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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第7話 束の間の休み3(通常版)

「・・・何と言うか・・・。」

「・・・こういう場合は、何もせずに驚愕するだけでいい。」


 帝国城外に出つつ、その解体の様相を見守る。内部では本気になった三姉妹が、片っ端から破壊し捲くっていた。残骸が周りに飛散する事への対策は、近場に居るルビナ・ヘシュナ・ナセリス・デュヴィジェが超能力とバリアとシールドの防御機構で完全に防ぎ切っていた。


 ちなみに、帝国城を解体する事は、在住している住人達に後から告げる事になった。元皇帝のゼデュリス自ら出向き、その意向を丁寧に伝えて回っている。権力の象徴だった事は、住人の誰もが知っていたため、反対する人物は皆無との事だ。


 住まう民を重視しての行動が、ここに来て役立った形だな。彼女の下積み時代の成果とも言える。


「あの三姉妹の方、本当に凄かったんですね・・・。」

「ミュティ・シスターズとサシで勝負したら、簡単に負けるよ。身体能力がケタ違いに強過ぎる。巨大帆船を軽々と持ったり、城を素手で解体したり、腕を切り落としても再生したりと。」


 自分で言ってて何だが、改めて三姉妹の実力を窺い、呆れるしかなかった。彼女達の力は何度も窺っていたが、こうして目の当たりにすると凄いとしか言い様がない。


「そんな3人ですが、マスターには遠く及ばないと何度も言い切ってますけどね。」

「自分達を支えてくれたのは、マスター以外にいないと豪語していますし。」

「そ・・そうですか・・・。」


 2人の言葉に呆れ返っている妹達。実際に四天王は三姉妹と共に武具の製造に携わっている。その際に色々と伺っているのだろうな。


「生命体は、単独では生きる事ができない。あの様な超絶的な力を持つ三姉妹でも、それを重々承知しているみたいです。」

「力を持つ故に、原点に回帰する、と。」

「そうだな、本当にそう思う。」


 一服しながら、解体の様相を見守る。四天王の方も、その場に座り込み一服している。規模的に時間が掛かると思っていたのだが、三姉妹の力により意図も簡単に破壊し尽くされていく。今度から、建築物の解体には三姉妹に委せた方が良さそうだ・・・。




 夕刻には、帝国城は完膚無きまでに破壊し尽くされた。残骸は一時的に、近場の砂浜に置く事にした。後に人工的な港を作るための、埋め立て用の資材にするらしい。ちなみに、この残骸群は超能力での輸送となる・・・。


 全てが無くなった城跡は、見事なまでの更地に化けた。それなりに荘厳な城だったのだが、こう見ると非常に脆く儚いものだと痛感せざろう得ない。


「ふぃ~・・・やり切ったじぇ~♪」

「ギガンテス一族が真骨頂ですな♪」

「久方振りの大暴れでしたよ♪」


 やり切ったと言った表情を浮かべている三姉妹。輸送に携わった4人も同じ表情である。一部始終を見守っていた俺達は、ただただ圧倒されるしかなかったが・・・。


「と・・ところで・・・ここは今後どうされるのですか?」

「外交を行う邸宅が必要となるので、小さな建物は建設しようと思います。他の土地は住人の方々にオープンスペースとして解放しようかと。」

「大広場的なのが良いと思います。非常時は避難場所にもなりますし。」

「非常時を起こさないようにするのも、俺達の使命だわな。」


 再度一服しつつ、そのままとある方向を見入った。その方角には、魔窟となった王城がある。今後は向こうからの横槍が横行しだすだろう。


「あの・・・ミスターT様、今後もお助け願いたいのですが・・・。」

「ああ、そのつもりよ。ここまでやらかして、途中退場なんかはしない。全てが片付くまでは、お前さんの補佐に回らせて頂くよ。」


 傍らにいるゼデュリスの頭を軽く叩いた。彼女なりの決意を持っての行動だろうが、それでも不安な部分があるのだろう。何処まで補佐できるか分からないが、責任を持って支え抜かねば失礼極まりない。


