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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第7話 束の間の休み2(通常版)

「・・・こんな終わり方で良かったので?」

「殺さないで終わるなら、それに越した事はない。そのための超越した力だしな。呆気ない流れだろうが、全ての戦いが終息に向かえばそれでいい。」


 納得できなさそうな彼女を嗜めた。目の前の戦いに固執するだけが全てではない。警護者の役割は、全ての紛争を終息させるために動く存在だ。この様な呆気ない終わり方だろうが、それで安穏に近付くなら安いものである。


「ただ・・・魔物だから殺害し、人間だから生かす、俺には理解し難い概念だが。」

「そうは仰いますが、実際に貴方がその立場に至ったら、間違いなく殺害するでしょう。」

「オフコース。」


 黒ローブとカースデビルの遺体を、炎魔法で焼き尽くすイザデラとイザネア。他の面々も撃破した魔物共の後始末に追われている。


「T君の姿勢、確かに分からないでもないけど、一歩間違えば寝首を掻かれるわよ?」

「その時はその時、俺の生き様が悪かったと素直に受け止める。」

「はぁ・・・相変わらずですね。」

「生きるとは、そんなもんよ。」


 好き好んで殺害をするようになれば、もはや警護者ではなく殺人者である。ただ、先も挙げた相手の種族により変えるのは、確かに如何なものかと思えてくる。それでも、相手を倒さねばならないのが確実なら、問答無用で引き金を引くのみだ。


「ぬぅーん、2人からの猛攻に、為す術がないTちゃんわぅ?」

「寝首を掻くのがそれだからねぇ。睡眠欲無効化能力を切った後、数日は動けなくなるからチャンスよね。」

「むしろ、添い寝をしたいと言い出してくるわぅか?! ウッシッシッ♪」

「はぁ・・・何とも。」


 ミツキの言葉に瞳を妖しく輝かせる女性陣。確かに睡眠欲無効化能力を切った場合、相応の超眠気の襲来がある。数日間は動けなくなるため、その間のケアは周りに任せるしかない。その時に、一体どんな事をされるのか、実に怖くて仕方がない・・・。


「シュームさん達の提示に、連中は一応応じてはいた。実際に修行するかは不明になるが、お前さん達も今以上に力を付けた方がいい。」

「ですね。慢心こそ最大の敵でもありますし。」

「なら、私達が直々に修行の相手になるわよ。あんな姑息な連中なんざ、武器を使わずに捻じ伏せられるぐらいの実力を持たせてあげるわ。」

「いいですね。スパーリングならお手の物ですよ。むしろ、肉弾戦こそ最強の技になってきますからね。」

「はぁ・・・程々にしてあげてくれ・・・。」


 一気盛んに燃え上がるシュームとナツミYU。また、他の身内達もしかり。妹達との修行ができるとあってか、相当な燃え上がり様だわ。


 今まではリューヴィスの女性陣に付きっ切りであったからか、我勇んで修行相手を買って出る身内達。5大宇宙種族の面々は、イザリア三姉妹の修行を買って出てきた。魔力と魔法に関しては敵わないだろうが、実戦経験では遥かに上手である。良い修行相手になるだろう。


 これ、最強の存在と言うのは、こうして切磋琢磨して修行をした先に得られるものだな。確かに最初から最強状態で始まるのは、俺も経験したため清々しい事この上ない。しかし、後から始まるのは、全てのパワーバランスの調整という後始末だ。


 何も考えずに、自身が持つ力を最大限発揮しつつ、最強状態で突き進む。それができればどれだけ気が楽か・・・。各作品の主人公達が本当に羨ましいわ・・・。


 それでも、警護者に走り出した手前、調停者と裁定者の役割は担わなければならない。特にこの異世界惑星に介入したからには、最後までその生き様を貫かねばな。




 全ての後始末を終えた面々。街への被害は皆無で、一安心といった所か。そして、残るは帝国城に陣取る宰相共を倒す事になる。だが、同城に陣取っていた連中全てが、いなくなっていたのだ。


 直ぐに帝国領土全てを探索したが、見つける事はできなかった。推測だが、先の戦闘の間に逃げたのだろう。ゼデュリスが言うには、宰相はそこまで小心者ではないとの事だ。しかし、実際に姿が見えない。


 そこで、メカドッグ嬢達に探索を指令した。恐らく、王城辺りにいると思われる。または、新大陸へ逃げた可能性もある。今は彼女達の探索結果を待つしかない。


「城は使わないのか?」

「はい。ここは最早、権力の象徴に過ぎません。義父が積み上げてきたのは、街全体の安穏です。そんな義父を唆し、短期間で城を築いたのがあの宰相です。」


 帝国城内も探索をしたが、蛻の殻の状態だった。宰相とその配下全てが消えたというしかない。そんな中、大広間の玉座を見つつ、吐き捨てるように語るゼデュリス。


「規模的に大きくないので、破壊するなら直ぐに行った方が良いと思います。ましてや、権力の象徴とあれば、後の要らぬ火種を招きかねません。」

「むしろ、王を持たぬ国も良さそうです。国民の方々はどう思われるかは分かりませんが、その方が善政を敷き易いですし。」

「元から、王位など捨てるつもりでしたので、その方が良さそうですね。」


 ハッキリと言い切る彼女を見て、既に心が据わっている事を痛感した。皇帝陛下に返り咲く事ができるようになったが、それには一切執着を見せていない。むしろ、今直ぐにでも皇帝から離れたいと思う一念が非常に強い。


「ここを壊すなら、私達に全てお任せを。国民の方々の税収で建築された物、それを破壊するのは失礼極まりない行為です。ですが、エリシェ様が仰った通り、後の火種になるのなら無くすべきです。」


