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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第3話 禁断の兵器3(通常版)

 レプリカ大和の甲板上から、釣り竿で釣りを満喫する幼子達。近場には母親や保護者が同伴しており、共に一時の安らぎを満喫している。


 新天地に移住すると挙げたのだが、実際には俺の不手際により現地から出る事となった。本当に申し訳ない思いで一杯だわ・・・。


「また自己嫌悪ですか・・・。」

「はぁ・・・今は何とでも言ってくれ・・・。」


 幼子達を見守りつつ一服していると、心中を読んできたエリシェがボヤいてくる。毎度の流れなのだが、今回は俺に非があるため申し返しができない。


「全てを背負い込み過ぎですよ。この世には、己の力ではどうする事もできない事もある。当然、お持ちの全ての力を駆使すれば、完全に覆す事ができるでしょう。でも、それでは意味がありません。」

「ここの住人達が、立ち上がらなければ意味がない、か。」

「地球での各紛争も正にそれですよ。軍事介入はできても、過剰過ぎる行動は遺恨を残す。結局の所、現地に住む方々が解決しなければならない。私達に出来る事は、可能な限りし続けました。後は全て委せるしかない。」

「調停者と裁定者、嫌な役回りだわ・・・。」


 力を使えば、確実に現状を打破する事はできる。警護者の存在が、正に過剰に力を持つ者達であるのは言うまでもない。そこに要らぬ私情を挟めば、全ての概念を覆してしまう。


「・・・リューヴィスの女性陣の外面的傷を癒したのは、正しい行動だったのかね。」

「それですが、皆様方の表情を見れば、結果が現れていると思いますよ。精神面の傷は、なかなか癒える事はありませんけど、貴方が行った行為は正しかったと思います。」

「そうか・・・。」


 こちらの会話を耳にしたリューヴィスの女性陣。その彼女達が小さく頷いてくれていた。その表情を見れば、一切の遺恨など感じさせる事はない。


「私が言うのも何ですが、本当に異世界の概念は無情過ぎますよね。警護者の生き様を貫くには、少々辛い環境ですよ。」

「やり手のガンマンが言うのだから、本当に堪えるんだろうな。」

「いきなり送られたんだから、混乱するのは言うまでもないけどね。それでも、混乱する事なく、あの子達を助けて回ったじゃない。それが君の唯一の真実よ。」


 茶菓子を頬張りつつ語るシュームとナツミYU。俺を超える実力を持つ警護者であるため、その語られる言葉は力強く重みがある。地球側でも、最前線で戦う闘士であるため、本当に頼もしいとしか言い様がない。


「まあともあれ、君は君の信念と執念を貫き通しなさいな。彼女達の警護は、全て私達が引き受けるから。」

「素直じゃないですねぇ~。誰よりもマスターを心配されているのに。」

「へぇ~、いい度胸してるわねアナタ。」


 ナツミYUの茶化しに軽く激怒したシューム。その場でスパーリングを開始しだしてしまう。それに呆れるが、周りの女性陣には大盛り上がりとなっていた。何ともまあ・・・。


 いや、2人は態とこれを演じだしたのかも知れない。この手の暗い雰囲気の場合は、身体を動かすに限る。特に格闘戦に優れている2人は、暇があればこうしてスパーリングを行っているとの事だ。


 格闘戦、か。武器や魔法を除けば、残るのは己の肉体のみ。屈強な体力があれば、肉弾戦で対処できるのが警護者の強みでもある。重火器の射線すらも掻い潜り、怒濤の一撃を放つのだから。


「・・・私達も、あの方々の様になれますかね・・・。」

「ん? んー・・・参考にはしない方が良いと思う・・・。」


 その言葉に気付くと、傍らに妹達全員がいた。2人のスパーリングに、心から魅入られている様子である。と言うか、この異世界の住人は、この手の格闘戦を主観としている。故にここまで魅入られるのだろうな。


「ところで・・・先日訪れてきた方々と、どういったご関係で?」

「あー・・・。」


 本音はこれなのだろう。テューシャを始め、他の妹達が凄まじい気迫で迫ってくる。今まで訪れてきた女性陣には、こうした対応は見せて来なかった。この場合は、シューム達が大人の女性だからだろう・・・。


「あら、ヤキモチを妬いてくれているのですか? だとしたら、嬉しい限りですよ。」

「ですね。こちらから幾らアプローチをしても、全く意に介してきませんし。」

「真顔で言う事かね・・・。」


 テューシャの肩に優しく手を置くデュリシラ。カラセアもエメリナの肩に優しく手を置いている。自愛に満ちた厚意なのだが、俺に向けられる目線はかなり厳しい・・・。


「私達も、少なからずその気なのですけど。」

「ほむ、それは聞き捨てなりませんね。」

「火に油を注ぐのはやめれ・・・。」


 便乗してくるエリシェとラフィナ。妹達に負けないぐらいの気迫で迫って来た。それに逆便乗しつつ、妹達も迫って来る。この瞬間ほど、女性が怖いと思う時はないわ・・・。


 それでも、彼女達の心意気は痛烈なまでに伝わってくる。こちらを気にしてくれているのが感じられた。本当に感謝に堪えない。そして、己の生き様を貫くのだと、決意させてくれている。1人では絶対に折れるであろう現状を、彼女達が支えてくれているのだ。


