表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
162/683

第8話 探索者の理2(通常版)

 雑談を終えて城跡へと戻る。そこには既に探索者が集っており、出発の準備を行っていた。セレテメス共和国の冒険者ギルドに所属する冒険者達が大半で、俺達身内側は微々たる人数になっている。


 しかし、先の帝都対決に参加した面々とあってか、エラい注目を浴びている。大都会時の各事変と比べると、相当な評価度とも言える。それだけ、セレテメスには人材が少ないのが原因であろう。


「気になったんだが、この帝都・・・じゃない、国都本土には、セレテメス以外に街などはないのか?」

「複数存在していますよ。ただ、数年前に大規模な魔物の襲来があってから、全ての住人がこちらに移住して来ています。今は廃村や廃街状態だと思います。」

「となると、ダンジョンとかもありそうだな・・・。」


 魔物の大規模襲来となると、複数のダンジョンが存在している可能性が高い。王城周辺のダンジョン分布とは異なるだろう。ここは複数のチームに分けて探索した方が良さそうだ。


「マスター、俺達も分かれて参戦した方が良いんじゃないか?」

「そうだな・・・。獲物の製造は何とかなっているから、今は探索に集中するか。」

「おおっ! 俺達も暴れられますぜ!」

「はぁ・・・威勢が良いわねぇ・・・。」


 何時もは裏方に回っている四天王が、探索に回るとあって大興奮状態である。その姿に溜め息を付くナツミA。ミツキの方は、今も幼子達と仲間の魔物達と戯れている。


「人選は任せる。俺はここの防衛に回るとするよ。」

「了解です。」

「大盛り上がりになりそうですね。」


 四天王のやる気度は、そのまま弟子たるトラガンチーム全員に伝染していく。妹分の彼女達からすれば当然であろう。そして、トラガンチームを師匠と位置付けるリューヴィス女傑陣。彼女達にも伝染していった。正に相乗効果である。


 今回の大規模探索は、身内のほぼ全員が参加する事になった。裏方に回っているのは、海上と空中で待機中の3戦艦に乗船する、躯屡聖堕メンバーのみである。妹達も参加するとあり、相当な規模になるだろう。


 逆に、この場合はセレテメスの防衛が鍵となる。今回も俺はここの防衛に回った方がいい。残るメンツは、俺以外にミツキとナツミAの姉妹のみだ。幼子達と仲間の魔物達の面倒を見るのもある。サラとセラすらも参加するとあるので、セレテメスの守備は一層重要になる。



「最低限、各チームに数人は身内を配置してくれ。各ペンダント効果が確実に発揮されるように配慮を。」

「お任せ下さいな♪」

「片っ端から叩き潰して回りますよ♪」


 うーむ・・・大企業連合の総帥と総帥補佐がこの様相か・・・。まあ、異世界惑星を初めて満喫するとあるので、今回は黙認しよう。むしろ、彼女達がいれば、戦闘に関しては全く問題はない。


「私達は完全に補佐に回った方が良さそうですね。」

「不服だろうが、そうしてくれ。全ての不測の事態に対応し、全員を無傷で帰還させる事を最優先に頼む。」

「お任せを。今となっては警護者の端くれ、皆様方を厳守致しますよ。」


 今回が初参加となる宇宙種族組。ミュティ・シスターズのみ既に参加していたが、それ以外の面々は初参加だ。それぞれの獲物を持つ様は、正に冒険者と言える。


「T君、私達は周辺の警戒に当たった方が良い?」

「そうだな・・・その方が良いか。セレテメスの規模が20km近いから、分散して警護に当たった方が良いだろうな。」

「誰かしら残した方が良かったのでは?」

「アレがあるから大丈夫よ。」


 そう言いつつ、上空へと指を差した。中央広場上空に鎮座中のレプリカヴァルキュリアだ。先にも挙げたが、その防御効果の範囲はセレテメス共和国を軽く包み込んでいる。大規模な魔物の襲来があったとしても、都市内部に入る事すらできない。


「躯屡聖堕メンバーには、北側・西側・南側の大門に接近してきたモンスに対し、威嚇射撃を行って貰うように頼んである。東側の海上はレプリカ大和とレプリカ伊400の警護がある。問題ないと思うよ。」

「はぁ・・・防衛機構自体が大問題なんだけどねぇ・・・。」

「異世界の文明には、実に過ぎた力ですからね。」


 本当にそう思う。海上の2艦ですら、異世界惑星にとっては最強クラスの存在だ。それをも超えるのが、レプリカヴァルキュリアとなる。まあ、王城軍が宇宙船を出して来なければ、同艦を出す事もなかったのだが。


「今回はお留守番わぅ。」

「とか言いつつ、お子さん達の修行相手になってるし。」

「裏方は辛いのだよベイビー、ウッシッシッ♪」

「何とも。」


 ミツキのボヤきに、ニヤケ顔で笑う幼子達。何時の間にか、この言動ができるようになっていたのは、実に驚きである。そして、仲間の魔物達も同じくニヤケ顔で笑っている。だが、彼女達の方は魔物であるため、俺達よりも不気味さが色濃いが・・・。


「では、行って参ります。後の事はよろしくお願いします。」

「ああ、気を付けてな。」


 目の前まで来ると、小さく頭を下げる彼女。それを見た他の面々も、その場で小さく頭を下げだしている。その彼女達全員に、バリアとシールドの防御機構の効果を施した。更に改良を加えられたもので、参加する面々全員に放つものとなる。


