第4話 覇道の存在3(キャラ名版)
エンルイ「お嬢、その船は第2砲塔に寄せつつ、傾けて置いて下さい。」
ナッツ「気を付けて運んで下さいな。」
ミュティヌ「ラジャー!」
・・・流石はギガンテス一族の三姉妹、複数あった巨大帆船を、レプリカ大和の甲板へと乗せている。しかも手掴みで、である・・・。合計6隻だったので、第1・第2・第3砲塔側に寄せて、綱で括り付ける手段を取ったようだ。
ミュティラ「ギガンテス一族を舐めちゃアカンですよ。」
ミュティナ「ふふり、力仕事なら最強ですからね。」
ミスターT「はぁ・・・。」
ドヤ顔の三姉妹が力仕事を駆使している。それに異世界組は驚嘆するしかないようだ。また、ルビナとヘシュナも超能力を駆使し、積荷を空中に浮かせて運んでいる。5大宇宙種族の全員がこれらの力を使えるため、正にファンタジーキャラクターそのものだ。
ミスターT「全員乗船は可能なのか?」
デュヴィジェ「問題ありません。むしろ、某アニメの様な少人数規模で、レプリカ大和を操艦できていますので。本来の空いたスペースは、居住区画などに使えますよ。」
ミスターT「意外なほど豪華客船に近い訳か・・・。」
改めて、レプリカ大和の規模を思い知らされた感じである。レプリカ伊400もしかり。
マンガやアニメで有名な某作だと、約40人で戦艦武蔵などを操艦していた。艦自体が高度な操作系統となっているらしく、少人数でも動かせている。レプリカ大和もそれに近いとの事だが、それでも100人規模は必要となっている。
地球組と宇宙種族組の合計は100人以下だが、異世界組はアルドディーレも含め、全員で500人近い規模になる。妹達やオルドラ近衛隊とリューヴィスの全女性陣で約200人、残りがアルドディーレの面々となる。
実際にオリジナルの戦艦大和には4000人近く乗れるとの事なので、1000人以下の規模なら全く問題ない。空いたスペースに持参した道具群を置けば問題ないだろう。軍艦の豪華客船状態である。
エリシェ「アハハッ、我ながら脱帽と言うか何と言うか。」
ラフィナ「日本で有名な戦艦大和が、臨時の豪華客船状態ですからね。」
ミスターT「オリジナルの艦には申し訳ないだろうが、レプリカの同艦は正に人を救う艦と化しているしな。本当の大活躍と言える。」
エリシェ「ですね。」
現在の状況を目の当たりにして、苦笑いを浮かべるしかない。しかし、これは力の誤った使い方ではない。戦艦は人を殺す兵装だが、それが人を救うのに役立つのなら、最強の剣と盾と言える。特に盾としては最強クラスである。
ミスターT「・・・1つ愚痴を言うなら、重装甲飛行戦艦を出せば、簡単解決なんだがな。」
ラフィナ「それはタブーです。でも、既に何時でも派遣は可能ですよ。もし、3隻ある宇宙船で、1隻でも浮上した場合は、問答無用でそれを出します。レプリカ大和とレプリカ伊400では荷が重過ぎますし。」
ミスターT「海上運用しかできないのが最大の欠点だしな。」
今は大活躍中のレプリカ大和とレプリカ伊400。しかし、相手が飛行兵器となった場合、この2隻だけでは劣勢に立たされる。そこからは、段階を経るように、見合う兵装を出していくのが無難なのだろうな。
エリシェ「そう、その見合う兵装を出す、ですよ。」
ミスターT「はぁ・・心中読みか・・・。」
ラフィナ「まあまあ。ですが、その見合う兵装や見合う力なら、マスターが苦悩されていたあの一念を払拭できます。調停者と裁定者を担うのなら、力は適切に出してこそですからね。」
ミスターT「警護者の役割、か・・・。」
自然と一服しだす2人。ここ異世界に来てから、2人の喫煙する姿が目立つ。それだけ過度のストレスが溜まっている証拠だろう。かく言う俺も、何時の間にか一服しているが・・・。
