第1話 新国家3(通常版)
今回は、新リューヴィスとなる都市を中央に据え置く事にした。有事の際は堅牢な大砦として機能させると同時に、全ての人物を守り切るという場所に定めた。そこを守り抜くのが、リューヴィス女傑陣である。その周辺を、新デハラードと新シュリーベルで固める流れになるという。
エリシェやラフィナは新国家の樹立と題しているが、王城みたいな巨大な城は建てないとの事だ。それ自体が権力の象徴になってしまうのを、危惧してのものと判断したためである。ここは今後、移住人達の意思を尊重していく形になる。
ちなみに、新大陸にも宇宙船があるのだが、それは同大陸の海中に沈んでいる。丁度桟橋の北側に鎮座している。旧デハラードと魔大陸の同船は、既に数万年ほど稼動していない状態らしい。しかし、絶対に朽ちる事がない材質なため、何時でも稼動できるとの事だ。
更に規模の問題から、地中に埋没している場合は大変危険である。新大陸の船は近海にあるため問題はない。だが、他の2隻は地中に埋まっているため、稼動させた場合は大惨事に発展する。オルドラ達が旧デハラードから撤退した理由はこれである。
それに、王城共が旧世代の遺産となる、宇宙船を稼動させようとするのは目に見えている。地球で実行する場合は、技術力のみの概念だけだったため不可能だった。しかし、異世界惑星では、魔力や魔法の概念がある。強制的に稼動させてくるのは十分予想できる。
最終的には、宇宙船同士か“巨大兵装”での戦いとなるだろうか。壮絶的な様相になると思われるが、幸いにもバリアとシールドの防御機構がある。仮に相手が使って来たとしても、それ以上のテクノロジーは使えない。そう、バリア・シールド貫通能力だ。
結局は、地球での各事変の最後の流れに帰結する訳か。超絶的な力を前にすれば、それに酔い痴れるのが愚者共の末路だ。それでも、俺が進むべき道は決まっている。
「では、この布陣で立地の切り開きをしてよろしいのですね?」
「はい、先ずは更地にしていきましょう。」
「私達の出番ですたい!」
周辺地形の整地を行いだす一同。ここはギガンテス一族はミュティ・シスターズの力と、ドラゴンハート一族はルビナの力に頼るしかない。前者は超怪力、後者は超能力が使える。巨木などを根刮ぎ引き抜き、それらを軽々と運ぶのは4人が適任だ。
「マスターはどうされます?」
「俺は港の守備だろう。新大陸は断崖絶壁で、一切の侵入を許さない。この港だけが唯一のウィークポイントだからな。海賊共や王城共が攻め込んで来そうだったら、片っ端から叩き潰してやる。」
「了解です。」
新シュリーベルの沖合いには、レプリカ大和が鎮座している。不測の事態には大活躍するが、敵の上陸者を監視する必要がある。特に海賊共や王城共がそれだろう。
「先ずは新リューヴィスの設立を最優先と。そこに街並みを揃えつつ、他の街も構築して行く感じで。」
「リューヴィスの女性陣が安心して過ごせる場所を、最優先で作ってくれ。全ての行動が終わるまでは、そこがコミュニティになるが、後に中心都市になるだろうから我慢して貰うしかない。」
「大丈夫です、皆さん全て理解していますから。」
「私達にお任せ下さい。」
2人の言葉に、力強く頷くリューヴィスの女性陣。冒険者や啓示から解放された妹達は、正に自由人の如く動き回っている。これが本来の彼女達の姿だろうな。結局、冒険者や啓示やらは足枷にしか過ぎなかった訳だ。実に皮肉な話である。
次の行動を開始する一同。3大都市の主力陣と、身内の主力陣が共同で開発へと乗り出していく。この場合は、3大都市の主力陣を中心とした行動が望ましい。主役は彼らなのだから。
不測の事態や通常の行動に関して、必要となる道具類の製造は四天王とオルドラが担っている。特に四天王の技術力はオルドラ顔負けであり、総意の武器や防具や道具などを作って回っている。
本来ならミュティ・シスターズも合わさってこそだが、今は出払っているため彼らだけでの作業となる。ちなみに、工具類は地球から持ち込んだものが数多い。食料や物資なども全て該当する。
「ぬぅーん、無人島物・・・ハッ?!」
「偉いわね、事前で止めたし。」
「はぁ・・・新たなボケとツッコミか。」
