第9話 魔物の襲来3(通常版)
軽食と雑談を終え、レプリカ大和を下艦する俺達。すると、魔物娘達がソワソワしだした。まるで何かを感じ取っている様子だ。それに直感と洞察力が働き、自前の武装を展開する。それを見た妹達も武装を展開していく。
(お前さん方、レーダーや目視で反応はあるか?)
(目視ではまだ発見できていませんが、レーダーでは確認できました。城下町の3大門に接近中の魔物群があります。)
(レプリカヴァルキュリアより援護射撃を行いますか?)
(いや、今は様子を見てくれ。俺達の方で何とかしてみる。)
突然の襲来とあって、一気に殺気だっていく身内達。直ぐに戦闘準備を行い、3大門の方へ自発的に向かって行った。
(お嬢さん方は、同族であっても戦えるか?)
俺の言葉に力強く頷く魔物娘達。幼子達や姉妹とのコミュニケーションを経て、今では盟友の域にまで達しているようだ。この力強き頷きが全てを物語っている。
(分かった。ならば、妹達と共同戦線を張ってくれ。纏まって動けば問題ない。)
(お任せを! 姉さん達は私達が支えますよ!)
(年代的に、私達より遥かに年上ですからね。)
(すまない、頼むわ。)
今度は妹達も力強く頷いてくる。それぞれ魔物娘達とチーム分けをして、陣形を取りだした。リューヴィス女傑陣やトラガンチームとの連携が、こうした力を育んだのだろうな。
念話を通して、一番手薄な大門の方へと向かって行く妹達と魔物娘達。俺はサキュバス2人とハーピー2人と共に、一旦中央広場で待機する事にした。4人の魔物娘達は、敵側の魔物への反応者として居て貰っている。
(ん?! 更に3大門に接近する魔物群が!)
(マスター、レプリカ大和から連絡。海上より海賊船が多数接近中との事。)
(波状攻撃か、相手もやりおるわ。)
ここに来て、王城軍も侵攻を開始しだしたのだろう。しかも、予想よりも早いペースでの侵攻と言える。恐らく、破損した宇宙船の修復、これの時間稼ぎだろうな。
(T君、レプリカヴァルキュリアに上がるわね。)
(私はレプリカ大和に向かいます。)
(すまない、頼むわ。他の手が空いている面々は、一旦中央広場へと集合してくれ。手数が少ない場への、追加支援の準備を頼む。)
(かしこまりー!)
(やっと暴れられますねぇ。)
挙がる言葉はノホホンとしているが、どの面々も引き締まった一念を抱いている。いきなりの侵攻には、こうして否が応でも緊張感が襲い掛かって来るしな。警護者の戦いでも、同様の流れを何度も経験して来た。
(おっ? マスター、朗報が! 海賊船側は全て無人です!)
(待って下さい・・・これ、機械反応が!)
(・・・デハラードの機械兵というアレか。地球の機械兵士と同類の感じだな。)
新大陸の宇宙船を稼動させるぐらいだ、デハラードに眠っているとされる機械兵を稼動する事など容易だろう。それを海賊船に乗せて進軍させてくるとは。
(無人なら一切容赦しないでいい。一撃必殺で潰してやれ。)
(一・撃・必・殺、羅刹掌わぅ!)
(フフッ、そうね。46cm主砲弾で実現させてあげましょうか。)
(おういえい! おまかせあれー!)
ボケとツッコミを絡ませてくる姉妹。それに小さく笑ってしまった。周りの面々も不甲斐無い感じで笑っている。
しかし、それは理に適った攻撃の合図、レプリカ大和の主砲や副砲などが火を噴きだした。どうやら、何時でも攻撃できる準備をしていたようである。中央広場からでも、その轟音が鳴り響いてくる。本当に大海原の覇者だわ。
更には、元帝国城跡上空で待機中のレプリカヴァルキュリア。その下部戦闘艦に搭載されている主砲や副砲が火を噴きだした。放たれた砲弾は全て海上へと向かっている。先に海上勢力を一掃する戦略に出たようだ。
ちなみに、レプリカヴァルキュリアの下部戦闘艦は、レプリカ大和の5倍以上の規模を誇る戦艦仕様である。上段側は航空母艦としての役割を持ち、下段側は戦艦としての役割を持つ。それを艦体の3倍以上の規模を持つ、飛行船により浮かせている感じだ。
その飛行船も、唯の気球ではない。随所に銃座や砲塔が装備されており、一切の隙がない。あるとすれば、その規模による移動速度の遅さぐらいか。某ゲームの装甲戦闘飛行船程の速度は出せない。これでヘリウムガスを使っておらず、5大宇宙種族の力、反重力機構で空中に浮遊しているのだ。本当に見事なまでである。
まあ、この化け物染みた重装甲飛行戦艦を以てしても、宇宙船群には遠く及ばないのだが。実に馬鹿げた話としか言い様がない・・・。
(・・・予想通りの展開だな。)
暫く待機すると、4人の魔物娘達が殺気立っていく。直後、その場に魔法陣が引かれだし、夥しい不死の魔物共が現れて来た。中央広場に待機していて正解だったわ。
(中央広場へはメンツは割けられないか?)
