第4話 覇道の存在1(キャラ名版)
新大陸を離脱し、造船都市アルドディーレに到着した俺達。今の造船都市は、ほぼ反王城派が出揃っている状態らしく、実質的に最後の砦となっていた。報酬や名声を重視する冒険者は全て王城へと向かったらしい。
また、ここ最近姿を見せなかった海賊共は、旧シュリーベルの南東、あの桟橋近くに拠点を置いているとの事だ。向けられる目線の先には新大陸がある。ただ、向こうは港の防備さえ盤石であれば、侵入する事はできない程の要塞だ。今の所は問題ないだろう。
喫緊の問題は、旧デハラードの地下に眠るイザリア達の宇宙船だ。シルフィアやスミエの情報だと、魔力と魔法を駆使し稼動させるに至ったらしい。本当にできるのかと思っていたのだが、連中の執念が成し得た勝因でもあろう。そこだけは一応、褒めるべきか。
ミスターT(・・・思い知らせる必要がある、か。警護者は、本当に嫌な存在だわ・・・。)
ミュティナ(まあそう仰らずに。)
アルドディーレの一番高い建物、そこから旧デハラード側の様子を窺う。現段階の空からの探索は、メカドッグ嬢達の飛行モードでしか不可能なため、ヒドゥン状態の彼女達からの偵察が頼みの綱となる。当然それは念話による通信手段だ。
ミュティナ(母が言っています。どんな状況に至ろうが、調停者と裁定者の役割は貫き通せと。)
ミスターT(そうは言うが、十分防げる力を持っていても、それを使わずにいるのは、罪にならないのかと思うがな。)
ミュティナ(それを仰るのなら、地球での各事変など、簡単に制圧できていましたけど。)
確かに彼女の言う通りだ。過去の地球の各事変も、その殆どが予測可能なものばかりだった。しかし、あえてそれをせず、流れに沿って動くに留まっていた。この異世界惑星での流れも、全く同じ感じである。
デュヴィジェ(それに重要なのが、相手の意思を尊重する事もありますからね。王城の住人達は、3大都市へと動く事もできたのにしなかった。リューヴィス女性陣以外の2大都市の住人達は、実質的に新天地での独立を行った。)
ヘシュナ(正直に言いますが、生命力から出る波動を探れば、相手が何を考えているかなど簡単に探れますよ。デュヴィジェ様が仰った2つの事例は、全て当事者達が選んだ道。ならば、全て自己責任で解決させるべきでも。マスターは本当にお人好しです。)
半ば怒り気味に語る2人。それは俺に対しての戒めと同時に、今も思う罪悪感を和らげようとする気配りに感じた。当然、これも念話により伝わってくるのだが。
エメリナ(・・・何だか、異世界の住人達が起こした言動で、貴方を苦しめてしまって本当に申し訳ありません。)
ナセリス(エメリナ様、謝らなくて大丈夫です。これはマスターの問題ですので。)
エメリナ(ですが・・・あまりにも可哀想です・・・。)
念話を通して、エメリナの思いが痛烈に伝わってくる。むしろ、胸中の思いを一切隠さず、態と曝け出してくれているかのようだ。
シルフィア(はぁ・・・貴方達さ、まだまだT君の生き様を見てない証拠よね。この優柔不断さが彼そのものなのよ。)
ミツキT(私の時もそうでしたね。警護者には至っていませんでしたが、資財を投げ打ってでも力を出されていました。しかし、その力を以てしても私を救う事ができなかったですし。)
スミエ(Tちゃんは昔からこうでしたからね。でも、航空機事変では、何振り構わず動かれた。自身の記憶を犠牲に皆様方を救われた。)
ミスターT(・・・力を使う事を恐れているんだろうな・・・。)
既に分かっている事を呟いた。過剰なまでの力を使う事で、その後がどうなるかを恐れた自分がいるのだと。警護者云々の言い回しは立て前に過ぎない。屁理屈そのものでもある。
