第9話 魔物の襲来1(キャラ名版)
推測の域から、ほぼ確定に近くなった、真の巨悪の存在。消滅した黒いモヤ自体が、時間と空間を超越し、この異世界惑星に黒い愚者として転生したという仮説だ。本来なら否定しても良いのだろうが、あまりにも信憑性が高過ぎて否定できなくなっている。
そこで、当面は黒い愚者と仮定する存在の調査を行う事にした。該当される鎮座場所は、悪の巣窟たる王城である。メカドッグ嬢達をフル稼働し、徹底的に調査をして貰う流れだ。当然、完全なるヒドゥン状態での探索となる。まあここは彼女達を信じよう。
もし黒い愚者の存在が仮定の域であり、実在しないのならそれで良い。他の愚物共を全て叩けば戦いは終わる。しかし、この異世界の各種概念の存在、それが黒い愚者の存在を確定的なものだと否が応でも認識させてしまう。
逆に、黒い愚者の存在が本当であれば、それもそれで良い。明確なラスボスが判明したと断言できてくるからだ。と同時に、相手は並大抵のラスボスではないという事にもなる。地球では自分も含め、身内総出で当たらねば消滅できなかったのだ。
それでも、どの道乗り越えねばならない壁になるのは間違いない。こうなった以上、途中で引き上げるのは卑怯極まりないからな。
酒場から引き上げ、レプリカ大和の寝室へと移動してから翌日。完全な睡眠ではないが、横になる事でこれ程までに落ち着ける事に驚いてしまう。と言うか、これが本来の生命体の姿であり、それを無理矢理捻じ曲げていた俺の責任でもある。
ちなみに、寝室と挙げたのは、当直の躯屡聖堕メンバーに艦長専用の寝室を勧められた事によるものだ。艦長専用の寝室とは烏滸がましい限りだが、実際には誰も使っていない状態なので良いらしい・・・。
そもそも、当初のレプリカ大和の創生理由が、歴史モニュメントも兼ねてのものだった。それが、後の軍服黒服事変により、警護者専用ガンシップと位置付けられ今に至る。先の大戦の様に常に使う戦艦ではないため、長期間滞在する場所ではなかったのもある。
それに、黒いモヤ事変が終わった後は、日本の広島は呉に永久停泊する予定だった。それが皮肉にも、この異世界惑星で再度活躍する機会に恵まれたという流れになる。まあ、戦艦としての活躍はできているため、その存在意義は確実に有りだと言えるだろうな。
ミツキ(・・・T艦長、お身体の状態は如何でしょうか?)
ミスターT(うわっ?! お・・驚かすなよ・・・。)
浅い眠りと深い眠りを交互に繰り返し、色々な考えが脳裏を過ぎっている。その中で突然、ミツキの声色が脳裏に響いてきた。念話によるものだが、突然話されたため、飛び上がらんばかりに驚いてしまった。
ミツキ(ニヤリ・・・内情は全て伝わって来ていたわぅよ、ウッシッシッ♪)
ミスターT(・・・仮眠中の転寝でも、心中がダダ洩れ状態だったと・・・。)
ナツミA(今のTさんは、心に一切の壁を作っていませんからねぇ。)
シルフィア(むしろ、どうぞ拝見して下さいと言っているようなものだったし。)
ミスターT(そ・・・そうですか・・・。)
方々から、ニヤニヤした表情の一同を感じる。と同時に、何やら感心した様な雰囲気も感じ取れてくる。俺が思っていた内情を窺ったからかも知れない。
エメリナ(それなのですが、寝ている最中でも私達の事を気に掛けて下さっていましたよ。)
ネルビア(私達総意ですよ総意、何処まで気遣いしてくれるのかと呆れましたけど。)
ミスターT(はぁ・・・寝ている時は、各ペンダントを外すかね・・・。)
ミツキ(それはダメわぅ! Tちゃんの心中読みと夢読みができなくなっちゃうわぅし。)
ミスターT(さいですか・・・。)
冗談とも本気とも取れる発言に、嫌気を通り越して呆然としてしまう。いや、決してマイナス感情を抱いている訳ではないため、嫌気には繋がらないが・・・。
改めて、この各ペンダントの力を思い知らされる。同時に、常に彼女達に見守られている事を痛感せざろう得ない。5大宇宙種族から託されてから、肌身離さずの状態でいたため、最早俺の身体の一部と思えてくる。
