第7話 束の間の休み1(キャラ名版)
帝国本土へと侵攻して来た王城軍。相手は主力陣が出揃い、事もあろうか宇宙船すらも繰り出して来た。これは流石に看過できる事ではなかったため、こちらも奥の手のカードを切る事となる。重装甲飛行戦艦レプリカヴァルキュリアの投入だ。
規模からすれば、3大レプリカ艦は宇宙船には遠く及ばない。しかし、その運用実績は遥かに優れている。どんな強大や超大な力があっても、それを使いこなせなければ意味がない。特に、必殺兵装たるスーパーレールガンの稼動には、相手は愕然としていた。
魔力と魔法を駆使すれば、宇宙船の稼動と操作に関して実現できる事が確信できた。だが、それ以上の踏み込んだ運用法が確立できていない。エネルギー弾を受けた宇宙船を見たが、バリアとシールドの防御機構すら働いていなかった。
もし今後、相手がバリアとシールドの防御機構に、スーパーレールガンなどの武装を使う場合は、こちらも踏み込んだ戦術を展開する。力の使い所が難しいとしか思えないわ。
相手の宇宙船を退けた後は、地上の残党を掃討するのみとなる。黒ローブはイザネアが、偽カースデビルはイザデラが始末している。残りは、偽勇者共のみとなった。
身内の面々も手を出したいようだが、ここは異世界惑星の主役となる妹達に委せるようだ。まあ、不測の事態として、何時でも加勢できるようにしているみたいだが。
カネッド「ほむ、向こうも終わったようだし、残りは貴様等だけだな。」
ダリネム「覚悟して貰おうかね。」
妹達10人が対峙するのは、偽勇者の仲間の6人。相手を見る限り、戦士・剣士・盗賊・アーチャー・魔道士・アコライトといった感じか。バランスが取れたパーティー構成だわ。
シューム「あー、一応埋め合わせで居た方が良いわね。」
ナツミYU「そうですね。」
加勢を申し出るシュームとナツミYU。どうやら、人数的に2人ほど足りないためである。しかし、少なくとも出番を奪われると思った妹達は、非常に怪訝そうな表情を浮かべている。だが、シューム達の実力を窺えるとあってか、黙認する様子だ。雰囲気で勝負を勝ち取った感じである。
キャイス「えー・・・どうされますか?」
シューム「・・・アンタ等、その中で一番強いのは誰かしら? タイマン勝負してあげるわよ。」
剣士「・・・俺がやろう。」
ナツミYU「先輩、私も暴れますよ。」
シュームの挑発に乗って来る剣士。手に持つ獲物は、偽勇者と同じく禍々しい魔剣だ。裏で入手したのだと思われる。それを見たナツミYUの瞳が輝きだし、彼女に加勢を申し出た。
アーシスト「なるる、これで人数分けはOKになると。」
ルマリネ「一気にやった方が良いのでは?」
メラエア「そうね、その方が良さそうかも。」
余裕満々といった感じの妹達に、相手側が怒りを露わにしだしている。しかし、それを感じた妹達から、末恐ろしい殺気の目線を投げ付けた。それに顔を青褪めて震え上がる相手側。
彼女達の場合は、自意識過剰の天狗状態ではない。今までにおける修行の数々により、相手の戦闘力を見極める術を学んでいる。偽勇者の仲間達が、どの様な戦いをしてきたかは不明だが、妹達の方が遥かに修羅場を潜って来たと断言できる。
そんな中、先手必勝的に動き出す剣士。禍々しい魔剣を両手に持ち、シュームに肉薄する。すると、振り下ろされる太刀筋を何と紙一重で回避していく彼女。剣士の方もそれなりの実力を持っているようだが、それを物ともしない様相だ。
それに、シュームはまだ自前の獲物に手を付けていない。つまり、全く以て本気を出してはいないのだ。それを見たナツミYUは、自然と身を引いて一服をしだしている。
剣士「貴様・・・武器を取れ、我を侮辱する気か・・・。」
シューム「んー、取る事もないわねぇ。アンタがどのぐらいの実力かは知らないけど、身内には私達以上に強い面々がゴロゴロしているわよ。」
全ての斬撃を紙一重で回避し続けるシューム。それを一服しつつ、溜め息を付いて見入るナツミYU。以前伺ったが、この異世界の住人で凄腕の相手と当たる事を楽しみにしていたと言うだけに、相手の力量を知って相当ゲンナリしているのが分かる。
シューム「悪いけど、時間の無駄ね。出直してきなさいな。」
そう言いつつ、瞬発的に戦闘力を増加させる。相手の斬撃を見切った直後、その顎に軽く拳で殴り付けた。相手の力を利用したカウンターで、その一発で剣士は白目を向いて気絶する。
シューム「ふむ・・・殺した方が良かったかな?」
ナツミYU「私に聞かないで下さい。ただ、生かしておくと、後々の火種になりますけどね。」
シューム「そうねぇ・・・どうしようかしら。」
徐に腰にある拳銃を抜き、気絶する剣士に向ける。そのまま、相手の頭の真横に発砲した。放たれた弾丸は地面へと着弾している。それを見た他の5人は愕然とし、恐怖に震え上がっていた。恐らくこれはシュームによる演出だが、見事なまでに効果があったようだ。
シューム「ねぇ、アンタ等、一度だけ機会を与えてあげるわ。コイツと一緒に死に物狂いで修行をしなさい。そして、再度彼女達と再戦しなさいな。こんな見苦しい戦いを見せられて、実に不愉快極まりないわよ。」
