第10話 魔物達と愚物と1(キャラ名版)
セレテメス共和国に襲来した王城軍。街中は魔物共で溢れ返り、海上は海賊船を操作する機械兵が溢れ返っていた。幸いにも、どちらも完全撃滅となった。
むしろ、気掛かりなのが機械兵だろう。海賊船の残骸から回収した機械兵を見たが、地球で愚物共が開発した機械兵士と差異は見られなかった。つまり、宇宙種族のテクノロジーが反映されている証拠だ。
これは、旧デハラードで発掘されたものと言われていた。現地の地中には宇宙船が眠っているため、そこから出たのだと思われる。オルドラやイザリア達も詳細は掴めておらず、その存在が当初からあったのかは分からないらしい。
1つだけ確かなのは、それらを黒い愚者も稼動させる事が可能だと言う事だ。黒いモヤから変じて宇宙種族化したと、また1つ確証が掴めてしまった。最悪のパターンだとも言える。
何にせよ、こちらも最大限の力を発揮せねば危うくなりそうだ。幸いにも、こちらの手持ちのカードは、まだまだ複数ある。それらの使い所を見極めつつ進むしかない。
ミツキ「この大陸の探索どころではなくなったわぅよ。」
ミスターT「警護と探索に人員を分けるのが厳しいしな。」
中央広場にテーブルと椅子とパラソルを引っ張り出し、そこで寛ぐミツキ。現地への物品の運搬に借り出されるも、こうして一服しながら寛げている。近場には護衛と題して、魔物娘達が出揃っていた。幸いなのが、ここの住人達には驚かれない事か。
ミツキ「ぬぅーん、この子達の方が律儀わぅね!」
ミスターT「逆だと思う。彼女達が普通であり、俺達の方が偏見により壁を作る方が多い。同族同士ですら争うぐらいだ、その業深さは相当なものだわ。」
本当にそう思う。地球でも同じ地球人同士でイザコザを繰り返している。まあ、地球人の中で各人種に分かれているのもあるが、それ以前の問題だろう。
ミツキ「まだ発声には至っていないわぅ?」
ミスターT「一応、彼女達には施してあるが、後は彼女達次第かもな。一説によると、俺達地球組の言葉の方が難しいらしいし。」
ミツキ「多岐多様な言葉があるわぅからね。」
デュヴィジェにより、各ペンダントに追加の効果を施された。魔物娘達との会話が可能となるものだ。それを遠隔的に彼女達に施したのだが、今はまだ発声をしてこない。念話による会話でも、肯きや首振りに表情の変化でしか合図を出してこないのだ。
ミスターT「・・・案外、俺は身勝手な事をしているのかもな。」
ミツキ「・・・対話が出来れば良いと、こうして特殊能力を付与した事、ですか?」
ミスターT「そう思えてくる。地球でのワンニャンなどの動物達も、人間側からの言葉は伝わっていると言われている。対して、人間側の中には、相手には伝わらないと思っているのもいるそうだ。俺は、彼らにしっかり言葉は伝わっていると思いたい。」
比較対照するのは、お互いの種族に対して失礼かも知れない。しかし、言葉が伝わるという部分では、意味合いは合っていると思われる。要はこちらがどう思うか、という事だ。
ミツキ「エリシェさん達が良く挙げる言葉をお借りすると、Tさんの今の言葉に私利私欲があれば、身勝手な事であると言えてきます。ですが、実際にはそうではないのは明白です。それに、相手との意思の疎通を取りたいと思うのは、皆さんの方も同じお考えですよ。」
そう言いつつ、魔物娘達の方を見つめるミツキに、小さく頷いている彼女達。ミツキは地球でも、ワンニャンなどの動物達との意思の疎通ができている。魔物娘達を動物達と言うのは失礼だろうが、こちらも意味合いは合っていると思う。
ミスターT「・・・今はできる事をし続けるのみか。」
ミツキ「何も行動をせずにいるよりは、遥かにマシだと思います。それに、この意思の疎通は、多分魔力や魔法を駆使すれば、何れできるようになると思われますよ。Tさんのそれは、正に先駆者の一歩だと思いますし。」
ミスターT「そうか・・・。」
確かに、地球と異なるのが、この異世界惑星である。魔力や魔法を駆使すれば、魔物達との対話も可能になるだろう。それだけ、魔力や魔法の概念は万能的要素が数多く存在している。
ミツキ「ぬぅーん、また少しお疲れ気味わぅね。」
ミスターT「はぁ・・・仮眠程度じゃ、半年以上睡眠を取っていない俺には厳しいかもな。」
ミツキ「睡眠欲無効化能力を解除したら、正に地獄と化しそうわぅね!」
ミスターT「周りがどう出るかがな・・・。」
考えただけで恐ろしい・・・。唯でさえ、こちらに好意を抱いてくれる面々がいるのだ。ほぼ仮死状態の間に何をされるのか、分かったものではない・・・。
ミスターT「・・・まあ何だ、一歩ずつ前に、だな。」
ミツキ「ですね。先の大規模襲撃も失敗に終わりましたし。次は宇宙船とかを出してくる可能性も十分有り得ますからね。」
ミスターT「ここは、転送装置や転送魔法の恩恵を得るか。」
