第2話 最強の武を示す2(通常版)
「ウッシッシッ♪」
「まるで山賊だな・・・。」
同日内で10にも及ぶ討伐クエストをこなし捲くった妹達。得られた報酬を目の前にして、瞳を輝かさせている。冒険者ランクもEからDに上昇、破竹の勢いで進む様相である。
「ミスターTさんは報酬はいらないのですか?」
「俺は同伴者だから気にするな。ただ、煙草だけは買ってくれ。」
「欲がないですねぇ・・・。」
今回の総合報酬は、向こう数ヶ月は暮らせるぐらいの巨額である。この街には強い冒険者がおらず、言わば彼女達が総なめしたした感じになった。故にこの巨額となる。
「これ、大都会とかのクエストなら、これ以上の報酬になるのか?」
「多分、冒険者同士で取り合いとなると思います。ここは地方になるので、需要が少ないのもありますし。」
「討伐クエストを余りにも長期間放置した際は、大都会から冒険者を募って討伐に来る事がありますので。」
「見下されたものだな。」
大都会に居る冒険者は、名声などを重視する輩が多い、という事だな。それを踏まえれば、妹達の行動は正に救世主とも取れる。言わば、勇者そのものだ。
「今更ながらに思ったのですが、貴方様の言葉は普通に通じますよね。」
「あー、確かにな。まあアレだ、細かい事は気にしない主義なのでな。」
アクリスの言葉にボヤいてみせるが、実際にはそれは嘘である。これは各ペンダント効果によるもの。その中の翻訳機能が効果を発揮してくれている。地球を例にすれば、日本語しか話せない俺が、海外の外国語を自動的に翻訳してくれているのがそれだ。
「魔物とも意思の疎通ができれば、争い事はなくなりそうなのですけどね。」
「一理あるが、全部が全部そうとは限らんだろうな。現に人間同士でのイザコザがある。それに、生命体自体が争いの概念からは抜け出せない。争いこそが生命自体に備わる力の1つだしな。まあ・・・俺はこの考えは嫌いだがね。」
本当にそう思う。これは地球でも考えていたものでもある。ミツキ流のお節介焼きと世話焼きを以てしても、紛争を完全に根絶はできなかった。いや、完全に消し去るのは厳しいだろう。
「・・・だが、不可能じゃないわな。」
「・・・ですよね。」
「諦めなければ0%にはならない。諦めた時点で希望は潰える。結局、最後は己がどうすべきか、ここに帰結してくるしな。」
これは自身にも常に言い聞かせている言葉だ。諦めなければ0%にはならない。諦めた時点で全て潰えるのだから。今後も肝に銘じたいものである。
「まあ何だ、今後も各種クエストを攻略して回るといい。目には見えない結果になるが、確実にレベルアップはしていると思うしな。」
「実際に見れると有難いのですけどね。」
確かに一理ある。これが本当のゲームの世界なら、各ウインドウによりステータス調整ができるだろう。しかし、そういった要因は皆無に等しい。むしろ、不可視の方が遥かに現実的とも言える。
「見えたら見えたで、色々と不便になると思うが。」
「単独行動などができなくなりますからね。」
「俺が知る世界での娯楽作品の話になるが、ステータスという要素があってな。そこから色々と情報を見たりできるんだが、流石に非現実な要因だから有り得ないと思う。」
「それを言うなら、ミスターTさんのその超常的な力こそ有り得ない感じですけど。」
「痛い所を突きやがるわ・・・。」
各ペンダント効果は、目に見えないものとなる。それを指摘してきたファイサに、顰めっ面で舌打ちして見せた。かく言う俺自身も、地球での活動時に見る事はできなかったしな。これはどうする事もできない。
「さて、もう少し暴れるとしましょうか!」
「この街に居る限り、クエストは選り取り見取りですからね!」
「一気にランクアップですよ!」
「はぁ・・・。」
休息を終えて、冒険者ギルドへと向かう妹達。その姿に溜め息を付いた。同時に、横槍が向けられないかを注意深く探ってもいる。大丈夫だとは思うが、念には念を入れるべきだわ。
それから妹達は、少々格上の討伐クエストを攻略しだした。とは言うものの、この地方街の討伐クエストには誰も手を付ける冒険者がいない。街の冒険者ギルトの方も、専属冒険者となりつつある妹達を大歓迎してくれているようだ。
以後、数日間ほどこの流れを繰り返すも、大都会から冒険者が回ってくる事はなかった。となると、向こうは向こうで勇者一行の威光が強く出ている証拠だろう。それだけの実力者である証拠だと取っていいかも知れない。
もし、連中が貪欲なカス共であれば、妹達の活躍を耳にする事になるだろう。となれば、必ず横槍を入れて来るに違いない。自分達以上に活躍される事を嫌う、それがカス共の性根になるからな。地球でも同じ様な連中を嫌というほど見てきたわ・・・。
今後は少し、警戒を強めた方が良いかも知れないな・・・。
第2話・3へ続く。