港で警護任務に当たる俺達。その合間に雑務も行うため、休む暇がない。隙を突いては、ボケを言い放つミツキに、即座にツッコミを入れるナツミAである。しかし、2人の表情は厳しさを放っていた。
「・・・シュリーベルの奇跡時、黒ローブを殺害したとの事ですが。」
「ああ、あの時か。奴の過去を知った時、過去の行い自体への因果応報だ。それに、奴は魔物だったしな、人間じゃなかった。」
「そうでしたか・・・。」
「・・・お前さんの一念は、俺に人殺しをさせたくないというもの、か。しかし、相手が人間だから殺害せず、魔物だから殺害する、これでは差別そのものだ。それに、地球で過去に依頼を受けた際、実際に人を殺している。」
一服しながら過去を振り返る。警護者の走り立て時は、実力が備わっていなかった。故に、手加減など出来る筈がない。当然、相手を殺す事もし続けてきた。
「警護者は殺人職、その末路は地獄そのものだ。それでも、声無き声を汲み、救いの手を差し伸べるのが警護者の使命。5大宇宙種族が合流してからは、調停者と裁定者の役割へと昇格したしな。」
「総意を守るためならば、己が手を血に染める事も厭わない、ですか。」
「俺の生き様の采配は、後の歴史や逝去時に全て任せる。今は、己が生き様を貪欲なまでに貫き通すまで。俺はこの道に進んだ事に、一切後悔はしていない。」
そう、これは何度となく自分に言い聞かせてきた概念だ。そうでなければ、私利私欲に溺れ、人外の道に進んでいたのは間違いない。
「それに、お前さん達を守れる事が、俺の本当の使命でもあり生き様だ。そのお前さん達に火の粉が降り掛かろうとするなら、全て払い除けてやる。」
「・・・本当に変わりませんね。だからこそ、私達も共闘できるのでしょうから。」
「己が定めた信念と執念は絶対に曲げない。それがどれだけ厳しい事か、私達も警護者に至って痛感しています。ポチが一番理解していると思いますよ。」
「ハハッ、ご冗談を。姉ちゃんの方が遥かに理解してくれています。」
小さく笑い合う姉妹。その2人の笑顔に、今まで戦ってきた事が間違いではなかったと痛感させられる。まだまだ膝を折る訳にはいかない、そうも思い知らされる・・・。
「まあ何だ、今はそれぞれの使命を全うし続けるしかない。ここに呼ばれたのも、意味があってこそのものだったしな。」
「王道たる王城の召喚じゃなく、魔王自らの召喚ですよ。見事としか言い様がありません。」
「その王道たる王城がラスボスになりかけているしねぇ。」
「不謹慎ながら、ワクワクしてきますよね。」
これである・・・。真面目会話から離れれば、途端に雑学に突っ走りだす2人。この気質は身内全員がそれに当たる。だからこそ、無双的力を発揮できるのだろうな。
その後も雑談をしつつ、港の警護任務を続ける。実に平和的な感じだが、実際には奮起する必要も出てきている。
現状は、ほぼ自給自足的な流れになっているため、全てが現地調達となっている。しかし、高度な工作機械を必要とする場合が多く、その時は地球から転送装置により物資を運び入れている。と言うか、その作業機械が5大宇宙種族の面々というのがな・・・。
特にギガンテス一族は全宇宙種族中、最強の力を持っている。超怪力の能力がそれである。片手でレプリカ大和を持ち上げる事も造作もなく、力仕事では誰も敵わないのだ。その彼らに立地の作業を任せる事にしたのだ。
これには流石に悪いと挙げたのだが、王女たるミュティ・シスターズ自らの指令とあれば、同族として応じねば恥であると豪語された。男女問わず生粋の熱血漢が揃うため、三姉妹の生き様に呼応された感じだろうな。
まあ最大の要因は、最近身内の影響により、5大宇宙種族にヲタク気質の面々が出始めている事だろう。トラガンチームや躯屡聖堕チームが、垂涎の感激度を示しているぐらいだ。5大宇宙種族の面々も同じ気持ちになるのは言うまでもない。
それでも、今では警護者の生き様が根付きだしている。彼らの気質から、調停者と裁定者を地で行くため、専ら志願兵的に名乗りを挙げているのが実状だ。この姿勢には、本当に脱帽するしかない。俺が彼らを盟友と挙げる意味合いは、ここにあるのだからな。
第1話・4へ続く。




