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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第10話 魔物達と愚物と2(通常版)

「面白い事を考えていらっしゃるようで。」

「これはもう、加勢しないと失礼極まりないと。」

「はぁ・・・こうなる訳か・・・。」


 ゼデュリスと魔物娘達と共に指令部へと向かうと、そこには一同が出揃っていた。特に妹達の気迫が尋常じゃない。身内達も凄い気迫だが、妹達には一歩及ばない感じである。


「私達も直接加勢したいのですが、ここはミツキ様方とレプリカ大和で待機します。」

「一応、参加はできますからね。」

「はぁ・・・そうですか・・・。」


 俺自身が行動するとあってか、今まで以上に盛り上がる一同。軍団のリーダーが動く事で、士気が高まり活発になるのと同じ感じか。これはこれで良いのだろうが、何とも遣る瀬無い思いになる・・・。


 ミツキが周りに語り歩いたため、既に準備は整いつつある。特に停泊中のレプリカ大和は、艦体の向きを180度変えだしている。動力機構を現代の最新船舶と同じにしているため、その場で360度回転ができたり、後方に動いたりもできるのだ。


 過去は地球のハワイ沖での海戦時、軍服連中の艦船を撃滅する際に、オリジナル大和では絶対にできない操艦を繰り広げている。艦体は当時のままで、内部機構や動力機構を最新鋭にすると、とんでもない逸品に仕上がるようだ。


 まあ、今は戦艦を用いる時代ではないため、最早時代遅れとしか言い様がない。しかし、その時代遅れを払拭させるのが、5大宇宙種族のテクノロジーだ。見た目に騙されると、強烈なまでにドエラい目に遭う事受け合いである。


「では、港の防衛にはレプリカ伊400のみで。」

「“矛先”は王城側に向けておいてくれ。レプリカヴァルキュリアもしかり。」

「了解です。まあ、連中が何を用いて来ようが、バリアとシールドの防御機構を破る事はできませんけどね。」


 レプリカ大和に代わり、港の中央にはレプリカ伊400が鎮座する。122mと小柄な艦体ではあるが、その強度はオリジナルを遥かに超越している。スーパーレールガンも搭載してあるため、見た目に騙されるとドエラい目に遭うわな。


「威圧だけでも十分よ。そうすれば、連中は直接部隊を送るしかなくなってくる。もし、何らかの襲撃があったら直ぐに戻るよ。」

「了解です。一切の防備は任せて下さい。」

「最近は待機組ばかりですよね。」

「まあまあ。有事がない場合は、非番状態として休息できますし。」

「宇宙種族組が鎮座してくれるからこそ、俺達が大いに暴れられるしな。本当に感謝しているわ。」


 今回の行動には、宇宙種族組はセレテメスで待機する事になったらしい。確かに有事の際は、彼女達だけで一切合切鎮圧が可能である。守り手としてなら最強だわ。



「全ての準備が完了しました。」

「ありがとさん。では、北大門から海岸線を北上しよう。レプリカ大和が沖合いから護衛してくれれば、有事の際は問題ない。」

「ラジャラジャ!」

「行動開始ですにゃ!」


 脱兎の如く去って行くミュティ・シスターズ。その生き様は、何時の間にかミツキに感化されたかのようだ。まあ、背丈もほぼ同じなので、髪の毛の色さえ異なる点ではクリソツになる。


「見た目だけなら妹分、ですか。」

「女性を見る目で推測できますからね。」

「はぁ・・・心中読みやめれ・・・。」

「ウッシッシッ♪」


 恒例の如く、茶化しが入れられる。三姉妹を見る目に気付き、殺気に満ちた目線で睨んで来る妹達だ。その彼女達を見つめ、ニヤケ顔でいるミツキである。


「よーしっ! わたも乗船してくるわぅ! 後は任せるわぅよ!」

「今回は海上からの支援だからね。重火器が役立ちそうね。」

「そこは色々と秘蔵品があるので、現地で披露しますよ。」

「ミリタリーマニアには堪らない逸品揃いですからねぇ。」


 そう、カラセアとデュリシラは、超が付くほどのミリタリーマニアでもある。重火器に関して造詣が深く、各種の重火器を保持している。それらが各依頼に大活躍していたりもする。


 本当に身内の面々は、多岐多様のスキルを持つ強者ばかりだ。特に地球組の面々は、色々な物品を駆使しての戦いを得意としている。異世界組が魔力や魔法を得意とするように、地球組は重火器や格闘術を得意とする感じである。


