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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第10話 魔物達と愚物と4(通常版)

 野生の魔物を倒しつつ、海岸線を突き進む。沖合いからの援護射撃も功を奏してか、順調に進軍ができている。新たな仲間魔物達も出揃ってきており、異種の生命体同士の混成部隊とも言うべきか。


 その中で気付いたのは、魔物娘達の影響からか、性別が女性の魔物達が多い。敵対する野生の魔物の殆どが、男性であった事も印象深い。本来なら、身体を調べなければ判明しないが、念話を中心とした会話により直ぐに判別ができている。と言うかこれは・・・。


(X・X、X・Y、のそれですか。)

(心中読み・・・まあでも、今は助かる。そう、彼らを見ると、約8割が女性だ。野郎の数が圧倒的に少ない。)

(私達が同士も、ほぼ全員が女性型魔物ですからね。好戦的な魔物ほど男性型ですし。)


 過去に挙げた、男女比率ウンタラの一件。基本の性別が女性なのは周知の通りで、そこに突然変異的要素が重なり男性となるらしい。X・XとX・Yのそれが顕著だろう。


(・・・何れ、野郎は死滅する可能性が高い、だな。)

(ん? 何か嬉しそうなのは気のせい?)

(野郎の俺が言うのも何だが、当たり前だと言いたい。地球ではトラガンの女性陣に、ここ異世界惑星ではリューヴィスの女性陣に降り掛かった災厄。その淵源は野郎だ。こんなカスな存在、消えてしまえばいい。)


 2つの大きな事変を思い出し、再び怒りと憎しみが沸き起こってくる。自分も当事者連中と同じ性別故に、その一念は日を増す毎に強くなっていた。


(ま・・まあそれもあるけど、異性がいないと新たな生命も誕生しないんだけどね。)

(そこはアレですよ、クローン培養による単一性別での増殖と。)

(地球では実現できていませんが、5大宇宙種族のテクノロジーがあれば可能かと。)

(十分可能ですが、倫理に反しているので行いませんよ。)


 恐ろしい事を平然と言う面々。しかし、淵源は俺の発言にある。諸々の当事者も男性なため、俺にも十分責任はあるのだから。


(んー・・・責任があると仰るのなら、もう一度私達に“母親”になれと言う事です?)

(・・・本気で言ってるのか・・・。)

(あら、私達は何時でもOKだけどねぇ~。)


 今以上に恐ろしい事を言い出す2人。それを伺った地球組と宇宙種族組の瞳が、恐ろしいまでに妖しく輝いている。対して、異世界組の面々は大赤面状態だ。


(Tちゃんも悩ましいわぅね! ウッシッシッ♪)

(悩ましい以前に、心労がたたって過労死しそうよね。)

(本望だという一念もあるみたいだし、良いんじゃない?)

(この野郎・・・。)


 恐ろしい発言と茶化しが飛び交う。今も大赤面状態の異世界組だが、魔物娘達と仲間魔物達は笑っていた。本能に従って生きる彼らは、子孫を残すという部分には違和感はない様子か。


(・・・懐かしいですね。もし、病魔を克服できたら、恋人になれればと語り合った事が、昨日の様に思い起こせますよ。)

(ああ・・・そうだったな。)

(あの時のTちゃんとミツキT様は、何処からどう見ても恋人に見えていましたよ。お互いに相手を思い遣る姿に、陰ながら何度泣いた事か。)

(同じく。T君はミツキTさんを何度も励ましていましたが、生命体の帰結が死去という部分は避けられないと悟っていましたし。)

(・・・皮肉だわな。その出来事により、後のトラガン・レディースとリューヴィス・レディースを支えるに至ったとは。)


 徐に一服しながら当時を思う。昔があったからこそ今がある、それが明確な歴史であろう。しかし、当時は如何なる手段を投じてでも、ミツキTを救いたいと思っていた。それが叶う事がなかったが、2つの陣営の女性陣を救う事で叶ったのかも知れない。


(・・・今後も、どんな様相になろうが、あの出来事が俺に絶対に膝を折らせはしない。上辺の右往左往とシドロモドロにより、一同には迷惑を掛けるが、こんな俺だと理解してくれれば幸いだ。)