エリシェ「あー・・・私も愚痴を良いですかね?」
ミスターT「何時も世話になってるしな、俺で良ければ何でも言ってくれ。」
エリシェ「えー、では・・・。」
一服しつつ、懐から手帳を取り出す。ページを捲りつつ、ある場所に目を留め、溜め息を付きだしている。
エリシェ「もしも、重装甲飛行戦艦・宇宙戦艦7隻を投入した段階での、今までの合計費用ですが、ザッと1兆円を超えます。」
ミスターT「は・・はぁ・・・。」
エリシェ「お支払いは、貴方に任せてもよろしいでしょうか?」
ミスターT「か・・勘弁してくれ・・・。」
半ば怒り気味つつも、エラいニヤケ顔で笑うという荒業を放つエリシェ。ラフィナの方も同じ表情を浮かべている。喫煙の回数が多くなった事も踏まえると、相当な心労度だわな・・・。
ナセリス「ん? 資金面でお困りなら、5大宇宙種族が代理決済しましょうか?」
そんな俺達のやり取りに首を突っ込んでくるナセリス。5大宇宙種族の総資産は、地球の総資産では太刀打ちできない規模を誇っている。エリシェが挙げた金額など朝飯前だ。
エリシェ「い・・いえ・・・今のは愚痴なので・・・。」
ナセリス「んー・・・分かってて言いましたけど?」
ミスターT「このじゃじゃ馬娘め・・・。」
俺の肩を持ってくれたのは良いのだが、そのナセリスの表情が実に嫌味たらしいのが何故か気に食わない。そんな彼女を捕まえて、両頬を捏ね繰り回した。それに悲鳴を挙げて降参してくる。
ラフィナ「ま・・まあ、つまりですが、実際に力を使うのにも資金が必要な訳です・・・。」
エリシェ「特に人件費が大変ですからね・・・。」
ミスターT「んー・・・この娘を分身させて暴れさせれば良いと思う・・・。」
素に戻って、淡々と現実を語るエリシェとラフィナ。その2人を前に、今もナセリスを揉みくちゃにし続ける。今も悲鳴を挙げているが、嬉しそうにしているのが何とも言えない。
ミスターT「・・・まあでも、確かに巨額の資金が必要だが、それで助かる人物がいるのなら、俺は使うべきだと思う。俺の貯蓄は微々たるものだが、もし必要な時は言ってくれ。」
エリシェ「はぁ・・・真に受けて貰っても、どうしようもないのですけど・・・。」
ミスターT「んー・・・ならば、全て片付いたら、みんなで飲み会でもやるか。」
ラフィナ「おー! そのプラン乗りますです!」
解放したナセリスを避けつつ、俺の両手を握り締めて来るラフィナ。それを見たエリシェとナセリスから、物凄い殺気に満ちた目線で睨まれる。先程まで嬉しがっていたナセリスが、正に一変するかの様な姿だ・・・。
シルフィア「和気藹々もよろしいけど、まだまだ前途多難なのを忘れないようにね。」
スミエ「大丈夫ですよ。ミツキ様が生き様、楽観主義こそが最強の一手ですから。」
ミスターT「最強の一手、ねぇ・・・。」
移動準備の完了を報告してくれるシルフィアとスミエ。俺達のやり取りを見て呆れ顔である。しかし、潜入捜査任務が厳しい様相だったからか、表情が硬いままだ。
エリシェ「既に帰られた後に言うのも何ですが、向こうでは大丈夫でしたか?」
スミエ「全く以て問題ありませんでしたよ。私もシルフィア様も、性転換状態で男性化していたのが良かったと思われます。女性のままだったら、少々危なかったかも知れませんが。」
ミスターT「・・・これだから野郎は・・・。」
シルフィア「ハハッ、ありがとね。でも大丈夫よ。王城の連中は、力を得ようとするばかりの愚者共だったし。それに、ほぼ女性の姿がなかったからね。」
ラフィナ「となると、メイドさんとかもいなかったのですか。」
