第3話 禁断の兵器1(通常版)
新大陸の探索が続く中、地球から新たな転送召喚者が来訪する。デュリシラ・ナツミYU・シューム・カラセアの4人だ。生粋の警護者である彼女達の到来により、3大都市の移住者達の指針になる行動が打ち出されていく。言わば、育成のスペシャリストである。
流石のミツキやナツミAも、4人ほどの手腕はないため、全ての行動を委任させたようだ。また、トラガンチームの女性陣も、4人に合流して行動を開始している。リーダーとなる存在が不在だったため、4人の合流で飛躍的に強化がなされそうだ。
それでも、喫緊の問題は数多く残る。地上戦闘では無類の力を発揮する一同だが、特殊兵装を出された場合は異なってくる。今は強化を続けるしかないが、こちらも別のプランを考えるしかなさそうだ。
(これはマズいわね・・・。)
正式に四女傑の合流を終えた俺達。そんな中、シルフィアより念話が入って来た。かなり切迫している雰囲気である。
(どうした?)
(T君が懸念していた1つが、実現しそうになっているわ。)
(・・・デハラードの遺物か。)
(はい、宇宙船の始動計画です。)
挙げられた内容に、一同騒然としだす。これは過去に挙げてた懸念材料で、それが実行された場合は相当な危険度となる。魔力や魔法の概念を超越しているため、正に破壊神の降臨となるだろう。
(イザリアさん達に聞きたい。お前さん達が乗っていた宇宙船の武装は何だ?)
(未改造の戦闘艦なので、レールガンが主力兵器となります。バリアとシールドの防御機構も発動可能です。ですが・・・。)
(善悪判断センサーが施されている手前、連中には稼動させる事は不可能だと思います。ただそれは、現段階では・・・となりますが。)
(・・・魔力や魔法の概念で、何処まで自由化できるかが問題点か・・・。)
最大の懸念材料が出るかどうか、ここに今後の命運が掛かっていると言える。
地球での悪党共は、最後まで5大宇宙種族のテクノロジーを使う事ができなかった。そう、どう足掻いても、善悪判断センサーの前では力を使う事ができなかった。ヘシュナを利用して使おうとはしたが、逆に彼女自身が悪役として相手を操ったぐらいである。
対して、異世界惑星はかなり事情が異なる。問題とされるのは、魔力と魔法の概念だろう。イザリア達が言うには、魔力や魔法はニュートラルの属性を持っているとか。それにより、その属性を善悪判断センサーの善側に仕向けられるとしたら、5大宇宙種族の力を使う事が可能となる。
イザリア達自体、魔力と魔法の概念には不可解の領域だと言い切るため、現段階では対処法は難しいとされる。手っ取り早いのは、見つけ次第速攻破壊する、だろうな。
(・・・推測なのですが、魔力と魔法が始動と操作のキーとなるなら、私達の魔力と魔法を使えば、容易に操れるのではないでしょうか?)
(可能だとは思います。ですが、仮に敵地まで乗り込んで稼動させるぐらいなら、私達が直接乗り込んで稼動させた方が手っ取り早いです。)
(姉様、連中が稼動させる事ができないのが、自身の抱く悪心とするなら、アクリス様方の様な魔法使いを利用する可能性もあります。)
(言葉巧みに利用する、か。悪党の性根を踏まえれば、十分可能性はあるわね。)
アクリスと魔女三姉妹の真剣な討論に、他の魔法使いは興味津々に聞き入っている。もし、イザネアの言葉が当たるなら、俺が持つバリアとシールドの防御機構が発生するペンダントを使える事になるだろう。
(確認しようにも確認できないか・・・悩ましいな。)
(むぬっ? Tちゃんが悪心を抱けばOKじゃないわぅか?)
(それが罷り通るなら、この姿を維持できんだろうに・・・。)
簡潔的に述べてくる彼女だが、実際に結果は出ていると周りは頷いている。少しでも悪心を抱こうものなら、即座に性転換状態は解除されるだろう。その中には、邪な心も該当する。
(んー・・・エロ目サーチを開始しても、その状態が解除される事もありませんし。)
(ハッ?! 各ペンダントちゃんからの、公認のものになったわぅか?!)