 ただ、効果がある人物は、善心を持つ者のみとなる。セレテメス共和国在住の冒険者も参加しているため、その人物達には効果が及ばないのもいた。そして、それは身内達にしか効果の有無が見えないため、不測の事態への対処法として挙げたのだ。


 一同を見送った後、痛烈なまでに罪悪感に苛まれる。自分が行っている行為は、はたして正しい事なのかと思わざろう得ない・・・。




(・・・嫌な使い方だわな。)

(いえ、常套手段だと思いますよ。先の流れを踏まえれば、絶対的に信用できる人物かを見定めなければなりません。)

(その点に関しては、先程エリシェ様とラフィナ様よりご助言を頂きました。冒険者自体が一枚岩でないという事を伺いましたので。)


 身内達のみに念話を飛ばして会話を行う。実に嫌な使い方だが、先の新大陸などを踏まえれば、致し方がない手法だろう。全ての不測の事態には、対応できるようにせねばならない。


(善悪判断センサー、か。ここまで来ると、最早異常者とも言えてくるわ。)

(ご心配には及びません。それが人間たる存在ですからね。まだ魔物達の方が、理に適った動きをします。人間ほど、エゴに塗れた存在はいませんから。)

(そうですね。こればかりは、今後も絶対に変わらないでしょう。しかし、ミツキ様の様な生き様を持たれる方が多くなれば、自然と沙汰されていきます。それは間違いありません。)

(ハハッ、実に烏滸がましい感じですけどね。)


 和気藹々の一念こそ、エゴなどの私利私欲を打破する最強の一手、か。些細な一念だが、その効果は実に千差万別に発揮される。実際にこの目で見て、経験して来たから確信が持てる。


(四の五の言わないで、今は目の前の冒険を楽しみましょうよ。それに、根底は警護者の一念を抱くも、上辺は探索者の一念を抱くべきだしね。)

(ですね。今はただただ、この異世界惑星を満喫しましょう。)

(・・・お前さん達が羨ましいわ。)


 不安な心を見事なまでに一蹴してくれる2人。本当に感謝に堪えないわ。


 今の俺は、警護者としての理が前面に出ている状態だ。それを、探索者としての理に置き換えろと助言してくれた。確かにこの異世界惑星に関しては、警護者より探索者の方がマッチする。住まう方々には大変申し訳ないが、俺達はこの場を大いに楽しむべきである。


(・・・貴方様は、この異世界惑星を本当の世界だと思われているのですね。)

(実際にそうだしな。お前さん達の生命は本物、嘘偽りではない。)

(その通りなのですが・・・私達ですら、この異世界を何処か遠い世界だと思ってしまっている部分があるので。)

(いや、そう思わざろう得ないだろうに。魔力と魔法の概念、魔物の存在、地球では絶対に有り得ないしな。)


 この異世界惑星を地球と比べ、遥か遠い別の次元の存在だと思っている。これは今も抱いている一念だ。だからこそ、何処か突っ込めない部分が出てくるのだ。


(ゲーム感覚で過ごしたいものの、ここに住まわれる方々は実際に生きていらっしゃいますからね。その考えは失礼極まりない事になりますし。)

(しかし、その考えを出さないと、魔力・魔法・魔物などの概念を受け入れられないのが、実に皮肉な話ですけど。)

(本当にそう思います。数万年ほど、この地で過ごしていますが、今も何処か浮き足立っている自分がいますし。)

(何処からがリアルで、何処からがファンタジーか、訳が分からなくなってくるわ。)


 一服しつつ、吐き捨てるように語った。深く考え過ぎと言えばそれまでだが、実際にそこには掛け替えのない生命がある以上、軽い気持ちで触れる事は失礼極まりない。非常に矛盾とした様相である。


(・・・地球で拝見させて貰った、各種のファンタジー作品。向こうの主人公や登場人物などには、本当に心から憧れるわ。)

(ハハッ、本当ですよね。漠然とその異世界を生き抜き突き進む。それが可能ですからね。私達の場合は、そこに警護者の理が出てきてしまう。この場では探索者の理とも。)

(でも、いい加減な対応はできませんからね。ならば、この違和感がある状態でも、前に突き進む事をすべきですよ。)

(そうだな・・・。)


 本当に悩ましい概念だ。しかし、その悩ましさも抱えつつ、進まねばならないのが今となる。


 この異世界惑星に召喚されて、改めて己の立ち位置を思い知らされるという感じである。それでも、そこに飛ばされたのは、明確な使命があってこそである。そこだけは間違いない。その使命が分かれば楽なものだが、実際には自分で捜し続けるしかないのが実状だ。


 つまり、それこそが“探索者の理”と言えるのだろうな。むしろ、その理を定められるだけマシと言えるのかも知れない。それすら定められない場合は、この異世界惑星を別のものだと思い込み、私利私欲に走る愚物に堕ちて行くのだから。


 現に、異世界への到来時は、何らかの特質的な力を備える場合が多い。俺達の場合は、地球で得て来た全ての力と知識と技術力になる。それらを正しく扱えるかどうか、ここが探索者としての生き様となるのだろうな。


 どの世界に赴いても、各種の理からは絶対に逃れられないわ・・・。


    第8話・3へ続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