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覆面の探索者 ~己が生き様を貫く者~  作者: バガボンド
第1部 異世界の旅路
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第13話 新天地へ3(通常版)

 大都会に入り、街の中央に差し掛かった時、非常に珍しい4人と再会した。と言うか、何時の間にか、異世界惑星に転送移動していたようである。


 それは、喫茶店の地下で数多くの特殊兵装を開発していた四天王、ウエスト・サイバー・ナッツ・エンルイ、通称ナツミツキ四天王だ。そう、今までに四天王と呼んでいたのは、この4人の事である。


「・・・何故にお前さん達が・・・。」

「酷いっすよ! 何故俺達も呼んでくれなかったんですか!」

「異世界への旅路とか、感涙するしかない感じですよ。」

「つい最近ですよ、皆さんが異世界へ召喚していったと伺ったのは。」

「今まで、兵装の製造を行っていたのもありますけどね。」


 この通り、バリバリのヲタク気質である・・・。マデュース改や各種兵装は、全て4人の手による逸品である。故に、地下工房から出る事が非常に希だ。


 彼らに異世界の情報が入ったのは、デュヴィジェ達の娘達から聞いたものだったらしい。つまり、今の今までずっと獲物製造に打ち込んでいたのだ。これには流石に、申し訳ない気分になってしまった。


「まあ本音だと、ここの巡回警戒の役を買って出たのですがね。」

「嫌なぐらいに殺伐としてますよ。何時でも争いが起きてもおかしくないレベルで。」


 周辺への警戒を怠らない4人。ナツミAとミツキが感嘆する程の、彼らの周辺警戒能力は非常に高い。直感と洞察力もズバ抜けており、それを買われてトラガンの女性陣の各修行に応じているぐらいだ。


「あ、失礼を。俺はウエスト、以後お見知りおきを。」

「ご丁寧に。私はイザリアと申します。」


 忘れていたと言った感じで、簡単な自己紹介を始める面々。俺など話にならないぐらい、高い紳士的な面も持っているため、その応対に感嘆している女性陣である。同時に、それを比べたのだろう、俺を見る目線が何時になく冷たいものだった・・・何とも。



 その後も周辺の警戒をしつつ、雑談をする俺達。今の大都会を見て思ったのが、以前の喧騒な様相が全くなくなっていた。4人の話によると、シュリーベルとデハラードに移住した人物が数多くいたらしい。今となっては、向こうは蛻の殻の状態になっているからな。


 何れ、リューヴィスの方にも移住する人物が出てくるだろう。既に移動は完了している。短期間に3大都市の住人がいなくなった様相に、王城側がどう出るかが見物だが。


「造船都市の方は大丈夫ですかね?」

「ウインドさんとダークHさん、ヘシュナさんにナセリスさんがいる。ミツキTさんも仲間と共にいるから、全く以て問題ない。」

「うへぇ・・・既に結構来てるんですか・・・。」

「完全に出遅れた感じで・・・。」


 エラい落胆気味の4人。彼らには数ヶ月間の様相を全く知らされていなかったらしい。この落胆する様子を見れば分かる。ただ、ここに来る前には数多くの獲物を製造していたらしい。もしかしたら、対異世界用特殊兵装を考案していたのかも知れない。


「この後はどうします?」

「シュリーベル・デハラード・リューヴィスの移動は完了したから、俺達も向こうに動いて良いと思う。一応の陽動作戦を取っていたが、移動側の速度が早かったし。」

「兵は神速を尊ぶ、ですからね。それに、あの2人がいらっしゃるのなら、間違いなく神速で動くでしょうから。」

「ハハッ、あの2人は良い意味で変人だからな。」


 俺の言葉に笑い合う4人。姉妹の言動は、とにかく変人極まりないとしか言い様がないレベルである。該当する点が数多くあるため、変人以外に思い当たる言い回しがない。まあ、これは究極的な褒め言葉の1つだが。