(了解! お住いの方々の安全確認を行った後、そちらに向かいます!)
(暫くお待ち下さい!)
(分かった。さあ、麗しきお嬢様方、俺の傍から離れなさんなよ。)
既に3つの人工腕部にマデュース改を装着しており、そこに身を隠していく魔物娘達。これはリューヴィス女傑陣やトラガンチームの面々から学んだ戦術のようだ。言わずとも展開してくれる姿に感銘を覚える。
腰の携帯方天戟を展開して右手に持ちつつ、地面に突き刺してあった隕石方天戟を左手に持つ。それらを迫り来るゾンビやスケルトンに一閃させた。相変わらず数埋め合わせの様子、一撃で切り伏せられるのには呆れるしかない。
対して、トリプルマデュースシールドに隠れつつ、そこから魔法を放っていく魔物娘達。彼女達は武器を使うより、魔法を使う方が得意のようだ。それが背後から全方位をカバーする事ができるため、実質的に死角が消え失せている。
(魔物娘さん達と共闘か。本当に某RPGを思い浮かぶわ。)
(極大消滅呪文ワンコローアわぅ!)
(・・・前の行で口を塞ごうと思ったわよ。)
(ワンコも学んでいるのだよ。)
恒例のボケとツッコミを展開するも、その雰囲気から戦闘を繰り広げている様子の姉妹。まあ、こうしてボケとツッコミを言えるのは、それだけ余裕である証拠だな。
(周辺の状況はどうだ?)
(依然として、海賊船群は到来中。全て一撃必殺で轟沈させています。)
(3大門や中央広場の魔物群も同じです。空中より飛来する魔物がいないのが不幸中の幸いですが。)
(了解。となると、次は空から来そうだな・・・。)
襲い掛かる魔物群を蹴散らしていく俺達。魔物娘達との連携は絶妙で、しかも軽く飛行するとあって、トリプルマデュースシールドにピッタリと張り付けるのだ。
ちなみに、左右のマデュースシールドにハーピー2人が、中央にサキュバス1人が張り付いている。残りの1人は俺の真ん前で攻撃を繰り広げている。見事なまでの連携プレイだ。
遅れ馳せながらと、ゼデュリスとアルディアが駆け付けて来る。2人だけなのを窺う頃、他の面々は3大門に掛かりっ切りの様子だ。獲物を展開し、猛攻を繰り広げる2人。
(お嬢さん方、ペアに分かれて2人を支援してくれ。俺の方は単騎でも問題ない。)
俺の言葉に肯き、ゼデュリスとアルディアにサキュバスとハーピーが付き従った。完全に支援キャラとして定着しだしている。今はまだ言葉が解せないが、意思の疎通は俺達以上に濃密な感じだ。
(物凄い短期間での侵攻ですよね。)
(そうだな。ただ、3大門側の連中が、召喚によるものなのか、ダンジョンより現れた野生になるのかが気になるが。)
(中央広場は召喚ですが、向こうはどうか分かりませんし。)
異世界組の中でのリーダー格の2人だが、猛攻を繰り広げる姿は闘士を彷彿とさせる。俺が知らぬ間に、身内との修行を繰り広げていたようだ。本当に女性は強いわな。
しかしまあ、物凄い連携だ。ゼデュリスとアルディアの背中に、それぞれのサキュバスが背中合わせで立ち、その上空をそれぞれのハーピーが旋回して様子を窺っている。全く以て死角がない。
更に驚いたのが、魔物娘達にバリアとシールドの防御機構が効いたのだ。つまり、善心を持つ闘士と化している。
(・・・何か、申し訳ない気持ちになる。先刻の会話では、最大限信頼していると言った感じだが、バリアとシールドが効くかどうか疑いの一念を出してしまった。)
(ん? 何をご冗談を。その前から念話が通じていたではないですか。念話自体、善心を持たねば絶対に発揮できませんよ。)
(そうですね。余りにも便利過ぎるツール故に、善悪判断センサーが働いている事を忘れてしまったと思います。だから、申し訳なくなる意味はありません。)
(そうか・・・ありがとな。)
言われてみればその通りだわ。バリアとシールドの防御機構を施す前から、念話による対話を繰り広げていたのだ。どうやら、魔大陸で魔物娘達と合流した頃から、念話は聞こえていたようである。出逢った頃から、善心を抱く魔物娘達だったのだ。
(某RPGでも、仲間モンスは攻守支援共に万能ですからね。こちらが最大限補佐すれば、その恩恵を確実に得る事ができますよ。)
(マスターが仰っている通り、相手あっての自分自身を忘れてはなりませんね。)
(本当にそう思うわ。お嬢さん方には感謝し尽くせない。)
姿こそ魔物の様相だが、その生命体は俺達と何ら変わらない。生命の次元で通じ合えれば、外見や言葉を超越した繋がりを得られる。5大宇宙種族のテクノロジーがなければ、こうして彼女達と解り合える事すらできなかったわな。
第9話・4へ続く。




