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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第5話 帝国の皇女2(キャラ名版)

シューム「はぁ~・・・君のそれ・・・何時喰らってもゾクゾクするわぁ~・・・。」

ナツミYU「先輩・・・それ、完全にマゾまっしぐらですよ・・・。」

シューム「そうは言うけど・・・私達の誰もがそうじゃないかしら・・・。」


 怖ろしい事を言いなさるわ・・・。そうである、俺の殺気と闘気の心当てを受けた事がある女性陣は、その力を受ける度に変な興奮を覚えだしているのだ。


 確かに、これら波動を受けた面々は、もれなく凄まじい力を得るに至っている。黒いモヤ事変も含めて、相当な力を得ているとも言えた。身内の精神力の強さが、異世界組の面々に追随すら許さない力を誇る様は、俺の力が切っ掛けとなっていると言える。


ナツミA「あー・・・Tさん、それを止めないと大変な事に。」


 そんな中、ナツミAよりストップの声が掛かる。そちらを窺うと、何と仲間の魔物達が全員気絶しているではないか。逆に幼子達は、何処吹く風ぞと言った感じで不思議がっている。


ミツキ「おおぅ、お子さん達はナチュラルキラー細胞が働いているわぅ?」

ナツミA「そんな感じかしらね。殺気と闘気が魔力に近い性質と言えるらしいから、それらに免疫力があるのかも知れないわね。」

ミスターT「平然としているお前さん達も脅威だが・・・。」

ナツミA「ん? それを言うなら、シルフィアさんとスミエさんもしかりですけど?」

ミツキ「免疫力は偉大わぅ♪」


 アッケラカンと語る姉妹に笑ってしまった。彼女達やシルフィアにスミエも、俺と同じ殺気と闘気の心当てを放てる。その波長こそ異なるが、殆ど同じ波動だ。詳しい事は分からないが、それを免疫力と語るのは理に適っているだろうな。


 殺気と闘気の心当てを止めると、その場で脱力していく面々。仲間の魔物達と違い、気絶しないのだが、相当な疲労度を醸し出している。同時に、その波動を自らの力にしているのが感じられた。特にイザリア達三姉妹や妹達が顕著である。


ミツキ「受ければ受けるほど、自身の血肉と化していけるわぅね!」

シューム「そうねぇ~・・・でも、何時か逆襲してあげるわね・・・。」

ミツキ「やられたらやり返す、竹箆返しわぅ!」


 恐ろしいまでの妖艶な目で見つめてくるシューム。更には他の女性陣もしかり。ただ、妹達はここまで強烈な殺気と闘気の心当てを喰らった事がないためか、今も脱力した状態である。流石は地球組と宇宙種族組と言うべきか・・・。


カラセア「良く考えたら、私達はマスターのその波動と同じ力を、全く出せないのですよね。」

ナツミYU「ですねぇ。嫉妬心に溢れたものなら出せますが、純然的なのは出せませんし。」

ミスターT「俺としては、その力の方が癒しの一撃になるんだがな。」


 再び一服しつつ、今も胸の中にいるナセリスの頭を優しく撫でた。殺気と闘気の心当てを、近接状態で喰らった彼女は放心状態である。しかし、その視線は今までにないほどの据わりを見せている。


ミスターT「今の波動なんか、微々たる力なんだがね。これを超える力を出す場合は、不殺の精神を殺す事で達成できるが。」

シルフィア「そうね。君が貫いている不殺の精神。それの解放は、相手を殺す事で至るからね。」

ミスターT「警護者に成り立ての頃は、正にその状態だったからの。」


 一服しつつ、当時を思い遣る。今よりもド素人に近い、警護者成り立ての頃。あの時の方が、今よりも殺気と闘気の心当てが強かったと言えた。ただ、今はそれ以上を繰り出せるが、当時程の純然なものは出せないが。


イザリア「・・・小父様の強さは、やはりそこに回帰すると。初対面時に頭を触れてくれた事で、その片鱗を窺い知れました。魔力や魔法など話にならないレベルの力、殺気と闘気。」