 本当に、何時の時代も女性は力強く輝かしい。異性への魅力を通り越し、憧れの一念が沸々と湧き上がってくる。膝を折ってなるものかと、その都度決意をさせてくれていた。彼女達あっての俺自身、そう痛感せざろう得ない。




「ふむ・・・ここから西側が王城ですね。」

「暗雲立ち込める感じだな。」


 新大陸からレプリカ大和で移動中、とある海域に差し掛かると、携帯レーダーを操作するルビナが語り出した。この機器、レプリカ大和の広範囲レーダーとリンクしているらしい。


「向こうの方はどうなっているでしょうか・・・。」

「現地は3大都市と王城を合体させ、巨大な国家としているそうですよ。特に重点的に開発が進んでいるのは、旧デハラードのようです。」

「イザリア様方の宇宙船、ですか・・・。」

「連中がやりそうな事だわ。」


 吐き捨てるようにボヤくカネッド。今は彼女達と甲板上でババ抜きを行っている。他の面々も甲板で娯楽に勤しんでいる。甲板から落ちないかとヒヤヒヤものだが、そこはルビナの超能力で何とかしているらしい。


「その宇宙船が動いた場合、どうするんですか?」

「先ずは動向を探る、だな。悪党の気質からして、超大な力を得れば、一時の間はその力に酔い痴れる。その後は、その力を使い威圧の行動を開始しだす。地球でも同じ様な事例を多々見てきたしな。」

「いきなり攻撃を仕掛けて来たりとかは?」

「絶対にない、そこだけは確信を以て言い切れる。」

「うーん・・・まあ、ここはミスターTさんを信じます。」


 妹達は娯楽自体が初めてらしく、悪戦苦闘しながらも興じている。ちなみに、これらを教えたのはミツキとサラとセラである・・・。


「造船都市ですが、無事受け入れてくれるでしょうかね・・・。」

「間違いなく受け入れるでしょう。ヘシュナ様方が仰るには、レプリカ伊400の戦闘力を知った途端、懇願するように協力を要請して来たそうですよ。それなりの私情があるとは思いますが、現状は王城群に対抗できる唯一の存在ですし。」

「利用されるのは、何か嫌な気分なんですがね。」

「それが世上の理というものよ、今後も目の当たりにすると思うよ。」


 カードを切りつつ、諭すように語る。俺もまだまだ修業中の身だが、妹達は更に修行が必要である。特に人生に関しては、だ。


「俺も人の事を言えた感じじゃないが、それなりに修羅場を潜って来ている。お前さん達が今後遭遇するであろう、数々の苦難は全て己の礎になるからね。超チキンの俺の言う言葉じゃないが、逃げずに戦って欲しい。」

「ほむ、正に矛盾しているという感じですね。」

「はぁ・・・。」


 彼女から引いたカードを見て、外れを引かされてしまう。それを窺った彼女が、ニヤリと笑みを浮かべてきた。見事に誘導された感じである・・・。


「まあ何だ、今は総じて待つしかない感じだわな・・・。」

「常に後手後手に回りっ放しですからね。」

「そうだな・・・。」


 ゲームもそこそこに仰向けに寝転がる。海上は青空が広がっているが、視線を向けた先の空は嫌なほどに禍々しい。悪党が暗躍していると、雰囲気で語っているようなものだ。


 暫くすると、不意に頭を持ち上げられ、そのまま膝の上へと招かれる。目線を向けると、厚意の人はルビナであった。その行動を見た周りの妹達は、見事なまでに顔を赤くしている。


「何だ、このぐらいで赤面とは。」

「そ・・そうは言いますが・・・。」

「フフッ、まだまだ若い者には負けませんよ。」


 優しく頭を撫でてくれるルビナの右手に、自分の右手をソッと添えた。この手の癒しの厚意は日常茶飯事のため、何気なく行ってしまうのが常である。妹達には刺激が強い感じだな。


「今度、お前さん達も頼んでみると良いよ。ルビナさんの膝枕は、なかなかの必殺度を誇るからの。」

「まあ、本当に必殺をしてもよろしいのでしょうかね?」

「ほ・・程々にな・・・。」


 ボソッと語った言葉に、瞳を妖しく輝かせる彼女。しかし、撫でられる右手には、今も優しさが込められている。本当に感謝に堪えない。


 彼女達あっての俺自身、本当にそう思わざろう得ない。そして、ルビナの女性としての姿勢を見た妹達は、顔を赤くしながら痛感してくれているようだ。そう、彼女達も同じ様な生き様を貫けるのだと・・・。


 何度も思うが、地球組と宇宙種族組の女性陣の肝っ玉は、凄まじいまでに据わりを見せる。女性ならではの力強さもあるが、その根底の生命力の輝きは決して真似が出来ないレベルだ。となれば、異世界組の女性陣も同じであると言える。


 何時の時代、どの世界でも、女性の強さは凄まじいとしか言い様がないわ・・・。


    第3話・4へ続く。

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