(嫌な検証結果だなそれ・・・。)
姉妹の真面目ながらも茶化しが入る言葉に、周りの女性陣から引っ切り無しに殺気の目線が浴びせられる。しかし、先程と同じ様に、実際に検証結果が得られたと同じなので、黙認しているようだが・・・。
(そもそも、アクリス様のプランは一理ありますが、強引過ぎるため無理でしょうね。もしファンタジー関連の概念が働くなら、そうした強制的な稼動だと暴走する恐れが出てきますし。)
(そこは以前、挙がりました。そもそも、5大宇宙種族のテクノロジーは、非常に繊細さを持っているので扱いが難しいのです。)
(最初の頃は、各ペンダントに能力を付与する際、暴走して爆発したとの事が。)
(・・・各ペンダント自体、暴走する恐れがあるのか・・・。)
今更ながら、とんでもない事実を知る事となった。俺達が持っている各ペンダント自体、相当デリケートな逸品らしい。確かに、そうでなければ善悪判断センサーなど実現不可能と思われる。
(むふっ♪ Tちゃんなんか、何回暴走させているか分からないわぅね!)
(そうねぇ~。)
(はぁ・・・墓穴を掘る場合もあるしな・・・。)
同じく、今更ながらの事だと呆れる一同。俺の墓穴を掘る様は、何度となく見られている。同時にそれが、各ペンダント自体の安全性を確立する結果になるのだから、実に皮肉な話だ。
(私が言うのも何だけど、大事なのはこの大陸に住まう面々の厳守よ。後は造船都市の面々の厳守かな。王城周辺は望んでそこにいるんだから、一切考える必要はないわ。)
(マスターが全てを守りたいという一念も分かります。しかし、それよりも大事な存在が目の前にいるではないですか。その彼らを守り通す事が、警護者としての使命であり、ケジメだと思いますよ。)
(ケジメ、か・・・。)
シルフィアとは異なる述べ方をしてくれたシュームとナツミYU。それに幾分か心が落ち着きだしてきた。今の今まで抱えていた問題を、別の観点から解決せよと挙げてくれた。これには感謝するしかない。
(シュームさんとナツミYUさん、それに皆さんに感謝しなさいな。私は君と同じく、実直に物事を解釈して進むしかできない人間だからね。エリシェさんやラフィナさんは愚痴を聞いて解決してくれる。周りあっての君自身よ。)
(・・・本当にそう思います。)
ただただ感謝するしかない。つまり、自分では解決しようとしなかった事になる。それにより、周りの様子を伺い、答えを待っていたに過ぎない。
(それでも、先程のシューム様の言い分、相手が望んだ道を進んでいる、この部分だけは踏まえて下さい。でないと、全てを守ろうとして潰れますよ。)
(ああ・・・可能な限り善処する・・・。)
((はぁ・・・。))
近場にいるシュームと、遠方にいるシルフィアから同時に溜め息が出る。それを聞いて、悪いながらも笑ってしまった。俺に足りないのは、大らかさなのだろうな。
ちなみに、俺達の“普段通り”のやり取りを目の当たりしたためか、絶句している妹達とリューヴィス女傑陣。この場合は、ただ単に大人の会話に入れない感じだろうか。かく言う俺も、まだまだお子様なので、身内の女性陣には到底敵わないのだがな・・・。
それでも、こんな俺を心から慕ってくれている。その彼女達の笑顔を守るべく、今後も俺は己が生き様を貫いて行く決意だ。
とりあえず、ファンタジー世界観の専門家と、5大宇宙種族のスペシャリストの見解で、現状は悪党共の暴走的な行動が最大の脅威だという事に至った。魔力と魔法による特殊技的な応用で、善悪判断センサーを無効化させる試みである。
もしこれが実現された場合、連中は禁断の兵器たる宇宙船を使える事になるだろう。異世界での最大最強の戦闘力を誇る。しかも、その規模は直径20kmを超えるため、もはや人知を超えた様相となる。
幸いにも、こちらはまだ出していないカードが多数あるため、そうなった場合の対策は万全とも言える。しかし、連中が禁断の兵器を使い出せば、以後は暴走するのは目に見えている。早期破壊か、早期無力化を計るしかない。
第3話・2へ続く。