「マスター、俺達もここに住んでも構わないか?」

「それはゼデュリスさんに聞いてくれ。」

「い・・いや、それは分かるんだが・・・戦略上の問題での部分なんだが。」

「そう言えばそうか。旧デハラード・旧リューヴィス・旧アルドディーレ、ここの首脳陣が旧帝国本土に集まった事になるしな。」


 彼の言葉で我に返った。確かに3大都市に住まう面々が、帝国本土への移住を望んでいる事になる。世間体から見れば、それが政治的な部分に引っ掛かるのは言うまでもない。彼らの不安そうな表情を見れば、それを痛感させられる。


 色々と思い巡っていると、徐に歩み寄って来る面々。それはリューヴィスの女性陣だった。彼女達の表情を窺えば、何を抱いているかは痛感できる。そんな彼女達に深々と頭を下げた。


「リューヴィス住人一同、マスターに多大な恩を受けましたからね。全て貴方に任せると決めましたので。」

「・・・ありがとう。」

「あの時、形振り構わず動いた結果ですよ。」


 俺の右手を両手で包んでくるアクリス。込められた思いは、リューヴィスの女性陣を代表するかのようだ。本当に感謝に堪えない。


「先の発言は、一応確認のためのものだ。俺達総意はお前さんに付いて行くと決めたしな。リューヴィス総意と共に、ここに移住させてくれ。」

「すまない・・・。」


 オルドラと彼の仲間達も、改めてエレメネス国に移住する事にしたようだ。彼ら自体、冒険者から這い上がったためか、その結束力は非常に力強い。仲間を通り越し、盟友の域に至っているのが分かる。


「私達も、こちらセレテメスへの移住を正式に申し出たいと思います。アルドディーレに戻る事はないでしょう。こちらが私達の第2の故郷です。」

「ありがとう。お前さん達の強い意思、確かに受け取らせて頂くよ。」


 アルディア達アルドディーレの住人達も、セレテメス国への移住を決めたようだ。まあ、彼女の場合は王城への借りがあるため、ここを足掛かりに力を付ける事になるだろう。それでも、ここセレテメスが第2の故郷になるのは間違いない。


「そう言えば、シュリーベルからの移住者はいなくなった感じですよね。」

「カルーティアスもな。デハラード・リューヴィス・アルドディーレのみが、セレテメス国に移住した形になる。」

「その2都市は、旅人や冒険者が集う事で繁栄した街だからな。長く永住する存在がいないのが欠点だったと思う。対して、3つの都市はそれぞれに住まう場所があった。この差がデカいわな。」

「確かに。」


 カルーティアスは実質的に悪の巣窟たる王城軍に化けた。最早、名前で呼ばれる事はないと思われる。シュリーベルはキャラバン的な街から発展したため、永住する人物が少なかった。また、その大多数は新大陸へと移住したため、王城を含めて2都市は崩壊したとも言える。


「ゼデュリス様、このセレテメス国を末永く善道で進む都市へと発展させて下さい。全ては住まわれる方々の安穏を目指す、それが王道ですので。」

「お任せ下さい。私の目が黒いうちは、絶対に間違った道には進ませません。」


 エリシェの提言に、背筋を正して応じるゼデュリス。そこには、確固たる一念が据わっている事を感じずにはいられない。彼女と初めて出逢った時と全く変わらないものだ。



「とりあえず、向こう暫くは休むとするか。今は下手に動くより、セレテメスの防備を整えた方がいい。」

「空の方はどうされますか?」

「レプリカヴァルキュリアか。」


 彼女が指し示す先には、レプリカ大和の直上に待機中のレプリカヴァルキュリアがいる。帝都対決時に呼び出した、手持ちのカードの1つだ。セレテメスの住人もそうだが、異世界組の面々も、空に浮かぶ艦体を目にしては驚いている様子だ。


「対宇宙船兵器になるから、上空で待機していた方が良いかもな。ただ、1つだけ挙げるとするなら、スーパーレールガンの矛先は王城に向けていた方がいい。」

「抑止力ですね、了解しました。」

「嫌味なほどの破壊力がある兵器ですからねぇ。」


 確かにその通りだ。レールガンのフルチャージからの射撃でも、地球程度の岩石惑星を一撃で破壊する事ができる。ましてや、スーパーレールガンのフルチャージは、太陽を軽く消滅する事もできる。


