第5話 帝国の皇女1(通常版)
アルドディーレより出航するも、魔大陸へと寄り道をして、同大陸にいる仲間の魔物達を呼び寄せた。薄っすらと分かったのだが、イザリア達も彼らの事を気に掛けていたようだ。その彼らは、容姿こそ魔物ではあるが、生命力は俺達と何ら変わらない存在だった。
魔物もとい魔族は、人間からすれば絶大な力を持つ存在である。体格・魔力・技術力などが顕著で、ひ弱な人間には持たない力を数多く有している。そして、そこから発生される当たり前とも言える概念が、偏見や差別となる。
各種族毎に偏見や差別はあるが、人間ほどそれが逸脱して現れている存在はいない。地球では同じ地球人同士でも偏見や差別があり、そこに5大宇宙種族が絡めば、より一層激しさを増していく。彼らが魔物や魔族と同じく、逸脱した力を持つ故に、だ。
魔大陸から“救助した”仲間の魔物達が、レプリカ大和の甲板上で身内と戯れる姿を見て、改めてその誤った思想や価値観を思い知らされた。しかし、それらは生命体に備わる業病とも言えるもので、抑え込む事はできても根絶はできはしない。これは仕方がない事である。
ならば、可能な限り、それらの概念を押し留めていくしかない。ミツキ流が生き様が、その特効薬となるのだから容易であろう。そして、それらは全ての生命体に内在する力でもある。後は、それらの力に目覚めて、発揮できるかどうかだ。
「・・・己が生き様を貫き通す、と。」
「・・・はぁ、心中読みはやめれ・・・。」
改めて、セレテメス帝国へと進路を向けたレプリカ大和。甲板上で物思いに耽っていると、不意にイザリアに話し掛けられた。念話の応用で、俺の心中を読んでくる。
「貴方には、感謝し尽くせない思いがあります。私達が一方的に貴方を召喚するも、それに嫌な顔を全くされなかった。むしろ、仲間をも支えて下さっている。」
「そりゃあまあ・・・初見では彼らにビックリはするが、姿が違うだけの生命体だしな。お前さんや俺が違うのと同じよ。」
「フフッ、そう言って頂けて嬉しいです。」
今も甲板上で幼子達と戯れる仲間の魔物達。子供は純粋無垢の一念を持つため、彼らとは直ぐに打ち解けたようである。その中にミツキとサラとセラが混ざっているのが一興だが・・・。
「俺の浅はかな知識上だと、ファンタジーになるが、各作品群での種族間の偏見や差別は嫌というほどに描写されている。そもそも、人間内で争っているぐらいだしな。他の種族に白い目を向けるのは言うまでもないが。」
「伺う所、諸先輩方も相当な偏見や差別を受けてきたと仰っていましたね。特にギガンテス一族の三姉妹の方々は、捕縛されて生体実験をされる恐れもあったとか。」
「ああ、羽田空港での護衛事変か。彼女達と初めて出逢った依頼だったな。」
徐に一服し、静かに空を見遣る。当時を思い出すと、実に不思議な縁としか思えない。
当時は宇宙種族自体、“初めての遭遇”だった。確かに当時の様相からすれば、その逸脱した様相に恐怖すら覚えもした。しかし、実際には航空機事変で記憶を失う前に、デュネセア一族のデュヴィジェ達と出逢っている。無論、俺が宇宙種族を初対面したのは、デュネセア一族が先らしい。
これらの事は黒いモヤ事変後に分かった事。何分記憶を失う前の出来事ではある。当然な事だが、今となっては詳しい内容を窺い知る事はできない・・・。
「・・・記憶を失った後の依頼の中、宇宙種族とはギガンテス一族が初遭遇だと思った。でも、実際にはそれより遥か昔に、お前さんと同じデュネセア一族のデュヴィジェさんと出逢っていたのがね。」
「そう伺っています。女王デュヴィジェ様と初遭遇したのが淵源とも。その女王と同じ種族の私達が、こうして貴方と出逢えた事は、もはや偶然とは言えませんね。」
「そうだな・・・。」
傍らにいる彼女の頭を優しく叩いた。それに笑顔で頷いてくる。俺よりも遥かに長い時間を生きる彼女だが、実際にはデュヴィジェと同世代の女性なのだ。その彼女に召喚されたのは、ある意味奇跡的である。
「小父様には仰っていませんでしたが、私は3人の生誕時に立ち会った事があります。今より遥か昔になりますけど。」
「あー・・・もう何を言われても驚かん・・・。」
朝食を持参して現れるデュヴィジェ。それを俺とイザリアに手渡していく。既に甲板上では朝食を取る面々が多い。幼子達は仲間の魔物達と一緒に食べていた。そんなデュヴィジェが語るのは、イザリア達の生誕に立ち会ったという。もはや、驚愕するしかない・・・。
「昨日のように覚えていますよ。この3人は、生まれた直後は病弱でして、以後も明日をも分からぬ状態で過ごされていました。ここまで成長した姿を見て、小母として本当に嬉しい限りです。」
「・・・ありがとうございます、小母様・・・。」
デュヴィジェの言葉に涙を流すイザリア。何時の間にか、彼女の傍にはイザデラとイザネアも一緒におり、同じく涙を流していた。
「はぁ・・・あの幼子だったデュヴィジェさんが、三姉妹の小母なのか・・・。」
「ある意味、凄い事ですよね。地球人の時間と空間の概念だと、絶対に有り得ない流れになりますし。それが、実際に罷り通っていると。」
「この異世界惑星で、魔力と魔法の概念や、彼ら魔物などが存在している自体、俺には有り得ないとしか思えないんだがね・・・。」
「とは言いますが、彼らを見て全く怖じていませんけどね・・・。」
