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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第2話 私利私欲の罠2(通常版)

(手っ取り早く済ませたいなら、重装甲飛行戦艦・宇宙戦艦群・宇宙船群を出すべきです。瞬殺してみせますよ?)

(調停者や裁定者を超越して、破壊者になるつもりか・・・。)

(やるからには、ですよ・・・フフフッ。)


 物凄いニヤケ顔で語る2人に、ただただ呆れるしかない。しかし、その手法は現状を即座に打開できる一手でもある。だが、それでは異世界の住人のためにはならない。


(そう、ここの皆様の為にならないのですよ。先刻の因果応報のそれも、私利私欲が滅びの一手になる事を知らしめる必要がありますし。それら概念に魅入られる事なく、仲間達と手を取って進む事をしたのが、新大陸の方々ですよ。雲泥の差じゃないでしょうか。)

(・・・そう割り切った方が楽、か。)

(そもそも、王城周辺の方々を助けるというのは、言わば地球の全ての紛争に介入し、全ての方を助けるようなものです。5大宇宙種族を全て駆使したとしても、助けられない方が出るのは言うまでもありません。)

(・・・一介の警護者で過ごしている時が幸せだったわな・・・。)


 徐に一服しながら、心から出た一念を吐露した。一介の警護者だけならば、普通に依頼のみを遂行する存在だけでいい。しかし、今の様相は一介の警護者の枠を超越している。調停者と裁定者を担う、生命の警護者とも言えるのだから。


(はぁ・・・マスターの自己嫌悪は、異世界に来ても健在ですよね。)

(むしろ、地球よりも酷くなっている感じですけど。)

(・・・そうは言うが、お前さん達も現状に苛立ちを募らせているじゃないか。)

(当たり前です。ですが、リーダーたるもの、全てを見越して動かねばなりません。力があるから救えると言うのは、一種の傲慢さでもありますよ。)

(それに、貴方は既に多くの方を救われた。リューヴィスの女性陣がそうです。全ての人を助けるという一念は大事ですが、それにより大事なものを失う場合もある。非情ですが、今は動くべき時ではありません。)

(・・・そうか、分かった。)


 非常に遣る瀬無い気持ちだ。2人の言い分は十分分かる。だが、力を持っているのに、それを活用できないというのが腹立たしい。無論、それが傲慢さに行き着く事もあるため、ラフィナが語った通り押し留める事も必要になる。


(・・・イザリアが敬愛する意味合いを思い知りました。貴方こそ正に魔王とも言えます。私達も、貴方の様に力を持つも、使えない場面が多々ありました。それを何度となく見て来ています。それでも、エリシェ様が仰る通り、全てを見越して動かねばならない。)

(傍観的解釈になりますが、少なくとも王城周辺を救えなくても、貴方に罪はありません。何度も挙がっていますが、相手が何をしたのかを知らしめる必要がある。その上で、その行動を悔いるのなら、手を差し伸べるべきでしょう。)

(でも、現状はこの有様ですからね・・・。)


 言うか否か、意識が王城周辺のメカドッグ嬢達と繋がる。ヒドゥン状態のため、相手側に一切認知される事はない。


 メカドッグ嬢達が見たものは、私利私欲に走る人物達。略奪や強奪、特に女性への言動が酷いものであった。先刻、オルドラ達が激昂したあの様相よりも、更に非道さが増している。ここまで人間は堕ちる事ができるのかと思えてくる・・・。



(・・・君さ、ここまで届くぐらいの殺気と闘気を放つのは止めた方がいいわよ。)

(黒いモヤ事変を彷彿とさせますよね。)


 言われて気が付く。メカドッグ嬢達からの情報で、無意識に怒りと憎しみが増大し、殺気と闘気の心当てが出ていたようだ。それが念話を通して、伝わる面々全てに飛来している。


(そこまで悩んでいるなら、極論を言いましょうか。ここまで愚かな存在は、救う価値すらないわ。傍観より無視しなさいな、当然の報いよ。)

(餓鬼と畜生そのもの、地獄絵図とも。言わばこれらは悪い見本、我々が同じ境遇に至らないように、彼らが実演してくれているようなものでも。烏滸がましい考えですけどね。)

(師匠も甘いですよ、ハッキリと言い切る時は言い切るべきです。)

(ハハッ、相変わらず手厳しいです。)


 達観的な解釈をする2人。これに関しては、もはやどうする事もできないと言うべきだろう。いや、できたとしても、それこそ偽善者そのものになる。本当にどうする事もできない。


(・・・今の世上に憎まれようが、未来の世上に感謝される行動をせよ、か。)