 そう言いつつ、玉座の前へと進み出る彼女。そこからゼデュリスを招き、玉座へと座るよう促した。それに応じて、ゆっくりと座る彼女。


「一応、玉座に座った事で、無事皇帝陛下に返り咲く事ができ、城を不法占拠していた賊徒を追い出したとも言いましょうか。それに、貴方がここに座られた事を、ここの全ての者達が承認します。」

「了解致しました。」

「待つわぅ! 全員で写真を取るべきわぅよ!」

「あー、証拠写真よね。直ぐに壊す事になるけど、証拠は残した方が良さそうだし。」

「それ、後の要らぬ火種になりませんか?」

「全て消すのなら、記念写真程度にしかならないと思う。」


 ここはミツキのプランに乗った方が良いだろう。証拠写真を残す事と、記念写真という意味合いも兼ねるために。もしそれにより、後に要らぬ火種となるなら、その都度対処すればいいだけの事だ。


 性転換ペンダントの効果を切り、男性へと戻る。任意で効果が切れたので、今は男性の姿で問題ない。むしろ、写真に写らされるのなら、こちらの方がいいわ・・・。


「はぁ・・・今だに写真が苦手なのねぇ。」

「昔から写真にだけは写りたくないと仰ってましたし。」

「え・・でも、私とは何度も一緒に写ってくれましたよ?」

「・・・生きていた証が欲しかったからな。今はこうしているが、あの時は今生の別れと思っていたしな・・・。」


 徐に一服しながら、玉座の方へと向かった。個人的な事では写りたくないが、それが記念となるのなら話は別だ。ここはそれに応じるしかない。


「だが、昔あっての今がある、それは間違いない。ならば、“大統領”ゼデュリスさんの就任式として、それを大々的に広めるとしようか。」

「おー! いいですね! セレテメス初代大統領ゼデュリス様、良い響きです♪」

「はぁ・・・君らしいわね。」


 静かに玉座へと歩み寄る彼女。それを見た他の面々も、玉座の方へと歩み寄って来る。ミツキによる記念撮影のプランだったが、それに乗ってみた様子である。


「はぁぅ! カメラを忘れたわぅ!」

「あー、カメラなら持ってますよ♪」

「私達の必須アイテムです♪」

「おおぅ! やりおるわぅ♪」


 そう言いつつ、腰のポシェットからデジタルカメラを取り出す双子。確かに地球では、サラとセラがデジタルカメラ片手に、身内達を写真に収め捲くっていた。一種の写真家である。


 善は急げと言った形で、今居るメンバーのみで撮影を行う事にした。できれば全員での撮影が良かったのだが、フルメンバーだと収まり切らなくなる。ここは妥協して貰うしかない。


 また三脚を持ち合わせていなかったのだが、何と超能力ペンダントによるカメラを浮かせての撮影らしい。見事と言うか何と言うか・・・。ルビナご自慢の力を、こういった形で使って良いのかと思ったりもするが・・・。


 配置は、玉座に座るゼデュリスを中心に、妹達13人が揃う形にする。その周りを俺達が囲む形にした。また2種類ほど撮影するとの事で、1つは直立による真面目写真、もう2つは自由ポーズによる写真との事。それなりの修羅場を潜った後の撮影とあり、一同して和気藹々としているのが何とも言えないわ・・・。



「おーしっ! 1枚目は真面目わぅ!」

「いきますよー!」


 指定の位置に直立し、カメラのレンズを凝視する。超能力による遠隔操作で、シャッターが切られた。数枚連続して撮影し、その中で良いものを選ぶらしい。


「おっしっ! では2枚目わぅ!」

「自由ポーズをどぞー!」


 自由とあってか、それぞれが格好を見せた形でのポーズを取りだしている。俺の方は一応、腕組みのみで済ませたが、近場にいた妹達に抱き付かれる始末だった・・・。そのまま遠隔操作によりシャッターが切られる。


「何かズルくない・・・。」

「皆さん方に抱き付かれるとか・・・。」

「はぁ・・・勘弁してくれ・・・。」


 恒例のヤキモチである・・・。しかも、相手が異世界の美女とあるからか、余計ヤキモチを妬いているようだ。このぐらいは勘弁して欲しいものだが・・・。


「ま・・まあともあれ、これで証拠は抑えられました。宰相側が何か言って来た時は、これを提示するのも良いでしょう。それと、改めて伺いますが、ここは完全に破壊をしてもよろしいですか?」

「はい、後の遺恨は残さない方が良いと思います。」

「ラジャラジャ~! さーって、やりますかの!」

「皆さん、一旦退避を。」


 記念撮影を終えた一同を移動させる三姉妹。一体何を行うのかと異世界組は興味津々で、地球組と宇宙種族組は先が読めているため苦笑い程度に済ませている。


 遠退いたのを確認した三姉妹は、握り拳で玉座を殴り付ける。本来であれば、自身の拳が怪我を負うだろう。しかし、そこは最強の宇宙種族たるギガンテス一族。その拳で堅固な玉座を一撃で木っ端微塵に破壊してしまった。それに驚愕する一同・・・。


 そう、異世界組の驚愕なら分かる。だが、実際に殴り付けで物品を破壊したのを見たのは、今回が久し振りの地球組と宇宙種族組。特に玉座などのしっかりとした物品の破壊は、今回初めて見る。かく言う俺もしかりで、それを目の当たりにした。驚愕する以外の言動があるなら、是非とも教えて欲しいものだわ・・・。


 その後も玉座周辺を大破壊的に破壊していく三姉妹。徐々に悪化していく大広間が、音を立てて崩れだしていった。崩落に巻き込まれるかと思ったが、そこはルビナ直伝の超能力、残骸を浮かせて端へと振り分けていった。


    第7話・3へ続く。

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