ミュティナ(・・・お兄様、本当にありがとうございます。その各ペンダントは、私達の言わば魂そのもの。それを常に持ち歩いてくれる事は、そこに私達の理があるのも当然です。どれだけ大切にされているか、本当に感謝に堪えません。)
ミスターT(こちらこそ感謝し尽くせないわ。これらの力で、どれだけ救われてきたか分からない。特にこの異世界惑星では、これらの力が魔力や魔法に匹敵する様相となっている。妹達を支えられたのも、この各ペンダントのお陰だしな。)
異世界惑星に召喚された後、ネルビア達と出逢って直ぐに使ったのが、バリアとシールドの防御機構効果である。しかも、本来なら効果が施されたペンダントを持たねば発揮しないが、それを任意指定して放つ事ができるように覚醒したのだから。
ミスターT(デュヴィジェさんの応用力と発展力には脱帽するわ。)
デュヴィジェ(実に恐れ多いですよ。小父様には感謝し切れない恩があります。この様な形で返せるのなら、今後も開発に挑んで参ります。)
ヘシュナ(あの幼子が・・・本当によくぞまあ・・・。)
デュヴィジェの姿勢に涙するヘシュナ。彼女の生誕に携わった事もあり、その成長した姿に感激している。過去にも同じ様な事があったのだが、流石は偉大な小母である。
シルフィア(とりあえず、もう暫くは休みなさい。こちらの事は一切合切任せて頂戴な。)
スミエ(後で朝食をお持ちしますね。)
ミツキ(なぬぅー?! それはわたが食べるわぅ!)
ナツミA(はぁ・・・。)
最後で出るボケに笑ってしまった。自然と笑えたと言えるのかも知れない。それだけ、僅かながらの仮眠が効果を発揮した証拠だ。ここは、もう暫く休んだ方が良さそうだわ・・・。
それからも、浅い眠りと深い眠りを交互に繰り返す。睡眠欲無効化効果を解除しない状態でこの様相だ。解除したら当面は起きれないと思われる。しかし、確かに短期間の仮眠でも十分疲労は取れていく。
そもそも、睡眠欲をカットするなど、生命体にできる業物ではない。人間ではどう足掻いても数日が限度である。それが、今の俺は半年は完全な睡眠を取っていない。正しく人外だと言わざろう得ない。
確かに、俺達地球組には魔力も魔法もない。だが、5大宇宙種族の力が、それらを互角かそれ以上に押し上げてくれている。地球では明らかに異常な能力だが、この異世界惑星では黙認されると言うのは、何とも言い難いものである・・・。
フューリス「あ、起きて来られましたよ。」
恐らく、数時間は寝たと思われる。徐に起きて、レプリカ大和を下艦しようとしたら、甲板で寛いでいる妹達と遭遇した。マットを引き、ピクニック気分である。
ミスターT「・・・戦艦大和の甲板でピクニック・・・。」
ミツキ「それを言ってはダメわぅよ。」
ナツミA「戦艦とは人を助けるための兵装ですからね。こうしたやり取りも、立派な人助けです。」
ミスターT「はぁ・・・そうですか・・・。」
よく見ると、姉妹以外にも仲間の魔物達も一緒だ。幼子達の姿は見えない。今ではすっかり人間慣れをしている。
テューシャ「凄いですよ。こちらのハーピー様方は、聞いたメロディを何でも暗記されるようで。」
エメリナ「眠らすだけではなかったのには驚きですよね。」
ミスターT「俺達は初見だが、お前さん達は同じ世界に生きる生物だろうに。種族やら何やらなど、そんな柵など蹴散らし、お互いに理解し合う努力をすべきだと思うがな。」
ミツキ「うむぬ、それでこそTちゃんわぅ♪」
ミツキが軽食を手渡してくる。それを頭を下げつつ受け取り食した。何でもシューム達の力作らしい。流石は現役の主婦である。
そんな中、静かに寄り添ってくる仲間の魔物達。今の言葉で感銘を受けたのか、俺を見る目が非常に穏やかである。確かに、初見では驚く外見をしているが、それは外見のみとなる。内面は俺達と同じ生命体なのだ。5大宇宙種族の面々も全く同じである。
アクリス「・・・貴方様のその分け隔てない姿勢には、ただただ感銘するしかありません。」
ジェイニー「魔大陸で皆様方と合流した時、そのお姿に暫く距離を置いてしまいました。しかし、貴方は初見から一切動じていませんでしたし。」