(何を今更と言った感じですけどね。マスターの自己嫌悪はステータス化してますし。)

(それらを共にする事で、私達も強くなっていますし。)


 確かにそうだろう。2人が俺の愚痴を聞いてくれるようになってからは、目覚ましい成長を遂げている。特に大企業連合の総帥と総帥補佐として、遺憾なく発揮していた。それが何なのかと問われると、詳しい事は挙げられないのだがな・・・。


(Tさんはあの時から、全く変わられませんね。自分が定めた信念と執念を、絶対に曲げる事がない。その淵源に私が関わっているのには、少々申し訳ない感じがしますが、それが皆様方を支えるに至るという。)

(後にそれが、全ての生命を守るための旅路に至る、本当に小父様は凄いですよ。)

(ハハッ、よしてくれ。俺は一介の凡夫だ、特別な奴じゃない。)


 特別な存在、か。それを考えると、各作品群の主人公を思い浮かべてしまう。


 各作品群の主人公やその盟友達は、特質的な力を持つ存在で登場する。最強の力と題する能力を持ち、圧倒的存在感で突き進む。対して俺の場合は、各ペンダントを除けば普通の人間そのものだ。何の力もない。


 俺の力は、人徳や殺気と闘気の心当てなどが挙げられるが、やはり特質的な力ではない。地球では大して気にならなかったものだが、この異世界惑星にいる現在、その特質的な力に大いに憧れてしまう。



(んー、Tさんらしくないですねぇ。Tさんのウリは、その絶対に揺らぐ事がない執念と信念です。そこから派生して人徳となり、心の強さから発せられる殺気と闘気の心当てとなる。既に最強クラスの力を持っているじゃないですか。)

(得手不得手は誰にでもありますからね。私達は力の出し加減の触りのみ特化している。腕相撲だけなら絶対に負けませんが、その他は実に並ですよ。)

(・・・俺は一歩間違えば、愚物と同じに成り下がる所だった訳だな。)

(愚物と言うよりは、相手より優位に立ちたいと思う一念ですよ。それは誰もが持ち合わせるマイナスの力ですし。)


 やはり、無意識的に最強の力という概念に酔い痴れだしていたようだ。周りには多岐多様の力を持つ面々が数多い。その彼らの力を目の当たりにして、自分もそれを使いたいと思うのが淵源だろうな。


(その考えを返すなら、私もTさんの心の強さに憧れているんですけどね。上辺の右往左往はあれど、根底は絶対に揺らぐ事がない。病床時の私に一撃を放った、あの時が淵源になりますし。)

(本当ですよね。あの超劣勢の状態で、どうして大丈夫だと豪語できるのかと。それは既に超絶的な心の強さを持っていたからですよ。)

(そうかねぇ・・・。)

(小父様は自分視点故に、己自身を見れないのもあります。私達も同じですよ。しかし、端から見ればそれは凄まじい力ですし。)

(灯台下暗し、だな。)


 本当にそう思う。ある程度は感じる事はできるが、己自身の淵源を見る事は不可能だ。これは別の誰かに見て貰うしかない。だが、人それぞれで見方は変わってくる。


(・・・何を下らない事で悩んでいた、だな。)

(はぁ・・・結局の所、恒例の自己嫌悪ですよね。でも、そうして己と対峙し、私達と共に考え悩み抜く。その繰り返しが今になりますし。)

(良いではないですか。最強の力に憧れて、己自身を卑下する。しかし、それが起爆剤となって、原点回帰する事ができた。何1つとして無駄な事などありませんよ。)

(・・・ありがとな。)


 周りあっての自分自身、そう痛感せざろう得ない。エリシェとラフィナを筆頭に、周りの面々には本当に迷惑を掛けっ放しである。しかしそれが、彼らの成長に繋がるのだから、実に皮肉な話だわ。


(ここまで不安定になっているマスターを、初めて見ましたよ。)

(粗方落ち着いたら、ペンダント効果据え置きで寝る?)