ミツキ(でも、姉ちゃんを病から救ってくれたのは、紛れもない事実でしたけどね。)
ナツミA(アレは、Tさん自身の実力で勝ち取ったものだったからね。ポチも四天王もいたし。)
ミスターT(・・・俺は何もしてなかったよ。唯一思ったのが・・・また友を失うのか、という一念だけだ。)
ボソッと本音を呟いた。これは今まで語った事がないため、それを伺った地球組と宇宙種族組の面々は驚いている。異世界組の面々もしかり。
ナツミA(・・・フフッ、そう思って頂いていたとは・・・。本当にありがとうございます。)
ミツキ(その一念が、病魔から姉ちゃんを救ったのだと思います。同時に、ミツキTさんの無念さを晴らしたとも。)
ミツキT(でしょうね。小父様やデュヴィジェ様の生命力に触れた時、その思いを感じましたし。)
シルフィア(・・・力を持ち過ぎる故に、使う事を躊躇ってしまう、よね。考えている時は、即座に力を駆使すれば打開できると思うも、実際にそうはいかないのが現実だし。警護者はその超大な戦闘力からして、動く時を見極めなければならないからね。)
スミエ(Tちゃんも言ってましたが、本当に嫌な役割ですよね。)
それぞれが思いを挙げてくる。特にナツミツキ姉妹やシルフィアは、俺の弱みを知っている。スミエも同じである。同時にそれは、彼女達にも内在する弱みだ。そう言い切れるのは、彼女達も警護者であるからだ。
エリシェ(今やっと、警護者の真髄を理解しました。警護者とは、常に遣る瀬無さと向き合う必要があるのだと。)
ラフィナ(確かにこれなら、マスターが自己嫌悪に陥るのが理解できます。私がエリシェ様と共に、大企業連合のリーダーを務める時も、全く同じ一念に陥りますので。)
2人の言葉に、心が楽になっていく感じがする。これは、俺の永遠の命題とも言えていた。しかし、実際に既に答えを得ている手前、知る事が難しかったのだ。灯台下暗しそのものと言えた。
ミスターT(・・・言うは簡単・行うは難し、か。)
ミツキ(うむぬ。ヲタク気質からすれば、異世界の誘惑に酔い痴れてしまったわぅし。)
ナツミA(そうねぇ~。)
シルフィア(本当にそう思うわね。)
ミスターT(・・・はぁ、俺には荷が重過ぎる現実ばかりだわ・・・。)
徐に一服しようとすると、傍らのミュティナがライターを持ち着火してくれた。それに頭を下げつつ、煙草に火を着けていく。
俺の様相を窺い知って、念話を通して総意の一念が伝わってくる。しかし、最後の言葉で安堵してくれたようだ。こうやって、自己嫌悪に陥るのは、俺の通例的な感じである。
ミツキ(ところで~・・・デュヴィジェちゃんとヘシュナちゃん。後で・・・スペシャルなプロレス技を放つので、覚悟してわぅよ・・・フッフッフッ♪)
ナツミA(そうねぇ~・・・。Tさんへのあの言葉、確かに淵源はTさんにあるけれど、何かカチンと来たからねぇ~・・・私も便乗するわ。)
シルフィア(私も便乗するわね・・・久し振りに大暴れできそうだし・・・フフフッ。)
デュヴィジェ&ヘシュナ(え・・ええっ・・・。)
竹箆返し来たれり、か・・・。淵源は俺にあるのだが、何処か納得ができないと語る姉妹とシルフィアが反論を言い出している。強さの部分では絶対に敵わないため、顔を青褪めて震え上がるデュヴィジェとヘシュナである。
同時に、これが周りへの気配りである事を痛感した。重い空気を破壊するのは、ミツキとナツミAとシルフィアの得意としている事である。何から何まで、本当に迷惑を掛けっ放しだわ・・・。
第4話・2へ続く。