ミスターT「この世界の同じ住人だからだろうな。俺達地球組はむしろ、物凄く憧れる感じよ。」
近場のサキュバスの頭を優しく撫でる。それに実に嬉しそうに微笑んできた。どう見ても普通の人物にしか見えない。ファンタジー世界では、異性を魅了し、その精力を奪うのが存在意義だと言われているがな。
ナツミA「・・・Tさん、彼女達は相当な魅力を放っているのを感じませんか?」
ミツキ「うにゅ~・・・同性のわた達もクラクラしてくるわぅけど?」
ミスターT「そうなのか? 俺にはマジで、可愛い女性にしか見えないんだが。」
本当にそう思う。本来なら相当な誘惑があるのだろうが、それらは一切感じられない。それに驚いている一同。今度は逆に、魔物娘達の方が顔を赤くしている。
ミスターT「むしろ、彼女達を見れば見るほど、リューヴィス事変を思い出してしまう。同性として本当に申し訳なくなってくるわ。実際には目撃されていないだけだろうが、この魔物娘さん達の同族も、カス共の慰め物になっているんだろうしな・・・。」
女性陣「ア・・アハハ・・・。」
昔を掘り返すのが俺の悪い癖であるのは百も承知だが、それでもあの様相は絶対に許せるものではない。そのボヤきを伺った女性陣は、顔を引きつらせつつも笑顔を浮かべている。
そして、通例的に出るのが、その思いによる力の出方だ。性転換ペンダントが同調し、男性から女性へと変化させてしまう。最近はこの様相が本当に目立つわ・・・。その流れを目の当たりにした女性陣は、相変わらずだと呆れ顔だ・・・。
ミスT「・・・こうなる訳だ。」
ファイサ「その自慢気な雰囲気、エラい癪に障るんですけど・・・。」
メラエア「何時もの事ですよね・・・。」
ミスT「ふん、言ってろ、じゃじゃ馬娘達め。」
男性時とは異なり、女性時だと真顔で詰め寄る姿勢、これが妙に腹が立つ。そんな彼女達に舌打ちした。だが、傍らにいる魔物娘達は平然としているのには驚くしかない。
カネッド「それでも、常日頃から私達を気に掛けてくれて、本当にありがとうございます。」
ミスT「こういう性分なんだ、気にしないでくれ。」
ルマリネ「エラい素っ気無いのが何か・・・。」
キャイス「フフッ、マスターらしいじゃないですか。」
ミスT「はぁ・・・。」
やはり同性の時は、こうして胸襟を開いて会話ができるのだろう。地球組の面々、特に女性陣はミスT状態の時の方が、気さくに話し掛けてくれる。トラガンの女性陣が顕著だしな。
アーシスト「とりあえず、元気になって良かったです。昨日の貴方は相当参っていた感じですし。」
ダリネム「ミュティナさんが仰っていた通り、余り力の使い過ぎは良くないですよ。」
ミスT「そうだな・・・。だが、バリアとシールドの防御機構だけは、常時発動させておく。例の治癒力があれば、身体の欠損も治癒できるが、痛み自体を味わって欲しくない。ならば、できる限りの力を使ってでも、お前さん達を厳守し続ける。」
ネルビア「・・・感謝すべきなのか、呆れるべきなのか・・・。」
俺の言葉に深い溜め息を付く妹達。対して、魔物娘達はエラい感激したのか、俺に抱き付いて来だしていた。魔物の身体特有の癒し度には、地球組の俺としては変な感激を覚える。
ミツキ「ぬぅーん、某RPGのモンスターテイマーを彷彿とするわぅ。」
ナツミA「ハハッ、本当よね。それに溺れない所も、本当に見事だし。」
ミツキ「ハッ?! 某作品の賢者モードわぅか?!」
ナツミA「賢者というより変態よね。」
ミスT「ハッハッハッ!」
ナツミAのツッコミに大爆笑してしまった。俺自身は良く変人や変態と呼ばれるため、今の流れでは十分それに該当してくる。見事なまでの一撃だわ。
ミスT「ますます以て、お前さん達を厳守せねば張り合いがないわ。今後も奮起せねばな。」
女性陣「はぁ・・・。」
俺の言葉に、再度深い溜め息を付く一同。それに唯一釣られていないのが、魔物娘達である。ただ、一念は伝わるのに、会話ができないのが辛い所だわ・・・。
第9話・2へ続く。