「一応・・・デカい態度でここに来たんだが、王城からは何もなしか。」

「偽勇者共とか出てきませんよね。」

「ハッ! お嬢方の真の強さに、圧倒されて縮こまってるんすよ。」

「本当だわな。」


 粗方の様相を伺ったからか、エメリナのボヤきに乗ってくるナッツとウエスト。それに笑顔で頭を下げる彼女。このフォローの良さは、身内の女性陣にはできないものだろうな。


「皆様方の女性への対応は、やはり異性だからでしょうか?」

「ああ、色眼鏡のそれか・・・。」

「そんな事をしたら・・・姉御方に何をされるか・・・。」

「考えてだけで恐ろしいです・・・。」


 顔を青褪めえて震え上がる4人。その恐怖の対象は、ナツミAからのものだ。ミツキは毎度のノホホン度が高いが、ナツミAの方は強烈な一撃を容赦なく放つのだ。同性として、4人の恐怖度に俺も震え上がってしまう。


「まあでも、リューヴィスの方々への悪態は、俺でも絶対に許せませんがね。」

「同性として恥かしい限りで。」

「ああ、そこは大いに同意する。」


 震え上がりから一転、怒りの表情を浮かべだす彼ら。これは俺も全く同じで、リューヴィスの女性陣への悪態に、痛烈なまでの怒りを覚える。特に4人はその度合いが俺よりも強かった。


「・・・そこまで思って頂けるのは、女性として嬉しいです。」

「お気になさらずに。私達も皆さんと同じ様な境遇の方々を見てきましたから。」

「トラガンの女性方がそれでしたし。」


 長い間、トラガンの女性陣と修行を繰り返した4人。故に、彼女達が抱えていた苦痛を痛烈なまでに知るに至っている。苦痛を与えたのも男性で、彼らも男性ではある。しかし、親身になって接した事により、今では兄貴分として見られるようになっていた。


「マスターが真っ先に飛ばされた理由が、何となく分かった感じだわ。」

「そうですね。魔王イザリアさんが自ら指名したようなものですし。」

「ハハッ・・・恐縮です・・・。」


 2人が挙げるそれは、女性を守る為に召喚されたという意味合いと取れる。しかし、実際にはランダム召喚的なもので、イザリア自身は意識せずに俺を呼んだ事だった。過大評価的に取られた事で、萎縮してしまう彼女だった。




「とりあえず、ここには用はなさそうだし、新大陸の方に・・・って、これですか。」

「はぁ・・・待ち構えていた感じか。」


 誰よりも現状を把握しだす4人。直感と洞察力が優れている事から、迫り来る脅威に敏感に反応したようである。


 それは、王城の方から現れる複数の人物達。制服姿でいる事からか、何らかの組織だと推測できる。しかし、その表情はとてもまともな人物とは思えない。過去の軍服黒服事変を彷彿とさせる様相だ。


 そして、相手が何を目的としているのかが即座に読めた。それを感じ取った四天王は、態とらしく14人の女性陣を守るように展開していく。そう、無意識的な感じでの展開だ。


「・・・それで、何用でしょうか?」

「勇者エメリナ一行と冒険者ネルビア一行だな、王城まで同行してもらう。」

「用事があるなら、直接お伺いにくればよろしいかと、そうじゃありませんか?」


 態とらしく女性言葉で話すためか、それを窺った身内は笑いを堪えている。対する制服共は苛立ちを隠せない。本当に軍服黒服事変を思いだすわ。


「こちらの要求に従わないのであれば、この場で行うのみだ。穏便に進めたいがために、王城までご足労と思ったのだがな。」

「ほむ・・・。」


 制服男の言葉で全てを察知した。それは妹達以外に、イザリアや四天王も同じ様子のようだ。ここはあえて、その挑発に乗ってみる事にする。すると、その流れで行けと雰囲気で語ってくる周りの面々。