余り使いたくない手法だが、今はこれが無難になるだろうな。万能力の第一人者とも言える。
不意の襲撃への対策には、その場にいる面々で対応する感じである。それを超越するのが、転送装置となる。異世界惑星なら転送魔法だろう。ただ、どちらも一度訪れた場所でなければ発揮しない。誰かを目標として用いれば、即座にその場へと飛ぶ事ができる。
しかし、この力は地球では異常的なものだ。それらを常用化してしまえば、後に大変な弊害をもたらしてしまう。念話の方も最初は躊躇っていたが、今では常用化してしまっている。となれば、何れ転送装置の方も常用化するのは目に見えているしな。
ゼデュリス「それでも、使わねば意味がない、ですね。」
ミスターT「はぁ・・・お前さんにも心中読みされるのか・・・。」
ゼデュリス「私は武勇よりも魔法の方が得意なので。イザリア様方からも、魔力が強いと仰られていますよ。今思われた隠密という動きも、魔力が為せる技だと思います。」
何時の間にか傍らにいた彼女。隠密的な行動力を持っていそうな感じがするが、それが何であるかは読めない。そんな内情を察知したのか、その答えを語りだした。
確かに、魔力は万能的な力の1つとなる。この異世界惑星では特に顕著だろう。俺達地球組は魔力の魔の字すら分からないが、宇宙種族組はそれが理解できるようだ。実際にイザリア達が魔力と魔法を使っている。
ミツキ「魔法皇帝わぅ!」
ミスターT「はぁ・・・俺達には全く理解できない概念だわ。」
ミツキ「各ペンダント効果による、特殊能力しか使えないわぅし。」
ミスターT「本当だわな。」
俺と同じく落胆する彼女。ここに到来してからは、魔力や魔法の概念とは完全に無縁だ。異世界組との決定的な差は、この魔力と魔法の概念であろうな。
ゼデュリス「ですが、皆様方の戦闘力は私達を逸脱した領域にありますよ。先刻のシューム様方の戦闘を拝見しましたが、あそこまで徹底的に動かれるのは初めて見ました。」
ミスターT「あー・・・アレは参考にしない方がいい。身内の中でトップクラスの実力を持つ警護者だからな。このミツキさんですら、彼女達には敵わないし。」
ミツキ「うむぬ。わた達は局地戦仕様だから仕方がないわぅよ。」
生粋の警護者たるシュームやナツミYU達の実力は、どんなに足掻いても届かない領域にまで至っている。ミツキもそうだが、あのナツミAやシルフィア、スミエですら敵わない領域だ。俺達が唯一勝っているのは、瞬発的戦闘力を発揮できる局地戦仕様だからである。
ミスターT「継戦能力なら、異世界組の面々が一番高いと思う。長く戦えるのは、戦闘では有利になるからね。俺達警護者は、依頼のみを純粋に遂行するために存在している。お前さん達みたいな戦い方は不可能よ。」
ミツキ「決戦兵器にしかなれないわぅね!」
ミスターT「決戦兵器ねぇ・・・。」
ミツキのボケに苦笑するが、案外理に適ったものかも知れないわな。そもそも、局地戦仕様自体が決戦兵器にも例えられる。継戦能力重視ではないため、持久戦には不向きなのだから。この異世界惑星で、再度その理に回帰するとは思いも寄らなかったわ。
ミスターT「まあ何だ、今回は俺も暴れてみるか。」
ミツキ「おおぅ?! ついに、親玉が始動わぅね!」
ミスターT「差し迫る危機が遭った場合、転送装置で戻ってくる。それまでは、この大陸を隅々まで調査した方が良さそうだ。」
ゼデュリス「了解しました。ですが、私も同行させて頂きますね。」
ミスターT「そう来ると思った・・・。」
エラい真顔で詰め寄って来る彼女。これでもセレテメス共和国の大統領だというのに、その姿勢は冒険者そのものだわ。まあでも、今は後手に回るしかないため、彼女達の加勢は大いに助かる。
ミツキ「わたと姉ちゃんも同行するわぅね。ただし、沖合いからになるわぅけど。」
ミスターT「なるほど、レプリカ大和とレプリカ伊400か。どちらにするんだ?」
ミツキ「セレテメスはレプリカヴァルキュリアで守れるわぅから、レプリカ大和で行くわぅね!」
ミスターT「了解。そうすると、レプリカ伊400は港で待機させるか。」
ミツキ「準備をしてくるわぅぜぃ!」
有限実行か、脱兎の如く去って行くミツキ。向かった先は、臨時の指令部が置かれた帝国城跡である。破壊は一瞬で済んだが、建設は正に死闘だ。大使館などの建物は、まだ建設できていない。
セレテメスの東側は港になっており、海賊船群の襲来も起こり得る。本来ならレプリカ大和を待機させ、砲撃での撃退が望ましい。しかし、それは同艦群しかいない場合のみだ。城下町にはレプリカヴァルキュリアが待機しているため、レプリカ伊400のみで問題はない。
それに、超遠距離攻撃を行う場合はレプリカ大和に限る。レプリカ伊400でも可能だが、ここは警護者最強のガンシップに警護を任せた方が格好がいい。伝説的な戦艦大和に守られて行動ができるとは、ミリタリーマニア冥利に尽きるわ・・・。
第10話・2へ続く。




