力だ。しかも、そこには不殺の精神が置かれない。相手にとって、存在全てが特効薬になる。
ラフィナ(まあ今は、この竜の谷と言うか、竜の里ですか。ここを探索しましょう。これらが全て私達から生み出されたのなら、何処かに思い当たった内容があるでしょうし。)
ミツキ(ハッ?! まさか・・・女性陣の多さは、Tちゃんが影響しているわぅか?!)
エリシェ(大いに有り得ますね・・・。)
ミスターT(勘弁してくれ・・・。)
ミツキの茶化しを聞き、女性陣からの殺気に満ちた目線が投げ付けられる。この場合、確実に俺にも原因があるため、一切否定はできない。だが、その殺気の目線は、黒い愚者にも通用するかもと思ってしまう。
ミスターT(・・・切り札は、身内の女性陣、か。)
シューム(フフッ、そうなるわね。ならば、君に受けた借りを返す時が来たのかもね。)
ナツミYU(黒いモヤ事変で、大いに助けられましたからね。)
ミスターT(見返りを求めて動いた訳じゃないんだがな・・・。)
本当にそう思う。それに、仮に見返りを求めて動いていたら、そこには私利私欲が発生する。つまり、悪い言い方では悪心に帰結するため、全てにおいて力が出せなくなってくるだろう。
ただ只管に、目の前の苦悩する存在を支え抜く、それが警護者の理だ。この異世界惑星に当てはめるなら、探索者の理である。漠然と動いているように見えても、後々考えれば全て意味がある行動となってくる。
こうしたやり取りこそが、遠回りに見えるようで最短で進んでいるに違いない。それが確実に効果が発揮するかは別として、大事なのは考えて実行する事、これになる。その繰り返しが個々の生き様に帰結していくのだから・・・。
本当に、こうして進める事に心から感謝したい。周りあっての自分自身だわ・・・。
竜の谷を進む俺達に、上空を飛行する竜達が舞い降りて来る。それに殺気立つ一同だが、自然と彼らに右手を差し出していた。その手に鼻先を近付けると、何と頭を下げてくるのだ。これには、我ながら驚愕してしまう。
ウインド(竜と同調できるというのは何とも。)
ダークH(念話の効果が如実に現れていますね。)
ミスターT(俺達の世界の場合だと、竜族は知能がズバ抜けて優れているという設定だしな。)
傍らの2人が“小さく”驚いている。以前伺えたのだが、この2人もヲタク気質を持つ存在だとの事だ。警察庁長官の大任を拝されているのに、それでいてヲタクというのは何とも。
ミスターT(彼らの加勢があれば、技術力を除いた部分での大いなる力になる。問題は、彼らが加勢してくれるかどうかだが・・・。)
ラフィナ(大丈夫だと思いますよ。それに、マスターの推測が的中しているなら、私達は創生者になりますからね。生命の次元で伝わっているのなら、正に伝説級の扱いをされるかと。)
ミスターT(伝説級、か・・・。)
本当にそうなるのなら、ある程度は楽になるのかも知れない。啓示を受けたエメリナ達以上の存在へと昇格するだろう。この異世界惑星での重要なキーパーソンとなる。同時に、ここの全ての概念への責任を持たねばならなくなる。
ミスターT(・・・どの道、警護者になった時から覚悟は決めている。前へ進むしかない。)
ミツキT(そうですね、あの時から全く変わりませんし。今は進みましょう。)
最初に会釈をしてくれた竜に案内され、俺達は先へと進む事にした。今はそれしかできないのが実状だ。
眼前に迫る未知の領域、それに不安の色を隠せない。これは、俺を含めて、この場にいる全員が同じ思いだろう。一歩間違えば、大変な事に陥る。
しかし、だからこそ挑む価値も十分ある。最後は俺達の一念次第という事だ。
第13話へ続く。