「ハイパーレールガンは、黒いモヤを瞬殺しましたからね。」

「ん? アレはカルテット・キャノンがあったからこそだろうに。天の川銀河に近い相手を消すには、色々と下準備が必要だったしな。」

「複合的な要因が絡んで、やっと互角になりましたからね。」


 本当にそう思う。決め手が俺の殺気と闘気の心当てであろうが、それを拡大化させなければ不可能な領域であった。ヘシュナが言う通り、複合的要因が絡まなければ、とても成し遂げられるものではなかったのだ。


「あの、マスター、今後はどんな感じが予測できますか?」

「短期間で宇宙船を出して来たたからな。ただ、海中の同船だけで、地中に埋没している2隻は出せていない。最大は3隻による侵攻だが、兵器も防御も使えないのなら、威圧しかできないのが実状か。」


 一服しながら思い遣る。新大陸の宇宙船の稼動は実現されたが、旧デハラードと魔大陸の地中にある2隻はまだ稼動されていない。だが、既に同型船を稼動した手前、必ず動かして来るのは間違いない。


「と言うか、レールガンを超えるスーパーレールガン、その技術力には恐れ入りました。」

「あー、アレはルビナさんやヘシュナさんの実力あってのものよ。ハイパーレールガンに関しては、お前さん達の女王陛下デュヴィジェさんが開発したが。」

「フッフッフッ♪ 開発は奥が深いのですよ♪」

「はぁ・・・。」


 自慢気に語るデュヴィジェ。その彼女の頭を軽くどつくヘシュナ。それに小さく悲鳴を挙げている。今のは俺もやるべき行為だが、ヘシュナが代弁してくれた感じである。


「まあ冗談さておき、連中は既存の物品しか使う事ができないと思います。稼動した宇宙船の様相を見ていましたが、エネルギー炉が物凄く不安定でしたし。そこに3発のスーパーレールガンの着弾、当面は修理を余儀なくされるでしょう。」

「ですねぇ。それに、連中が修理方法を編み出させない場合、簡易修理状態で宇宙空間に出たとしたら、大変な事になりますし。」

「気圧の変化による、内部に居る方への致死の一撃と。」

「大気や水がある惑星に、こうして過ごせる幸せを痛感させられるわな。」


 俺の言葉にウンウン頷く一同。地球組と宇宙種族組は無論だが、異世界組の面々ですら頷いている。恐らく、宇宙種族の力が、魔力と魔法に通じる部分があるからだろう。詳しくは分からないが、同じ類と言い換えられる。


「まあ何だ、海中宇宙船の修理に時間が掛かるのと、地中宇宙船の稼動にも時間が掛かるのを踏まえれば、当面は安心できるかもな。」

「悪党の本質を窺えば、最大戦力での完全屈服を狙う傾向がありますからね。今は一時の休息を満喫しましょう。」


 そう言いつつ、俺の右腕に自分の左腕を絡めて来る彼女。それに驚くも、彼女の表情は実に穏やかだ。実際だと、娘の年代になるからか、甘えも兼ねているのかもな。


「・・・小父様、それを甘えだけと捉えるなら、相当な朴念仁ですけど・・・。」

「はぁ・・・全て知っている。彼女達が今まで、どれだけの苦難を乗り越えて来たのか。それを窺えば、拒否する事は失礼に値する。」

「フフッ、貴方らしいですね。」


 イザデラの厚意を受けている俺に対して、周りの女性陣から殺気に満ちた視線を受け続ける。しかし、俺の内情を知っているヘシュナは、自愛に満ちた目線で見つめてくれていた。これはデュリシラと同じく、見守るという部分に当たる。


「おーしっ! ゼデュリスちゃん、星空の元でパーティーをやるわぅよ!」

「良いですね、分かりました。」

「お手伝い致しますよ。」

「はぁ・・・ある意味、今からが本番とも言えるわね。」

「ウッヘッヘッヘッヘッ♪」


 何ともまあ・・・。しかし、ミツキの一同を労いたいという一念は、痛烈なまでに感じた。まあ、彼女が食事に有り付きたいというのが本音だろうが・・・。


 ともあれ、帝国城があった場所の更地で、臨時のパーティーを行う事となった。城下町全体に住まう方々には、後日大規模祭りを行うとの事で、今は俺達だけの些細なパーティーという感じらしい。


 むしろ、翌日以降がどうなるかが分からない状態だ。今直ぐには攻めて来ない事を踏まえ、小規模なパーティーが無難だろう。全て片付けば、大規模祭りを行っても問題はない。


    第7話・4へ続く。

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