今度はその拳銃の銃口を5人に向ける。それを見て驚愕し、その場に座り込んでしまう。彼女の本心としては、この場で完全決着を狙いたいのだろうが、余りにも実力が離れているため、チャンスを与える形で撤退を促したと思われる。
ナツミYU「彼が貴方達の中で一番強いのなら、この様相を見れば一目瞭然でしょう。魔法などの強さもあると思いますが、私達には一切効きません。先輩が言う通り、一度出直された方が良いと思います。」
シューム「言っとくけど、私は周りと違って短気だからね。間違った行動を取ろうものなら、この場で射殺しても構わないわよ。それに、あそこにいる姉ちゃんは、私なんか話にならないぐらいに容赦しないし。」
ミスT「はぁ・・・。」
そう言いつつ、俺の方を指差してくる。5人とは過去に偽勇者と共に対峙した事もあるため、その様な実力者だったのかと驚愕していた。まあこれもハッタリの1つなのだが・・・。
一応は、俺の意思を汲んでくれた形なのだろう。黒ローブとカースデビルとは魔物の属性が感じられたため、問答無用に抹殺した流れになる。対して、偽勇者とその仲間達は人間だ。一度だけは殺しはせず、チャンスを与えた感じなのだろうな。
ただし、シュームやナツミYUは、二度目の対峙は容赦ない攻撃を繰り広げる事で有名だ。ここで応じない場合や、まともな修行をせずに現れた場合は、その後の末路は火を見るより明らかである。本当に恐ろしい限りだわ・・・。
シュームの提言に、武器を収める5人。それを見た妹達は落胆したものの、要らぬ戦いはしないに限るという概念も身に着けている。少しは安心した感じなのだろうな。俺が彼女達の立場だった場合でも、同じく思う筈である。一応・・・。
最後は偽勇者のみとなるが、既に決着が着きそうだった。実質的にエメリナとの一騎打ちになっているが、以前の様な弱々しさは一切ない。相手の猛攻の全てを払い除け、反撃の機会を窺っている。フューリスとテューシャはセコンドの形で見守っていた。
エメリナ「あら、お仲間は戦意喪失で無条件降伏した感じですよ?」
偽勇者「ぐっ・・・役立たず共め・・・。」
エメリナ「それは貴方も同じではなくて? 何でもかんでも貴方が全て決断し動く。故に仲間を信用しない故に、実力を付ける機会を失ってしまった。マスターが仰る通り、全ては貴方の無策が責任ですよ。」
偽勇者「お・・おのれ・・・。」
うーむ、見事な挑発だわ。しかし、その挑発は的確に相手の内情を見抜いている。今までの流れを見る限り、偽勇者が全てを取り仕切っていたのは明白だ。つまり、彼女が言う通り、仲間を信用せずに動いていただけに過ぎない。
更なる猛攻がエメリナに襲い掛かる。しかし、その攻撃のどれもを愛剣で払い除け続ける。初めて対峙した時とは雲泥の差だと言わざろう得ない。つまり、あれから修行をし続けたか、しなかったかの差である。
最後は、相手の剣を弾き落とし、全身の勢いを乗せた蹴りを放つ彼女。その蹴りは偽勇者の顔面にヒットし、痛みにより地面へと転がりのた打ち回っている。これから推測するに、過去にイザリアからの突き刺し攻撃以外、反撃らしい反撃を受けていないと見て取れた。
フューリス「決着が着きましたね。」
テューシャ「確かに、話にならないレベルとしか。」
加勢するまでもないと呆れて見せる2人。エメリナと同じく、2人も絶え間ない修行を繰り返してきた。それに対しての偽勇者の様相を見れば、本当に修行の差がデカく出たと思える。
偽勇者「ぐ・・ぐぐっ・・・。」
ミスT「おーい、相変わらず“ぐぐっ”しか言えないのか?」
シューム「これが自称勇者ねぇ・・・身の程知らずにも程があるわ。」
痛みを堪えつつ、地面に転がる魔剣を取って立ち上がろうとする偽勇者。そこに容赦ない弾丸が降り注ぐ。シュームの拳銃による射撃で、相手に当てないように放つ弾丸だ。一歩間違えば直撃する事を思い知らせている。それを見た偽勇者は恐怖に震え上がっていた。
シューム「ほら、もう止めなさいな。退き際を設けてあげてるんだから、素直に退きなさい。」
ナツミYU「まだまだ修行が足らない証拠ですよ。」
態とらしく嘲笑って見せる2人に、激昂する偽勇者。この姿勢は、他の仲間達とは異なる。悪道に走ってはいるが、6人の仲間の方は偽勇者とは異なる気質を持っているのが分かった。だが、今も激昂状態の偽勇者に、米神擦れ擦れに射撃した。人工腕部のマデュース改による、精密射撃だ。
ミスT「・・・既に終わった状態で、更に蒸し返すのか貴様は。殺されなかっただけ有難く思え。貴様なんぞ、何時でも殺害できる事を忘れるなや。」
そう語ってみると、徐に歩み寄る仲間達。気絶した剣士は戦士が担いでおり、負傷した偽勇者を支える魔道士。そのまま、転送魔法により去って行った。実に呆気ない終わり方である。
実際に完膚無きまでに叩き潰す方が良い場合がある。しかし、あそこまで差が開いている場合は、態と退かせる方がいい。受けた屈辱をどう返すかは相手次第だが、生命あっての物種である。
そう、警護者自体は、殺し屋でも戦争屋でもないのだからな。
第7話・2へ続く。




