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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第2部 真の敵の淵源
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第2話 私利私欲の罠1(通常版)

 新大陸へと移住してから数週間。現地の開拓は続いている。未踏査の大陸だったため、その荒々しさはなかなかのものらしい。野生の魔物は数多く、複数のダンジョンが発見された。イザリア達もこの様相には驚いているとの事だ。


 そもそも、地球型の居住可能な惑星の発見が、超絶的に奇跡的であったという点が挙がる。しかも、魔力や魔法の概念がある事自体、理路整然と物事を解釈する宇宙種族達からすれば、有り得ない環境だとも言い切っている。


 偶然的に発生した惑星だったのか、そこはイザリア達をしても不明との事だ。しかし、全てが偶然で片付けられるほど、物事は生易しくはない。必ず意味があっての今に至るのだから。俺達がこの異世界に訪れたのと同じ様に・・・。




「よくよく考えれば、地球側も居住可能な惑星の発見に躍起になってますよね。この異世界を知ったら、移住しようとしてくるかも知れませんし。」

「地球と全く同じ環境であれば、だがね。魔力や魔物などの概念がある以上、地球人には到底理解できない惑星になるしな。」

「それに・・・今は落ち着いていますが、地球での各紛争を必ず持ち込むでしょう。己が新惑星の王だと言い出す者も。」

「人は、歴史とは、繰り返されるもの。シルフィア嬢が口癖のそれが痛感できますよね。」


 屋外で新たな武器開発に挑んでいる四天王。その彼らがボヤいている。俺も懸念していたものだ。しかし、現状は俺達だけしか来れていないため、問題は皆無ではある。


「・・・まさかとは思うが、王城側が召喚で地球の愚者を呼ぶ事はあるか?」

「有り得ないと思います。この異世界惑星と地球とは、数億光年離れています。王城側の魔術を用いようが、届かない距離だと思いますし。」

「そもそも、連中は悪の権化です。小父様も仰っている概念、善悪判断センサーの手前からして、転送装置を操作する事自体不可能です。更に、私の転送召喚も、奇跡的なものでマッチングした感じでしたし。」

「トランジットげふんげふんは伊達じゃないわぅ。」

「本当ですよね。」


 茶化しとボケを入れるも、至って真面目な顔のミツキとラフィナ。ここへ大規模転送が可能になったのは、ラフィナの機転によるものだった。マンガやアニメの概念がなく、それも余裕すら無さ過ぎる異世界惑星の悪党共には、到底理解できない概念そのものだ。


「しかし、お兄様方のご意見はご尤もです。人の歴史、特に地球人の歴史を窺いましたが、争いや私利私欲から逃れられない業に支配されているとも見えます。内在している力とも言えるのかと。そしてそれは、ここの住人達にも十分当てはまりますし。」

「ノホホンとしている感じの4人ですが、誰よりも世上を憂いて行動してくれてますので。重要な懸念材料として、以後の世上を見守って下さい。」


 彼女の発言に、頭を下げる4人。ミツキを含めた6人は、恐ろしいほどの強い絆で結ばれている。その度合いだけなら、身内の中で最強である。誰も敵う者はいない。その彼らが言い切るのだから、挙げられた懸念材料は一番強力な壁となってくる。


「しかし、魔王・大魔王・魔女が揃い踏みで、善側に動いている現状は見事ですよね。私達が知るファンタジー世界観では、魔王側は敵対する存在ですし。」

「そうだな。まあでも、聖側となる存在が悪党と化した現状、3人が切り札の1つになるのは言うまでもない。そもそも、三姉妹は異世界の創生者だ。魔王などのマイナスの概念は絶対に当てはまらないしな。」

「偽勇者共が正に魔王そのものですよね。」

「本当にそう思う。」


 出来上がった武器の試し振りをするエメリナ達。完成度を測ってから、それらを全ての移住組に渡していく形になる。オルドラの方は、その彼らの指揮を担っていた。


「さて・・・今後どう出るか、嫌みたらしく見守ってやろうかね。」

「フッフッフッ。」


 俺の呟きに、周りの面々が不気味に微笑みだす。しかし、その奥底にあるのは、痛烈なまでの怒りである。ただ、それを表に出すと、マイナス面の感情に支配されかねない。ここはこの程度の茶化し的な対応でいい。


 その後も武器開発は続く。武器以外に防具や道具もしかり。異世界の鉱物資源での作成とあってか、そのクオリティは相当なものだと4人は語っていた。鍛冶屋のオルドラも太鼓判を押すほどの完成度である。


 この場合だが、その製造技法が地球仕込みなため、材料に関しては異世界惑星の物を使っている。仮に俺達の武器などが奪われても、鉱物資源さえ解析されなければ問題はない。それらの製造技法に関しては、オルドラでも実現できないほどの手法を使っている。真似は出来ない逸品揃いなのだ。


 これらを踏まえると、改めてマデュース改などや携帯シリーズの獲物を作り上げた四天王には、とにかく脱帽するしかない。その補佐をするミュティ・シスターズもしかり。職人魂が熱く燃え上がる熱血漢達だわ。




 それから数日後、懸念していた事が起こった。しかし、それは新大陸ではなく、王城周辺での出来事だ。そう、人間のエゴ的部分から発生した、略奪などの醜い争いだ。


 これは現地にて、ヒドゥン状態の機械兵士メカドッグ嬢達による情報だ。機械兵士に筐体を変えている面々もいるため、こちらと同じ行動ができる。その背中にメカドッグ筐体を合体させたなら飛行も可能となる。