「・・・よろしいでしょう、この場でお伺いしましょうか。」

「いい度胸だな、ならばこの場で執り行うとする。」


 そう言いつつ、懐から資料を取り出す。丁寧に折られている所を見ると、それが重要な書類であると思わせる。まあ、内容は重々承知済みだが。


「勇者エメリナ・騎士フューリス・賢者テューシャ。現時刻を以て、貴様等に与えられた啓示を無効とする! 冒険者ネルビア一行。同じく現時刻を以て、冒険者ライセンスを剥奪する!」


 どうだ、と言いたげに公表する制服男。公衆の面前での告知とあり、かなりのダメージを与えるものだと踏んだのだろう。しかし、周辺の住人は意にも留めず、更に妹達は何食わぬ表情で棒立ちをしている。その様相を見て、態とらしく大笑いしてみた。


「王城の告知に、血迷ったみたいだな。」

「ハハッ、悪い悪い。そんな紙切れの馬鹿げた内容に、呆れて笑ってしまったわ。それにな、大変申し訳ないが、それらは必ず来るものだと数ヶ月前から推測済みだったんだよね。」

「な・・何だと・・・。」

「冒険者ライセンスの剥奪ですが、正直あってもなくても良かったのですよね。お姉様がボヤかれていた通り、無駄な機構だと思っていましたし。」

「啓示の一件も、正直重苦しいにも程がありましたよ。そもそも、勇者の概念とは、啓示で得られるものではなく、勇ましい者にこそ与えられる称号。王城如き悪の巣窟が独占して良いものではありません。」

「貴様等・・・王城を侮辱するとは、極刑に値する!」


 言うか否か、護身用の剣を抜き襲い掛かって来る。案の定の展開に呆れ返るが、それを攻撃と判断した四天王が即座に動き出した。


 相手の剣を素手で受け止め、そのまま喉元にラリアットを放つナッツ。見事なまでの一撃により、制服男は吹き飛んでいった。腕力の問題なら、俺よりも四天王の方が遥かにある。この一撃が全てを物語っているわな。


 ちなみに、四天王も俺と同じ各種ペンダントを持っている。そのため、各能力が常時発揮されている。素手で剣を受け止めたのは、バリアとシールドの防御機構が働いているためだ。仮になくても、彼らの腕前なら問題なく遣って退けるだろう。


「君、それはDQだよ。」

「やり合うなら、武器無しの肉弾戦と参りましょうか。」

「おのれ・・・この場で全員処刑せよ!」

「はぁ・・・お前さん方、お任せしますの。」


 相手の実直な言動に、心の底から呆れ返るしかない。悪党の見本的な言動だ。それに態とらしく一任するとボヤくと、瞳を妖しく輝かせて大暴れしだす四天王。ナッツとエンルイを筆頭に、サイバーとウエストが続いていった。


 その後はもう、喧嘩大乱闘状態だった。相手が武器を持とうが、お構いなしに殴りや蹴りを放って一蹴していく。その様相に感化された妹達が、同じく肉弾戦を演じだしていくのだ。


「あー・・・何と言うか・・・。」

「武器と魔法を中心とする戦いのお前さんには、理解できない概念だろうな。」


 徐に一服しながら、大乱闘を繰り広げる面々を見守った。その様相に呆然とするイザリア。魔王の彼女からしたら、絶対に有り得ない戦い方だろう。見た目は普通の喧嘩なのだから。


「地球でも最後の方は、重火器を使うより肉弾戦の方が多かった。プロレス好きの身内には堪らない様相らしい。俺も同じだが、付け入る隙すらないし。」

「アハハッ・・・。」


 呆れ顔の彼女に、苦笑いを浮かべる。この喧嘩大乱闘状態になると、相手が完全に倒れるまで戦いを止めない。急所を除いた一撃を放ち捲くるため、相手を殺す事がほぼないに等しいのもある。完全に憂さ晴らしそのものだわ。


 そして、喧嘩大乱闘ながらも、華麗なる攻撃を見た大都会の住人達。その様相に魅入られたのか、立ち見しだす面々が後を立たなくなっていた。仕舞いには、身内側を応援するまでに至っている。