 やはり、各種族毎に得手不得手が存在する。それを、改めて痛感させられた感じだわ。



 準備が完了した面々から、北大門へと向かって行く。俺の方は、トリプルマデュース改に二対の方天戟と小道具だけなので、直ぐに行動を移せる。一足先に現地へと向かった。


 そう言えば、こうした出撃は新大陸の未踏査調査以来だろうか。南東の塔と遺跡の探索を行ったのが懐かしい。その後、移籍組の一種の反乱により、現地を脱出せざろう得なくなったのも懐かしい。


 まあ、当時があったからこそ今がある、それは間違いない。問題は、今後をどうするかだ。まだまだ課題は山積みである・・・。




 セレテメス共和国の北大門から出て、海岸線を回り出す俺達。今回の同伴者は、異世界組全員と魔物娘達全員となる。地球組と宇宙種族組の抜粋されし面々は、レプリカ大和からの支援となる。


(バカンスわぅ~♪)

(はぁ・・・そうですか・・・。)


 沖合いを見入ると、こちらと併進するレプリカ大和がある。甲板上では、ミツキが釣りを満喫していた。見事なまでのバカンス状態である・・・。しかし、その傍らには、物凄い数の重火器が置かれていた。何時でも援護射撃は可能だという現れである。


(まあまあ、そう仰らずに。本当なら、私達もそちらに参加したかったのですがね。)

(百歩譲って、この配置にしましたけどね。何か文句があるなら、お伺いしますけど?)

(はぁ・・・ぐうの音も出やがりませんわ・・・。)


 彼女達の気質からして、本当は一緒に戦いたかったのが分かる。それを我慢し、レプリカ大和での待機組に回ってくれたのだ。ここで変な事を言ったなら、後でドエラい竹箆返しが飛んで来るのは間違いない・・・。


(とりあえず、今回の探索は海岸線の網羅との事ですが?)

(セレテメス大陸と言うべきか、ここの様相は全く把握できていない。内陸からの調査が早いのだろうが、今は厄介となる海岸線を調査した方がいい。)

(私達の方も、実際には未調査ですので、今後を考えると大いに助かります。)

(調査ができるのは嬉しいですからね。アルドディーレの場合は、王城などが絡んでいるため、下手な行動ができませんでしたし。)

(政治的ウンタラが絡む、だな。)


 アルディアが挙げたそれは、王城側が良しとしなかったため、実現不可能だったのだろうな。それこそ彼女が王城のリーダーだったなら、間違いなく実行されていただろう。


 今回の大陸の調査は、セレテメス共和国が実行したかった行動の1つになる。建国以来、住まう地域のみの向上化を図って来たため、探索などの行動はしなかったとの事だ。言わば、今回の調査は大統領自ら探索に動いたと言っていい。


 ただ、このセレテメス大陸自体に王城軍が到来する事を踏まえると、何れここも脱出する必要が出てきそうな気がする。住まう方々はゼデュリス達を全面的に信頼しているため、彼ら全員と共に行動しなくてはならない。となると、レプリカ大和とレプリカ伊400では、移送は厳しいかも知れないな。


(そこで出るのが、レプリカヴァルキュリアと。)

(先読みどうも・・・。)

(まあまあ。それでも、同艦を駆使すれば、全ての方々の大移動は可能ですよ。飛行甲板や内部を駆使すれば問題ないでしょう。)

(一時の大空のクルーズ、か。)


 俺の言葉に、瞳を輝かせる異世界組の面々。地球組と宇宙種族組は、空中を移動する事は何度もあったが、異世界組は長時間空を飛んだ事がない様子だ。そこまでの技術体系を確立していないのもある。


(・・・最悪の展開を挙げても良いですかね?)

(・・・この異世界惑星自体の破壊、か。あの黒い愚者なら、やりかねないな。)

(そもそも、あの黒いモヤの凝縮体とするなら、正に惑星破壊兵器そのものでも。)

(そうなった場合、脱出をどうするかになりますよね。)


 彼女の言葉に、嫌な選択が脳裏を過ぎる。つまり、目に留まる大切な存在だけを助けるというものだ。と言うか、現状はそれしかできないのが実状となってくる。最悪の場合だけは、避けたい所だが・・・。


(ぶっちゃけ、そこまでの凝縮体なら、某作品のように宇宙空間でも再生して、飛んで来ると思うけどね。)

(結論からして、ソイツを絶対に消滅させないと、あの時のように全てを消滅させてくる可能性もある、となりますし。)

(はぁ・・・力を持ち過ぎるものは全てを壊す、か・・・。)


 最早、一警護者の範疇を超越した物事だわ・・・。最悪の場合だと、万物全てを滅ぼしかねない存在に化ける事になる。あの黒いモヤ事変ですら、天の川銀河を消そうと襲来して来た。相手を消さない限り、その災厄は全ての生命に飛来してくるだろう。