(・・・そうするかの。先の仮眠だけではダメみたいだしな・・・。)

(了解。茶化し抜きで、君の治癒を最優先するわね。)

(その間の各行動などを決めておきませんと。リーダー不在では厳しいですし。)


 至って真面目な言葉を述べる2人。普通なら茶化しが入るのだが、俺の様相が相当危ういと思えたのだろうな。本当に彼女達には気苦労を掛けさせてしまうわ。


(お前さん達がいるなら、俺がいなくても大丈夫だろうに。)

(ダメわぅ! わた達だけでは右往左往するわぅよ。ここは予め、行動方針を決めておいて欲しいわぅ。)

(そ・・そうですか・・・。)


 凄みのある雰囲気で睨まれてしまった。確かに予め、行動方針を挙げておくのは得策となる。相手の出方が分からない以上、油断は禁物だわな。



(あー・・・お取込み中の所、大変恐縮です。セレテメス大陸に接近中の軍勢が。)

(これは・・・王城軍ですか。)


 そんな中、スミエより念話が入る。今はレプリカヴァルキュリアの艦橋にいるため、広範囲レーダーによる索敵だろう。そして、念話経由で現状を察知するデュヴィジェ。見事なまでの荒業だわ。


(分かった。大陸の探索はこの場で停止し、後日同じ場所から再開しよう。)

(戦闘準備はしなくて大丈夫わぅね!)

(そうねぇ。今の状態が正にそれだし。)

(諸々了解です。皆様方をセレテメス共和国に一括大移動させますね。)


 そう言うか否か、俺達の身体が転送移動されていく。今は個々人でバラバラにいるのだが、その全員をサーチして転送させるようだ。本当に見事な荒業である。


 セレテメス共和国より反対側の海岸にいた俺達は、デュヴィジェが繰り出す転送装置にて大移動となった。これには沖合いのレプリカ大和も含まれており、艦体は港の桟橋近くへと飛ばされる。俺達はその近場の海岸に移動させられた。




(何と言うか・・・。)

(精度が違いますよね・・・。)


 一瞬で誰もいない場所に転送移動する。その様相を体感し、開いた口が塞がらない異世界組の面々。魔法を使う面々は、転送魔法よりも転送装置の精度の高さに驚いているようだ。


(ああ、今の大移動ですか。イザリア様方からお聞きしましたが、転送魔法は大凡の範囲内での移動らしいですが、転送装置は座標軸を明確に定めて飛ばしますので。移動先の様相が把握できているなら、確実に送れますよ。)

(この点だけは、宇宙種族のテクノロジーの勝利ですよね。)

(科学力の勝利なのだよイザリア君。)

(アハハッ、確かに。)


 雑談をしつつも、それぞれの行動を開始する面々。恐ろしい事に、転送装置による大移動の際に、レプリカ大和に搭乗していた面々も海岸へと飛ばされていたのだ。艦上にいたのを、大移動の際に配置換えしたようである。


(転送先の個別配置すら可能なのか。)

(座標が分からない限り、座標軸の固定ができませんからね。逆に座標が分かれば、座標軸の固定以外にも別の場所への配置も可能ですよ。)

(はぁ・・・デュヴィジェ様がここまでの力をお持ちとは・・・。私達のテクノロジーを解析し発展させる、普通ではできないものですし。)

(俺達は良い意味で変人の集まりだからな、何だってできるわ。)

(アッハッハッ! その通りですよね!)


 俺の言葉に爆笑する彼女。それに釣られて周りも笑っている。変人扱いは何ともだが、それが力の言い表しにもなる。普通の人と言われるよりは、変人と言われた方が遥かにマシだわな。


 そう言えば、先の各作品群の主人公や盟友達も、端から見れば変人とも言えるわな。確かにこうなると、変人自体が最強の称号とも言えてくる。褒め言葉と捉えた方が有意義であろう。


 しかし、突然の襲来か。王城軍の方も、転送魔法による移動をして来たと思われる。既に先刻の戦闘で、ここに来ているため容易であろう。幸いなのが、宇宙船を出して来なかった事だろうな。となれば、次は地上戦となる訳か。


 セレテメス大陸の調査から、野生の魔物達の加入と交流。そして愚物の到来、本当にこの異世界は波乱に満ち溢れているわ・・・。


    第11話へ続く。

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