ミツキ「Tさんのその力は、絶え間ない努力の先に完成した力ですからね。1日やそこらで至った力ではありませんし。」

ナツミA「特に、理不尽・不条理の概念に対しては、この上なく力を発揮し出すからね。」

ミツキ「今思うと、姉ちゃんの病魔を駆逐したのは、その力だったのかも知れませんね。」

ナツミA「駆逐、か・・・確かにそうね。」


 意識を取り戻した仲間の魔物達を支える姉妹。その2人が、出逢った頃の事を語りだす。俺も今だから分かるが、当時の様相はその力があったからこそ達成できたのだろうな。


イザデラ「・・・病魔すらも、今のお力で退ける、ですか・・・。」

イザネア「治癒魔法のマイナス属性とも言えますね・・・。」

ミスターT「・・・病魔自体を病原体と取るなら、生命体とも取れるから、か。」

イザリア「生命体に致死の恐怖を与えれば、抵抗するか退くかになりますからね。病原体自体が、自然界の野生児とも言うのなら、動物群の弱肉強食の概念が当てはまりますし。」

ミスターT「治癒力以外での治癒方法、恐ろしい手段だわ・・・。」


 本当にそう思う。いや、そう思わざろう得ない。まさか、殺気と闘気の心当てが、病原体にも通じていたとは・・・。


ナツミA「それ、間違っても、病気の方には放たないで下さい。Tさんのそれを受けたら、免疫力が低下している状態なので即死しますよ。」

シルフィア「貴方みたいな据わった存在なら、問題ないのだろうけどね。凡人が受けたら、間違いなく即死するだろうし。」

ミツキ「正に黒服オヤジのドォーンわぅ!」

シルフィア「あー、確かにそうね。」


 真面目会話のナツミAに、ボケを言い放つミツキ。それを見た周りの面々は、不甲斐無いばかりに笑ってしまっている。元ネタを知る面々だからこそのものだろう。元ネタを知らない面々には、その黒服オヤジの力を伺って恐怖しだしている・・・。


ミスターT「まあ何だ、程々に放っていきますわ・・・。」

シルフィア「今後も放つ気満々だからねぇ・・・。」

ナツミA「Tさんの十八番の力だから仕方がないですよ。」

ミツキ「名付けて・・・私、だん・・・むぐっ?!」

ナツミA「やめなさい。」

ミツキ「え・・ええのんかー!」

シルフィア「はぁ・・・。」


 何処までもボケを言うミツキに、ツッコミを入れるナツミA。そして、呆れ顔のシルフィア。元ネタを知る面々にはクリティカルヒットしたようで、爆笑しだしている。元ネタを知らない面々すらも爆笑していた。もはや、無差別に笑いを引き起こす兵器そのものだわ。


 些細な事から、それを鼓舞激励・叱咤激励へと繋げていく身内達。ミツキを筆頭に繰り出す力に、どれだけ支えられてきたか分からない。もし、それらがない状態で進んでいたら、人生の苦難の道程の前に折れていただろうな。


 持ちつ持たれつ投げ飛ばす、か。ミツキが生き様のそれは、今では身内達全員に根付いている、大切な共助の理である。




ルビナ「マスター、大陸が見えてきました。」


 甲板で幼子や仲間の魔物達と戯れる事、数時間後。歩み寄って来たルビナにより、帝国がある大陸への接近を告げられた。指し示す先を見つめると、巨大な大陸が眼前に広がりだしている。


ミスターT「目的の帝国本土か、いよいよだな。」

ルビナ「どの様な人選で?」

ミスターT「妹達全員にイザリア三姉妹、機械姉妹・交渉姉妹・警察官姉妹、娯楽姉妹も連れて行くとするよ。」

ルビナ「ご・・娯楽姉妹・・・失礼、了解しました。同艦で様子見をしていますね。」


 本当なら、一緒に赴きたいという雰囲気の彼女。しかし、5大宇宙種族は俺達の切り札だ。今は待機して貰った方がいい。それに、イザリア三姉妹がいれば、この異世界での交渉事は問題ない。


ルビナ「そう言えば、現地への上陸はどうされます?」

ミスターT「巨大帆船が無難なんだろうけど、波を移動するなら小型船舶か。俺達を降ろしたら、直ぐに引き帰って貰うか。」

ルビナ「現地の住人方に見られるのはマズいですからね。」


 このレプリカ大和の巨艦なら、既に向こう側も察知していると思われる。ただ、そう安々と海上に出れないため、接近される恐れは低いだろう。


 早速、上陸準備に取り掛かる。既に大まかな準備は終わっているため、後は持参する道具群のみ持っての行動だ。武装は空間倉庫を使えば問題ないので、最低限の装備だけでいい。


