表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
98/530

番外編【雨宮クロナ外伝】その④

傘を忘れた鴉



「私は、城之内家に仕えています、西原と申します」


タキシードを身にまとった初老の男は、アクアと黒真に傘を差し出した。


「どうぞ、こちらをお使いください」


「いいですよ。もう濡れていますし・・・」


アクアは断ったが、西原と言う執事は、差し出した手を引っ込めることはしなかった。


「いえ、人を助けてこそ城之内家の人間です。貴方様方の、雨に濡れている姿は、いたたまれないので・・・」


二人は目を合わせたあと、傘を受け取った。


「ありがとうございます」


「返却は不要です」


西原は深々とお辞儀をすると、路肩に停めてあったリムジンに向かって歩き出した。


「あら、リムジン」


「金持ちでしょうね・・・」


黒塗りのリムジンの窓から、オレンジの温かい光が漏れていた。


西原が運転席を開けた瞬間、「西原さんおそーい!」「そうよー、おそーい!!」と、小さな女の子の声が聞こえた。


二人分。


「双子かしらね」


「そうでしょうね」


クロナと同じくらいの歳だろうか。


「あのような高級車に乗れるなんて、羨ましい限りです」


「あら、あなたもそういうのに乗りたいの?」


「いえ、お金持ちの証拠だということです。オレもいつかは、妹に何不自由無く養ってやりたいと思っているので・・・」


「そう・・・」


そのためには、もっとUMAを倒さなければならない。


二人は、学校に戻った。


そして、UMAの討伐報告を終わらせ、その日は解散となった。


「じゃあ、黒真くん、さよなら」


「はい、さよなら」


黒真はアクアに手を振り、学校を後にした。


時刻は6時半。


弾丸のような雨が降り注ぎ、黒いアスファルトの上で跳ねた。西原という執事から受け取った傘を差しているものの、意味が無いと言っていいくらい身体は濡れている。


「今日は、早く帰れそうだな・・・」


帰ったら、クロナにカレーを作ってあげよう。そう思い、黒真は、冷蔵庫の中の食材のストックを思い出した。


「多分、作れるよな・・・」


その時、黒真の視界が歪んだ。


「う・・・」


思わず右側のブロック塀にもたれ掛かる。


黒真は、任務以外でも大量のUMAを狩っていた。平泉を通せば、事後報告でも支給金は貰えるからだ。


アクアには言っていなかった。「無理をするな」と言われるのは目に見えていた。


今無理をしなくて、いつすると言うのか。


クロナは今多感な時期にある。精神的にも、金銭的にも不安にさせる訳にはいかない。


自分が、クロナを養い、支えるのだ。自分が、母と父の代わりとなるのだ。


「ぎゃああああああああ!!!!!」


薄暗闇に、女性の悲鳴が響き渡った。


「っ!!」


黒真はその悲鳴に弾かれたように走り出した。


すぐ近くだ。


人気のない路地裏に入り、田畑が密集する道を駆ける。靴は泥水を吸い込んで重くなり、身体全体にだるさが残った。


それでも、構わない。


「この気配・・・、UMAか!」


黒真はある神社に辿り着いていた。


「ぎゃああああああああ!!!!!」


再び、女性の悲鳴。


この神社の奥の、雑木林からだ。


「くっ!!」


舗装されていない神社の敷地に入り、水溜まりを弾いて林の中に踏み入る。


その時、黒真の視界に黒い塊が飛び込んできた。


「え!?」


反射的に防御する黒真。


黒真の体に、血まみれの女性の身体が激突する。


「うっ!!」


まず助からないだろう。身体中の骨が砕け、腹が裂けて内蔵が顔を出している。


「くそっ!」


黒真は女性に「すみません」と唱え、死体を振り払った。


そして、勢いそのままに林の中に潜む化け物に接近し、刀を振る。


「名刀・黒鴉!」


ギン!!!!


高速の居合を放ったつもりだったが、手の中に硬い感触が残った。


そして、弾き返される。


「うっ!!」


体の力が抜け、受身を取れず泥の地面に身体を打ち付けた。


殺気。


黒真は直ぐに手を突いてその場から離れた。


ドン!!


黒真が倒れ込んだ場所に、白い尾が叩きつけられる。


「こいつはっ!?」


そこには神社ならではの光景が広がっていた。相対するは、白銀の鱗を薄闇に輝かせ、金色の瞳で敵を見定める。ぱっくりと裂けた口からは、胃酸と唾液が混じりあった異臭が放たれ、二本の牙と細い舌が顔を覗かせた。


巨大な、白い蛇。


「白陀・・・、巨大化系のUMAか!!」


黒真は一度後退して、クスノキの枝の上に着地した。


全身が粟立った。


「オレに、やれるのか・・・!?」


初めて見るUMAだ。能力も、未知数。


だが、初発見のUMAを倒せば、特別支給金が出ると聞いたことがある。


(やるしかないか・・・!!)


黒真は腰の黒い柄を持つ刀に手をかけた。


白陀VS黒真。


最後の夜が始まる。











その⑤に続く










その⑤に続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