(あはは・・・何と言うか、手立て不能になりそうな展開ですよね・・・。)

(こうして、旅路ができるだけ、本当に幸せだと痛感させられます・・・。)

(そうだな・・・。)


 サラッと挙げた最悪の結末に、一同の重苦しさが痛烈に伝わってくる。特に異世界組の面々の絶望度は相当なものだ。地球組や宇宙種族組は、ある程度免疫力はあるが、それでも最悪としか言い様がないのは事実だろうな。


(・・・だが、ソイツは唯一の汚点を残したがね。)

(本当ですよね。私達を殺せなかった事が、自身を破滅へと導く要因となりましたし。)

(特に、ミスターT様を生かしている事が汚点ですよ。理不尽・不条理の概念には、痛烈なまでの反抗を貫きますからね。)

(ハハッ、本当だわな。)


 2人の言葉に、我が事ながら笑ってしまった。こちらは実際に、あの黒いモヤを消滅させるに至る力を持っている。それに、最後のカードが残っている事も忘れてはならない。


(ぬぅーん! ガンマ線バーストで一撃必殺わぅ!)

(アハハッ、確かにそうよね。Tさんという切り札が無理だったとしても、瞬殺できる力を持っているのだしね。)

(余りお勧めしませんが、愚物を潰すなら、私は容赦なく使いますよ?)

(そこは私も賛成します。)


 何ともまあ・・・。確かに、最後のカード・究極の一手があるのを忘れていた。相手を確実に瞬殺できる力がある事にな。


 もし、俺達が黒いモヤを消滅できなかった場合、奥の手として宇宙最強の兵器を用意していた。ミュティナが作り上げた、ガンマ線バースト発生装置、宇宙最強の核兵器とも言える。その一撃であれば、どんな相手であろうが瞬殺である。


 実際にミュティナ達の母ミュセナが、過去に使った事があるらしい。他の宇宙種族も然り。そうしないと、彼らが倒される相手であったとの事だ。それに、確かに絶対悪の核兵器だが、宇宙種族からすれば通常兵器的な感じである。バリアとシールドの防御機構を駆使すれば、放射線やガンマ線すらも防げるのだから。


 そもそも、宇宙種族自体が核兵器を嫌っている。それらを持ち要らずに、通常エネルギーを最大限活用させるためのテクノロジーも開発している。ジッポーライターの火種で、宇宙船を稼動させるぐらいの様相だ。実に馬鹿げているとしか思えないが、彼らならそれが実現可能なのだ。


 それに、当時は黒いモヤだったが、今回黒い愚者となるだろうソイツを消滅させない限り、俺達の消滅もまた避けられない。ならば、絶対悪の力ですら、俺達が生き残るための絶対善になる場合もある。まあ、これは最悪の事態での、究極の奥の手となるが・・・。


(うーん・・・“核物質”が異世界惑星を救う、ですか。)

(最悪の場合、だがな。できれば、使わないで終わる方が望ましい。だが、奥の手として申し分ない存在なのは確かだ。)

(いっその事、パルサーやマグネターでもぶつけてあげれば良いんですよ。)

(その前に、私達が潰れるけどねぇ。)

(パ・・パルサーP38わぅか?!)

(言うと思った・・・。)


 怪訝そうなイザリアの言葉を嗜めるミツキのボケとナツミAのツッコミ。そして、更にネタを展開するその様相に笑ってしまった。ネタを知る周りの面々も笑っている。


(まあ何だ、一応の対策はある。それで消せない場合は、最終兵器という感じだな。)

(使いたくない兵器なのですがね・・・。)

(本当ですよ・・・。)

(甘ったれんじゃないわぅ!)


 イザリア三姉妹は、どうやら核兵器や核物質を快く思っていない。と言うか、5大宇宙種族の誰もが全く同じだ。しかし、地球側を知る宇宙種族組は、宇宙空間での核兵器の使用を黙認する傾向がある。


 これは、核兵器や核物質を使うという意味合いではなく、自分達の生存を脅かされそうな一大事には、用いる可能性があるという意味合いだ。黒いモヤ事変の最後の一手は、正にこの流れに至っていたしな。


 まあ、俺自身も核兵器や核物質の怖ろしさを知っているため、余り用いたくはない。故に、殺気と闘気の心当てをカルテット・キャノンで増幅させ、黒いモヤを消す作戦に出たのだ。一応の手立てとしては申し分ないが、ガンマ線バースト発生装置は使いたくない代物である。


    第10話・3へ続く。

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