 さて・・・帝国本土はどんな感じなのか、その様相を拝ませて貰うとしよう。




 セレテメス帝国がある大陸へと上陸した俺達。俺達を降ろした後、小型船舶は本艦へと帰還して貰った。不測の事態の移動は、転送装置で問題なく行える。今は孤立無縁の旅人を演じる必要がある。


 帝国本土ある大陸を見て驚いたのが、通常大陸よりも整備されている事だ。しかし、野生の魔物の出現は定石なのか、移動する度に襲撃を受けている。まあ、身内の戦闘力の前に、瞬殺されているのが何とも言えないが・・・。


 そう言えば、妹達の戦闘力が各段に上がっているのに気付いた。どうやら、先刻の俺の殺気と闘気を喰らって覚醒したらしい。これは身内も同じで、黒いモヤ事変時よりも強さを増している。この覚醒に関しては、本当に理路整然と解釈できない概念だわ・・・。



 海岸より歩く事、数十分後。既に夕刻となっている。漸く帝国都市に辿り着いた。そこには大都会を超える街並みがあった。だが、向こうほどの賑やかさはない。


 しかし、圧倒的な力に支配されるという雰囲気は一切なく、本当に閑散とした街並みと言うべきだろう。それでも、大都会よりは人情味が溢れている。


ミツキ「ぬぅーん、普通の街並みだったわぅ。」

ミスターT「本当だわ。」


 呆気に取られる俺達。もっと殺伐とした様相を想像していたが、実際には本当に何処にでもある普通の街並みだ。


エメリナ「凄い・・・私でも感じるほどの魔力が漂っていますよ。」

テューシャ「この帝国全体が魔法都市とも言えるのかも知れません。」

ミスターT「特質的な力を隠し持っている、とかではなさそうか。」


 魔力と魔法を扱える異世界組の面々は、帝国都市に充満する魔力に驚いている。その魔力により守られているとも言えるのかも知れない。言わば、人間版魔大陸である。


イザリア「見事に制御された魔力ですね。恐らく、住まう方々全員が魔法を使えると思います。」

ナツミA「単体戦闘力では、王城軍よりも強いという事ですね。」


 帝国都市の街並みを歩き回る。通常大陸ほどの華やかさはないが、それでも普通の生活の営みはなされている。そして、イザリアが語る通り、住人の誰もが魔力を持っているのを感じた。


ミツキT「殺気と闘気が魔力と相互間なので、魔力を感じる事ができるようになりましたね。」

ミスターT「本当だわな。これなら、黒ローブ共とかを感知できるようになるだろう。」

ミツキT「とりあえず、メカドッグ嬢方を出撃させますね。」

ミスターT「ああ、頼むわ。」


 俺の言葉に行動を開始する彼女。既にヒドゥン状態のメカドッグ嬢達を、帝国都市全体に派遣していく。ワンコ筐体の彼女達以外に、機械兵士筐体の彼女達の混成部隊だ。


ネルビア「ん? ここにも冒険者ギルドはあるんですね。」

ミスターT「どうする? 再び冒険者になるか?」

カネッド「ご冗談を。私達は新たな職種、警護者になりましたので♪」

ダリネム「ですです♪」

ミスターT「警護者ねぇ・・・。」


 俺達が基本職種の警護者になったと豪語する妹達。警護者自体は特にライセンスなどはなく、フリーランスに近い職業である。しかし、その戦闘スタイルからして、傭兵以上の過酷な様相となっているが。


ウインド「マスター、ここは散開して情報収集をした方が良いと思いますが?」

ミスターT「分かった。3チームに分かれて探索しよう。」

ダークH「マスターはどうされますか?」

ミスターT「街の中心で“ソロを演じる”方が好都合だろう。」

ダークH「フフッ、そうですね。了解しました。」


 有限実行、直ぐに散開していく女性陣。その手際の良さに圧倒される妹達だが、それぞれの身内の女性陣付いて行っている。今回も分散しての行動となる。


 ちなみに、街の中心でソロを演じるは、大都会やリューヴィスでも演じていた手法である。念話の応用を駆使して、街中に散開した身内達を即座に察知できるからだ。初めての都市の場合は、この手法が一番効率がいい。


 散開して行った女性陣を見送りつつ、帝国都市の中央に向かう。そこで仁王立ちを取り、静かに待ち続けた。ここ中央広場は、巨大な市場になっている。しかし、人並みは大都会より少な目だ。


    第5話・3へ続く。

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