第10話 魔物達と愚物と3(キャラ名版)
シルフィア(ん? 雑談はそこそこにして、前方に障害物が出て来たわよ。)
ミツキ(なぬぅー! 攻撃準備! 攻撃準備!)
シルフィアの一声を聞き、釣り道具を甲板に置きつつ、近場に転がっていた兵装を展開していくミツキ。構え出したのは30mm機関砲である。マデュースの比ではない火力を誇る。
そして、シルフィアが示唆したそこには、野生の魔物と思われる一団が屯していた。こちらに気付くと、問答無用で襲い掛かり出してくる。
ミスターT(絶対にソロにはなるなよ。最低でもタッグ、理想はトリオが望ましい。)
一同(了解っ!)
颯爽と迎撃態勢に移っていく面々。妹達が陣形を展開しつつ、そこを魔物娘達が守る形になっていく。流石は歴戦の闘士達だ、その手際の良さは目を見張るものがある。
ミスターT(俺達にはバリアとシールドがある。流れ弾が当たっても無効化されるから、思う存分動いてくれ。レプリカ大和からは、先読み見越し射撃で援護を頼む。)
ミツキ(ラジャラジャ!)
ミュティヌ(ジンガイブツハッケン! ハイジョスル!)
ミツキ(キシャー!)
ナツミA(お転婆のドロイドかしらね。)
ミスターT(はぁ・・・。)
こちらの緊張感など何処吹く風ぞ、であろうか。某宇宙戦争のドロイドの音声を真似つつ、用意した重火器で援護射撃を開始するミツキとミュティヌ。この2人は本当に気質が似だしている。
しかし、言葉こそ巫山戯ているが、繰り出される射撃は恐ろしいほどの正確さを誇った。態と俺達の前に着弾させ、接近を許さないようにしだしたのだ。相手にとっては、未知の攻撃である。弾丸の着弾に怯むのは言うまでもない。
その隙を狙い、各自攻撃を開始する。妹達が先行し、その彼女達を魔物娘達が守りつつ、魔法による援護を行う。俺はトリプルマデュースシールドで周りを守りつつ、両手の各方天戟で相手の魔物共を一蹴していった。
ミスターT(念のため、セレテメス城下町の守備を固めてくれ。隙を突いて攻撃してくる可能性が十分ある。)
スミエ(大丈夫ですよ。こちらレプリカヴァルキュリアから、城下町全体を一望できていますし。それに、そちらの交戦も確認できていますから。)
ミスターT(了解、十分気を付けてくれ。)
どうやら、レプリカヴァルキュリアの艦長役はスミエが担っているようだ。彼女の据わった気質を踏まえれば、後方でドッカリ構えてくれていた方が大いに助かる。問題は、野生の魔物の出没が何時まで続くかだが・・・。
しかし・・・物凄い事になりだしている。最初はミツキとミュティヌの2人の援護射撃が、今ではレプリカ大和に搭乗する身内達全員の援護射撃になっていた。放たれる弾丸は、野生の魔物の足止めに特効的で、こちら側は超絶的な程に優位に進めている。
地球では射撃の場面は余りなかったため、こうした戦闘が実戦による射撃の修行になる。本当に不思議な流れだわ。
野生の魔物を討伐しつつ、只管海岸線を突き進む。沖合いのレプリカ大和からの援護射撃が凄まじく、ほぼ全ての弾丸で足止めを成し得ている。即死させられる腕前を持つも、それを行わないでいるのもまた凄い。
そんな中、野生の魔物の中で特質的な存在に遭遇した。そう、某RPGの様に、こちらと意思の疎通をしてくる存在だ。つまり、仲間になりたがっている、という感じである。
ミツキ(ぬぅーん、結局陸地に派遣されたわぅ。)
ナツミA(仕方がないわよ。ポチの気質なら、彼らへの交渉がスムーズに行きそうだし。)
既にかなりの数の野生の魔物が仲間になっている。この原理は全く以て理解できないが、相手が自然の摂理を根幹として生きている証拠だろうな。俺達が強者故に、素直に従った方が得策というものだ。
サラ(それに、念話が通じているようなので、悪心は一切ないと思いますよ。)
セラ(少しでもあれば、即座に反応を示しだしますし。)
双子の言う通りだろう。既に盟友の域に達している魔物娘達と同様に、仲間になった魔物達は俺達と念話が可能だと思われる。再確認も含めて、バリアとシールドの防御機構を放つも、それがしっかり効果が現れているのが何よりの証拠だ。
イザリア(これですが、実に凄い事だと思います。私達の場合は、数十年や数百年を経て、相手と分かり合った感じでした。それが、小父様方は僅か数分でそれを実現されている。)
ミスターT(俺が言うのも何だが、お前さん達は相手を魔物と見たんだろうな。俺は今でも相手を一生命体として見ているよ。まあ、外見上の様相から、魔物だと認知するのは言うまでもないが。)
ミツキ(微妙な差が、共闘できるできないの結果になったわぅね。後は慣れるしかないわぅよ。)
ミスターT(慣れる、ねぇ・・・。)
野生の仲間の加入は、その殆どがミツキ達ヲタク軍団とも言える。俺にはそんな気質はなく、完全に敵対する存在だけ蹴散らして行った。ただ、念話やバリアとシールドの効果を行い、実際に悪心の有無を確認する担当になりつつあるが・・・。
ミスターT(それでも、嫌な役割だわ。念話とバリアとシールドを経て、相手の悪心を調べるとか。失礼にも思えてくる。)