「可愛い美女達ばかりにしか見えないんだがの。」
そう言いつつ、幼子達と食事を取る仲間の魔物達を見入った。
自己紹介時で分かったのだが、その種族は、サタンメイジ・ハーピー・サキュバスといった魔族の魔物達である。サタンメイジこそ初見だが、ハーピーやサキュバスなどはファンタジー世界では通例の女性モンスターだ。
俺の視線を感じたのか、こちらを見入ってくる彼女達。特にサキュバスは異性の力を奪う夜の覇者なため、俺を見つめる視線が実に色っぽい。そんな彼女達に小さく微笑んでみた。すると、今度は彼女達が頬を赤くしていくではないか。これには流石に驚いてしまう。
「・・・小父様の気質が、彼女達の魔性の魅力を逆利用したようですね・・・。」
「そう言いながら睨むのはやめれ・・・。」
物凄い威圧的に詰め寄るイザデラ。イザリアとイザネアも同じで、その殺気だった目線は身内の女性陣に引けを取らない。その俺を見つめ、呆れ顔で溜め息を付くデュヴィジェ。
「各作品の設定で窺いましたが、サキュバスやハーピーなどは異性を惑わす力を持つ存在ですからね。お3方から伺うに、野生の彼女達は多種族の異性を誑かしたりするそうですし。」
「怖いねぇ・・・。まあ・・・もっと怖いのが近場にいるが・・・。」
そう言いつつ、俺の背後を指し示す。そこにはシュームを筆頭に、地球組の女性陣から痛烈なまでの殺気が放たれていた。それを見た4人は顔を青褪めだしている。
「異世界に来てまで、エロ目サーチとはね・・・。」
「全く以て変わりませんよね・・・。」
「勘弁してくれ・・・。」
俺の一挙手一投足を即座に感じ取れる彼女達。特に念話を使えるようになってからは、その力に拍車が掛かりだしている。末恐ろしい事この上ない・・・。
「フフッ、マスターが皆様方から慕われるのを見ると、本当に嬉しくなりますよ。」
「・・・ヤキモチを妬かれないのも凄いと思いますが・・・。」
「その考えは、黒いモヤ事変前に全て捨て去りました。私はただただ、マスターを心から支えたい、ただそれだけです。あそこまで己を犠牲にして、私達を救ってくれたのですからね。」
彼女の発言に、殺気を放っていた女性陣がウンウン頷きだしている。殺気を放ちつつ、その様相をする様は恐怖ではあるが、そこに感謝する一念がこれでもかと詰め込まれていた。
黒いモヤ事変は、実質的に地球・太陽系・天の川銀河の全生命体を滅亡させる力だった。俺達が総出で対処して何とかなったが、周りは俺の殺気と闘気がなかったら不可能だったと言い切っている。
自分ができる行動をしたまでだったが、それで救われる生命が数多くあった。それを踏まえると、逆に俺の方が感謝するべきだ。俺の生き様が周りに役立った何よりの証拠だしな。
「その決して奢らない謙虚な姿勢が、皆様方を慕わせる要因なのですよ。あの魔物方も、生命の次元からそれを察知されています。」
何時の間にか傍らにいたナセリス。そのまま俺の胸の中へと抱き付いて来る。この厚意は地球でも健在で、身内の中で超迅速的に繰り出される。それを見た女性陣から、一段と強い殺気が放たれてきた。
「・・・何れ、何気ないこの厚意により殺されるわな・・・。」
「そんな事ありませんよ。それだけ、貴方が皆様方に同じ事をすれば良いのです。確かに異性としての一念はありますが、貴方ほど頼りになる相棒はいませんからね。」
「そ・・そうか・・・。」
顔を赤くする彼女だが、その目線は何時になく優しいものだった。そこにあるのは、慈愛の一念だ。恋愛感情に疎い俺でも、それだけは痛烈に理解できる。
「はぁ・・・Tちゃんは本当に女性誑しですよね。」
「そこに私利私欲がないのなら、良いと思いますよ。むしろ、師匠として嬉しいですし。誰にでも心を開くその姿勢、あの時からすれば雲泥の差ですからね。」
「フフッ、そうでしたね。皆様方の一念が、Tちゃんを心から支えてくれている。それが、リューヴィスの女性陣にも行き届いた。祖母として、これ程嬉しい事はありません。」
恒例のキセルセットを取り出し、徐に一服するスミエ。その姿は、何時見ても美しいとしか言い様がない。特に女性陣の誰もが顔を赤くして魅入っている。
「まだまだ、若い者には負けられません。この生命が尽きるまで、警護者としての生き様を貫いて行きますよ。」
「はぁ・・・殺したって死ぬ様な存在じゃないだろうに・・・。」
「フフフッ・・・そうですね・・・。」
一服しつつ、超絶的な殺気と闘気を放ち出す彼女。微笑みながら放つ、致死とも言える一撃である。それを目の当たりにした女性陣は、顔を青褪めて震え上がっている。対する俺は、その波動には一切動じないのが見事だが・・・。
「・・・君のそれ、正に免疫力そのものよね・・・。」
「同じ業物を繰り出せるが、俺の場合は不殺を解く方だからの。」
「最後のリミットですからね。」
殺気と闘気を放ちつつも、相変わらずだと小さく笑うスミエ。確かに彼女の波動を受けても、全く以て動じない。むしろ、その力を吸収するかの様な感じである。同じ力を繰り出せる故の相互作用というべきか。
と言うか、変な反論する一念が湧き出してくる。スミエが放つ殺気と闘気に対抗すべく、無意識的に同じ力を放出しだしてしまった。それを目の当たりにした女性陣は、スミエの時以上に顔を青褪めだしている。ただし、一部例外があるが・・・。
第5話・2へ続く。