 大都会の住人から、覇気がなくなっていた事は気にしていた。しかし、この声援やら応援を窺うと、王城側の圧力が強かった証拠だろう。となると、後で手痛い竹箆返しが来るかと心配になるが。



 どれぐらい経っただろう。完全にノックアウト状態の制服共。何とか立ち上がり、一言も発する事なく王城の方へと引き上げて行く。実に哀れ極まりない。


 逆に、四天王や妹達は清々しい表情で仁王立ちを続けている。最後まで相手を威圧する事を忘れていない。これは四天王が何度も行う戦術の1つで、雰囲気で威圧すると言っている。ナツミAやミツキも同じ事をしているため、流石は彼女達の四天王だと思わざろう得ない。


「お嬢さん方、やりますな。」

「いやいや~、兄貴方には敵いませぬ。」

「ミスTさんよりも凄腕ですよ。」

「はぁ・・・。」


 率先垂範で動く4人に、羨望の眼差しを向ける妹達。四天王の真骨頂は肉弾戦なので、今の大乱闘は真価を発揮した戦い方である。それに見事なまでに魅入られた妹達だろう。


「でも、マスターも肉弾戦の方が得意なんですけどね。」

「ご存知ですよ。ただ、皆さんの方が清々しいと言うか何と言うか。」

「4人は近接戦術が得意だからね。肉弾戦もそれだが、獲物を使った動きも同じよ。」

「武器も使われるのですか・・・。」


 呆気に取られる彼女に、ニヤリと笑いながら携帯武器を展開する四天王。


 ウエストは携帯双矛、サイバーは携帯迅雷剣、ナッツは携帯偃月刀、エンルイは携帯双剣。どれも某ゲームに登場する獲物群の模造品である。またサイバーの獲物は、エリシェの獲物と同じだ。戦術だけは異なるが、それは個性と挙げても問題はあるまい。


「何か、ミスTさんが持つ武器と同じ感じですね。」

「元ネタは全く同じですからね。」

「俺達も同じ作品に魅入られて、これら武器を作りましたし。」

「何だか凄いですね。」


 羨望の眼差しは続く。今までの身内は女性陣だったため、同性としての目線だった。だが、四天王は男性だ。異性としての目線になるため、羨望の眼差しとなるのだろう。また、盟友たる彼らが憧れられるのを見て、俺の方も嬉しくなってくる。


「しかし、公に啓示の無効とライセンスの剥奪か。何時かはやるとは思っていたが。」

「前は拘っていましたが、今はもうそんな制度など眼中になしですよ。」

「貴方がランク制度を嫌っていた理由を、今ほど痛感する時はありません。」

「所詮は上辺だけの判断材料、無駄な制度そのものだしな。」


 徐に一服しながらボヤくと、何と四天王も一服しだした。煙草を吸う姿は滅多に見ないため、非常に珍しいとしか言い様がない。


「ああ、これですか。エリシェ嬢やラフィナ嬢と同じく、ストレスが溜まった時にしか。」

「ナツミAさんとミツキさんも、偶に吸ったりしてましたよ。」

「ええっ・・・大丈夫なのか・・・。」


 驚愕の事実を知らされた。ナツミAとミツキも、ストレスが溜まった時は喫煙をするとの事。全く見た事がないので、これは姉妹と非常に親しい間柄の4人だからこその情報だろうな。


「さて、これで大都会イベントは終わったので、新天地へと向かいますか。」

「イベントねぇ・・・。」

「そう考えた方が気が楽ですよ。」

「フフッ、本当ですよね。」


 すっかり意気投合する4人と妹達。プロレス技を織り交ぜた肉弾戦、この流れで共闘する人物は必ず意気投合しだすジンクスがある。トラガンの女性陣も、こうして意気投合したと言っていた。不思議なものである。


 制服共が見えなくなるまで、その場で仁王立ちを続ける面々。その間も雑談を繰り返す。満を持して異世界に到来した4人にとっては、これらの出来事に歓喜している様子だった。


    第13話・4へ続く。

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