意外な実状を伺えた。どうやら王城は、本当に力を欲する存在に至っているという事だ。
こうした悪党のセオリーとしては、世話係に女性がいるのを良く見る。だが、今の王城にはそれがないらしい。意外な実状である。そう言えば、某宇宙戦争の悪の極み共は、終盤の様相は殺伐としている。とにかく完全なる屈服を目指すからか、娯楽自体なさそうに見える。
ナセリス「それと、親玉にお会いする事はできました?」
スミエ「いえ、そこまで接近させてくれませんでした。専ら、城内の情報部門の担当などでしたし。まあ、念話があったので、要らぬ詮索はされませんでしたけど。」
シルフィア「そこですよねぇ。もしこれが、普通の手紙やら別人物との連携だと、相手に悟られる恐れがありましたし。」
ミスターT「宇宙種族のテクノロジーに救われた感じだわな。」
本当にそう思う。悪心を持つ者には、使う事ができない力である。同時に、感知もされないので、普通に過ごす事ができるのだ。つまり、食事などの生活行動以外は、本当の暗躍だけで済むのである。
ミスターT「はぁ・・・地球で当たり前の警護者の活動が、ここでは更に開花する感じだわ。」
シルフィア「そうねぇ・・・。」
スミエ「むしろ、任務の状況を踏まえると、地球の方が遥かに恐々しいですけどね。」
ミスターT「一撃必殺の重火器が多々ある現状だしな。」
異世界では、弓矢や魔法などの遠距離攻撃しかないが、地球のような重火器などの火器兵器は一切ない。弓矢と魔法も、当たり所が悪ければ致死性があるが、重火器のような弾丸ほどの致死性は全くない。地球での警護者の行動が、どれだけ逸脱しているかが窺える。
ミスターT「ヘシュナさんが担っていた、長期間の敵内部への潜伏任務。相当な心労があったと痛感させられるわ。」
ナセリス「ですね。私とカラセア様は偽者が台頭したため、捕まっていましたけど。」
ミスターT「それでも、無事でいてくれて何よりよ。」
傍らの彼女の頭を優しく撫でる。それに驚くも笑顔で見つめてくる。当時の様相からして、一歩間違えば殺されていた可能性もある。それでも、スミエとシルフィアに救助されたのは、彼女達に使命があったからだろうな。
シルフィア「フフッ、君らしいわね。その一念が、私達を奮起させてくれる。特に殺伐とした戦いを主眼とする警護者には、君のその一念は特効薬そのものだし。」
ミスターT「先の力の使い方云々も、冷静に考えれば偽善者的な感じだったんだがね。全てを助ける事ができるなら、それこそ神にでもなる感じだが、俺は人間・凡夫のままがいい。苦悩する世上で藻掻きつつ、その荒波の中を突き進む事を続けるわ。」
シルフィア「それでこそ警護者よね。今後も己が生き様を貫き通しなさい。君にしかできない人生を突き進むために。」
ミスターT「ああ、委細承知。」
結局はここに回帰してくる。どんなに遠回りをしても、必ずここに辿り着いて来る。いや、既に答えを得ているから、ここに辿り着くのだろうな。
同時に、周りあっての自分である事を痛感させられた。俺1人では絶対に至れない境涯、それが今正にこの場である。ここに回帰できる事が、どれだけ幸せな事か、本当に痛感させられるわ・・・。
シルフィアとスミエが報告してくれた通り、全ての作業が終了した。後は出航のみとなる。蛻の殻となった、造船都市アルドディーレを見つめる一同。特に元住人達は名残惜しそうに見入っている。しかし、どの面々も未練はないといった一念を抱いていた。
静かに出港するレプリカ大和とレプリカ伊400。見送りは一切なく、本当に静かな出港となった。これで、通常大陸からは完全撤退と言う事になる。
第4話・4へ続く。