(それこそが警護者の理よ。まあ、君は最初からそこに帰結しているけどね。)

(本当ですよ。それなのに、上辺の右往左往で自己嫌悪に陥って・・・。)

(毎度毎度の自問自答には呆れます・・・。)

(アハハッ、そうは言うけど、しっかり付き合っているじゃない。)

(何とも・・・。)


 最後の最後で締められた。そう、既に進むべき道は定まっている。だが、こうも悲惨な現状を見せられると、右往左往してしまうのが実状だ。人として当然の結果だろう。


 地球でも、異世界惑星でも、同じ様な苦悩を味わう事になる。しかしそれは、生きる上で絶対に避けられないものだ。特に警護者は、この概念からは絶対に逃れられず、更に傍観するしかない時も出てくる。今が正にその時だ。


 前に身内達も言っていたが、それら苦悩や苦痛が嫌なら、最初から警護者の道など進むべきではない。警護者の生き様は、完全に損なものばかりだからだ。それでも、この道に進んだ。全てを覚悟の上で突き進む、そう決意して至った道なのだ。


(マスターのその警護者の職業は、冒険者や勇者などの職業とは掛け離れていますよね。)

(勇者などの啓示の概念は、魔王や魔族などを打ち滅ぼし、世界を救う者になる。しかし、魔族側からすれば、人間側が身勝手に決めた啓示そのもの。酷いものですよね。)

(冒険者は自由気ままに生きる職業とも言えますが、自由故に全て自己責任として帰ってくる。最近の冒険者は、その概念を棚に上げて、身勝手極まりない事をする者が多い。)

(最初、マスターの警護者という職業が、一体どういうものなのかと思っていました。軽い気持ちで行う職業なのかと。ですが、実際はここまで己を追い込むものだったとは思いもしませんでした。)


 妹達が語る内容を伺って、己の生き様が途方もなく厳しいものであると痛感させられる。同時に、それがどれだけ重要な行動である事も痛感させられた。調停者と裁定者を担うとは、本当に烏滸がましい事この上ない。しかし、誰かが担わなければならないのもまた事実。


(俺には、お前さん達の様には戦えない。だが、目の前の存在なら守り通せる。それに、警護者という存在が調停者と裁定者を担う必要があるなら、お嬢方が言う通り傍観する時も必要だ。)

(・・・すまない、何時もの悪いクセが出てしまって。)

(お気になさらずに。貴方と共に歩みだした時から、覚悟の上のものですよ。それに、その愚痴的な事を言い放つも、後の行動への起爆剤になるなら安いものです。)

(愚痴を聞かされる度に思いますが、そのバリエーションの多さには呆れますけどね。)

(ハハッ、そうだな。悪かったよ。)


 俺の言葉に、周りが安堵するのを感じた。地球でもこうして、数多くの愚痴を言ってきた。しかし、この異世界惑星では、その度合いがかなり強く出ている。それだけ、殺伐とした世上であると言える。何時の間にか、かなりのストレスが溜まっていたようだわ・・・。



(そう言えばさ、最近休んでないんじゃない?)

(ん? 睡眠は例の効果で無効化させてるから、ここに来てから一睡もしてない。)

(はぁ・・・馬鹿よね。)

(元からだから仕方がないわぅ。)


 不安定な精神状態を見抜き、休息を取っていないのかと聞いてくる。ここ異世界惑星に来て以来、睡眠欲を打ち消すペンダント効果で一睡もしていない。それを挙げると、呆れの一念を放ってくる一同。特にその様相を知らなかった面々は、相当呆れ返っている。


(そのツケはどうしようもないけど、休息はしっかり取りなさい。今の君には休息が必要だろうし。)

(普通の生命体が行う行動を度外視するから、要らぬ考えとかが出るんですよ。お姉様からもキツく言って下さい。)

(そうは言うけどねぇ・・・分からないでもない一念だし。)

(寝ないで暴れられるなら、永遠にモフり放題わぅ!)

(モフられ続ける方は、たまったもんじゃないけど。)

(はぁ・・・少し休むか・・・。)


 過度の力の使い様は危ないと諭されていた。特にミュティナからは、痛烈なまでに戒められている。実際に効果を切った後は、数日は睡魔に襲われ動けなくなった。今この効果を切るのは自殺行為なため、このままで進むしかない。


 それでも、異世界惑星に来てからは、色々な考えが脳裏を過ぎり捲くる。地球では考えもしない事を考えさせられるからだろう。改めて、警護者とは何なのかというのを、異世界惑星での紛争を見て思い知らされた。


    第2話・3へ続く。

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