ナツミA(それはないと思いますよ。言い方は悪いですが、最終試験みたいな感じなのは必須です。後々火種になるようなものは残したくありませんし。)
イザリア(むしろ、そうして確実に分かるだけマシだと思います。人間の行く末を見たでしょう? 新大陸の様相が顕著ですよ。)
確かにそうだな。最初は通常大陸を脱出する事だけを考え、それが達成できれば、後は考えなかった感じだった。結局は離反する事になったしな。リューヴィスの女性陣を見れば、根底に何を抱えているかが痛感できる。
イザデラ(そう、それですよ。リューヴィスの方々は、貴方の治癒力という名の最終試験を受けて、それを突破したとも言えます。まあ、実際には“身体に受けたダメージ”を治癒する事がそれに当たりましたが。)
イザネア(野生の魔物は、言わば心に傷を負ったとも言えますからね。それを探し出し、治癒して回っているとも。)
ミスターT(ソッポな面々は悪心があり、心に傷を負っていない感じ、か。善心がある存在ほど、心に傷を負う・・・。)
例え的には合うだろうが、何か釈然としてこない。その概念で彼らを片付けて良いのだろうかと考えてしまう。まあ、敵か味方かを調べるだけなので、深く考え過ぎているだけだがな。
シルフィア(T君さ、こう考えなさい。今もまだ、この異世界惑星は発展途上の時だと。新たな同士を加入する際の流れを、イザリアさん達から受け継いで実行しているのだと。)
ミスターT(そんなもんで良いのかね・・・。)
デュヴィジェ(ある意味、地球は成熟し切っていたとも言えますね。意思の疎通が出来る環境で、何が大切で何が間違っているかを明確に出来たとも。軍服黒服事変が最もたるものだと思われますよ。)
ミスターT(うーむ・・・。)
何だかこの一件は、永遠に解けない問題になる感じだ。しかし、それは永遠と続くものでもある。やはり出てくるのは、相手の種族による意思の疎通度だろうか。となれば、5大宇宙種族が優れた生命体であると痛感させられるわ。
テューシャ(ミスターT様は、何処までも優しいのですね。相手の事を本当に思い遣り、考えるからこそ悩まされる。今の心境が正にそれだと思います。)
アクリス(これは言わば、私達にも突き付けられる命題になりそうですよね。生きる上での大切な概念でも。後は、個々人の考えに帰結してきますけど。)
ミスターT(そう言って貰えると助かるわ・・・。)
色々と悩ましい事が出てくる感じだわな。しかし、それこそがそれぞれの理に帰結してくる。警護者の理、探索者の理、創生者の理、と・・・。
ミツキ(前にも言いましたが、最早私達は一警護者の範疇を超越していますよね。でも、それが今は必要であるから実行するに過ぎないとも。ならば、四の五の考えずに、前にある壁を1つずつ乗り越えて行くべきですよ。)
ナツミA(そうね、その考えが一番気が楽になるわね。いや、今のTさんなら既に答えは出ていると思いますけど。我武者羅に突き進め、とね。)
ミスターT(そうだな・・・その通りだわ。)
2人の言う通り、俺には既に進むべき道は見定まっている。しかし、それが不安であるため、こうして周りに問い質している感じになるのだろう。エリシェやラフィナに愚痴るのと全く同じである。
エリシェ(本当ですよ・・・。毎度ながらの自己嫌悪に陥って、見苦しいにも程があります。)
ラフィナ(まあ、それらに乗ってしまう私達も見苦しいのかも知れませんけどね。)
デュリシラ(まあまあ、そう仰らずに。持ちつ持たれつ投げ飛ばす、これですよ。)
ミスターT(一同には迷惑掛けっ放しだわな・・・。)
本当にそう思う。しかし、皮肉な事に、これらの繰り返しにより、エリシェとラフィナとは親密な間柄へと昇格していった。もしこれらに至らなかった場合、何も考えずに淡々と進んでいたのだろうな。そこには、意思の疎通という概念など皆無である。
ゼデュリス(アハハッ、確かにそうですね。こうして色々なお悩みをお聞きする事が、こちらの仲間魔物様方を同士に迎え入れるのと同じ事になるのだと思います。その入門的なのが、今だと思われますし。)
アルディア(本当に、貴方様とお会いしなかったら、漠然と生きていたのかも知れませんね。心から感謝すべきなのでしょう。)
ミスターT(・・・ありがとう。俺もお前さん達と出逢えた事を、一生の誇りとしたい。)
カネッド(流石は兄貴っす!)
ダリネム(うちらが慕うだけありますよね!)
キャイキャイ騒ぐ妹達を見つめると、そこに己の生き様が根付いているのだと痛感できた。些細な事であろうが、彼女達の力の原動力になっているのは間違いない。人は些細な事で覚醒するのだから。
と言うか、今更ながらに思ったのだが、住まう惑星によって、人間がどうかは分からないと思うのだが・・・。俺達の場合は地球型人間、妹達の場合は異世界惑星型人間、とも言うべきだろうか。
まあ、こういった概念は、俺個人が定めてよいものではない。むしろ、烏滸がましいにも程があるわな。その住まう惑星の生命体である、そう思うのが妥当な所だろうか。地球での流れをベースに考えると、こうした弊害が出てくるわ。
それらが何れ、偏見や差別へと繋がって行くのは言うまでもない。
第10話・4へ続く。