 ともあれ、この流れにより、造船都市側に難民が流れて行かないかが気掛かりだ。


(こんな事を目指していたんじゃないだろうが・・・。)

(本当っすよね・・・。)


 メカドッグ嬢達からの念話を窺い、この上なく怒り心頭の2人。またそれは、移住した面々の誰もが怒りの表情を浮かべていた。


(地球での暴動などは、警察や軍隊が出動するのですが、今の王城の警察・軍隊機構は全く機能していません。皆様方が移住された後、3大都市が蛻の殻となったのを良い事に、土地の独占や権力との結託などが横行しだしています。)

(失礼な言い回しになりますが、皆様方は清らかな心の状態で移住されたのが幸いでした。今の王城の様な心で新天地に赴いていたら、同じ火種を持ち込むのは想像に難しくないでしょう。)

(人を守る意味はあるのか、と。)


 一際怒りの表情を浮かべているヘシュナ。その暴動の発端者が人間であったからだ。他の種族などは、偏見や差別による暴行対象にもなっている。人間の醜さを垣間見て、怒りと共に遣る瀬無さが込み上げてくる。


(アルドディーレの方は問題ないか?)

(全く問題ありません。それに、王城からは50km以上離れているので、直ぐに到達する事はないでしょう。ただ、油断は禁物ですが。)

(・・・王城の面々も助けたいが・・・。)


 俺の思いは、念話を通して誰もが抱いている一念と同じだった。


 現状は、どうする事も出来ない。仮に助け船を出したとしても、ここまで火種が増加した人物を新天地に入れるのは、明らかに危険過ぎる。


 特に新天地は8割以上が女性陣だ。暴徒の火種を持った野郎が押し入った場合、その後の結末は火を見るより明らかである。過去には、それらに近い境遇から逃げ出すために、商業都市リューヴィスに逃げ込んできたのだから。


 彼女達にはもう、あの悲惨さを絶対に味あわせたくない・・・。



(・・・あの、その姿・・・。)


 彼女の言葉で気付いた。今の現状と、過去にリューヴィス女傑陣に降り掛かった様相を振り返り、性転換ペンダントが勝手に発動してしまっていた。男性から女性へと変化している。


(はぁ・・・これだから男は・・・。)

(・・・本当に女性心に溢れていますよね。)

(それでも・・・そうして怒って頂けて、女性でよかったと思います。)


 女性陣への理不尽・不条理な対応の怒り、その一念から来る男性から女性への性転換の発動。それを実際に目の当たりにした彼女達は、自分達が本当に大切に思われているのだと思ってくれたようだ。念話から痛烈なまでに伝わってくる。


(マスター、全ての人を助ける事など不可能ですからね。ここは心を鬼にして、私達の行動をし続けるのみです。)

(正直な所、3大都市全体が空家となった所に、居座り出したのは彼らです。その時点で私利私欲が出ているのは言うまでもありません。)

(・・・盗みを働いた先の、因果応報の竹箆返し、と。)


 俺と同じく、誰であれ助けたいという一念を持つ2人。大企業連合や躯屡聖堕チームが根幹と据える概念だ。その2人だが、犯した罪への罰は受けるべきだと言い切っている。この一念は烏滸がましい事だが、それでも被害を受けた者達もいるのが実状だ。当然の竹箆返しとなる。


(ともあれ、王城周辺は傍観し続けるとします。アルドディーレの方々のみ見守り、非常時は助け船を出すとしましょう。)

(・・・お前さんみたいに、非情な一念を出し切れれば良かったんだがな。)

(何を仰いますか、そうでなければ今の役割は貫けません。魔王や大魔王は非情の極みの存在です。それに、本来なら悪役であり、全ての生命体に害をもたらす存在ですし。)

(調停者と裁定者の役割は、私情で動く事はしない、と。諸先輩方の基本方針ですので。)

(はぁ・・・本当に羨ましいわ。)


 流石は数万年を生き、長い間悪役を担うだけはある。三姉妹の割り振った一念は、今の俺には見習うべきものだ。イザネアが語った通り、警護者は私情で動いてはいけない存在だしな。



 異世界の帝王たる、イザリア・イザデラ・イザネアの言葉通り、王城周辺の様相には傍観する事にした。非情極まりない行動だが、無人とはいえ3大都市に侵入して、好き勝手した事に変わりはない。


 それに、偽勇者共や制服共との抗争時、見て見ぬ振りをしていたのも事実である。城下町自体が少なからず加担していた事実も避けられない。そう割り切るのならば、正に因果応報そのものだ。非情になるべきである。


 むしろ今は、孤軍奮闘的な状態の造船都市アルドディーレを気にするべきだ。現地は王城からの横槍を全て払い除けている。更には海上からの、海賊共との抗争も繰り広げている。助け船を出すべきなのはここである。


 幸いにも、ウインドとダークHの規律姉妹、ヘシュナとナセリスの宇宙種族姉妹、ミツキTとメカドッグ嬢達の実働部隊が駐留している。沖合いには、デュヴィジェが艦長のレプリカ伊400が待機中だ。不測の事態の対策は万全とも言えた。


 それでも、王城が本気を出した場合は、どのぐらいの被害が及ぶかは不明だ。今は様子見をし続けるしかない。


    第2話・2へ続く。

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