表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
93/530

第33話 恐れる者 その①

指で抉り出す


鴉の翼

1


一時間もすれば、日は地平線の向こうへと消えてしまい、悪意のこもった夜が舞い降りた。


「クロナさん・・・、本当に、今夜はここで寝るんですか?」


「寝るわよ」


クロナは薪の火を弱めた。明るすぎては、白陀に気づかれる恐れがあるからだ。


「それより、あの赤スーツの馬鹿は?」


先程から、鉄平の姿が見当たらない。勝手に出ていき、勝手に死ぬのは構わないが、白陀を連れてこられては困る。


「ああ、食べ物を探しに行きました」


アクアから食料を支給されていたクロナと架陰に対して、鉄平は鉄棍片手にこの山に乗り込んでいる。


一応、架陰が、「分けてあげるよ」と言ったものの、「いや、架陰に迷惑かける訳にはいかねぇ!」と言って出ていってしまった。


大分時間が経っている。


架陰がいよいよ心配し始めた、丁度そのタイミングで、鉄平が戻ってきた。


「よお、姉さん。薪の火を強めてくれ!」


鉄平は、両手いっぱいの蜥蜴を抱えていた。


「あんた、リザードマンを倒した後に、よく食べれるわね・・・」


「いや、倒したからこそ、食べたくなったんだよ」


鉄平はざっと数えて、十五匹の蜥蜴を一匹一匹絞め殺し、落ちていた木の枝を使って串刺しにした。


そして、クロナが強めた火に掛ける。


架陰のお腹がぐーっと鳴った。


「あ、意外に香ばしい匂い・・・」


「だろ? 野生のもんは美味しく頂くって、昔から覚えているんだよ!」


焼けた蜥蜴を、架陰に渡す。


「ほら、食べてみろよ」


「ありがとう!」


「姉さんは?」


「いらないわ」


クロナは首を横に振った。さすがに、蜥蜴は食べたくなかった。代わりに、ナップサックの中に入っていた固形食料を齧る。


架陰は「おいしい!」と言いながら、蜥蜴の丸焼きにがっついていた。


「なんか、鳥肉みたい! 手羽だ!!」


「だろー!」


空腹を凌いだ三人は、薪を囲むように座り、これからの行動について話し合った。


「で、どうするんだ? 姉さん?」


鉄平の声は挑戦的だった。先程クロナに言われた、「三席の私が指揮をとる」という言葉にずっと引っかかっているのだ。


クロナはコホンと、咳払いをした。


「日が昇ると同時に、ここを動き出すわ。そして、響也さんと、カレンさんを探しに行く。四人合流した時点で、あの白陀を倒しに行くわ・・・!」


「分かりました」


「おいおい、いいのかよ。本当に・・」


いちいち揚げ足を取ってくる鉄平を、クロナはひと睨みした。


「いいのよ、別に私わ。あんたが夜に出ていって白陀に食われようが潰されようが。私と架陰は、この中に隠れて一夜を明かすつもりだから

ら」


「いや、そこじゃねぇ・・・」


「じゃあ、どこよ」


まさか、架陰と眠ることが恥ずかしなどとは言うまい。


鉄平は、真剣な顔をクロナに向けた。


「本当に、架陰と寝てもいいのか?」


「あんたは修学旅行生か?」


小学生のようなことを言う鉄平に、クロナは呆れた。


その時だ。


ズシン・・・。


ズシン・・・。


ズシン・・・。


と、遠くから地響きのようなものが聞こえることに気がついた。


「これは・・・?」


「白陀の移動する音ね」


白陀は、普通の蛇と同様に、身体を上下に波打たせて移動する。その時に腹が地面に叩きつけられ、このような音が発生するのだ。


「じゃあ、近くにいるってことですか?」


「そういうこと」


クロナがあっさりと頷くと、鉄平が鉄棍を持って立ち上がった。


「なら、さっさと倒そう!」


「あんた、馬鹿なの?」


口が酸っぱくなる程説明したはずだ。白陀の強さは今までの比にならないと。そして、この三人では勝てないと。


「白陀には、誰も勝てない。もしかしたら、五人で束になってかかったとしても・・・」


「そうなんですか・・・」


白陀には、勝てない。


さっきからずっとそんなことを言うクロナに、架陰は疑問が隠しきれなかった。


「クロナさん・・・」恐る恐る尋ねる。「どうして、そんなこと言えるんですか?」


「どうしてって・・・」


クロナは答えに詰まった。


「そりゃあ、一度遭遇しているから・・・」


「でも、戦っていないんですよね?」


架陰は、意外に切れ者だった。










「もしかして、誰かが、犠牲になったんですか?」










その瞬間、狭い洞窟の中でクロナが架陰に飛びかかり、堅い岩の上に押し倒していた。


架陰の腰の刀を一瞬で抜き去り、架陰の首筋に当てる。


「二度と言うなっ!!」


クロナの変貌、いや、動揺は異様だった。


「おい、姉さん!?」


「あなたは黙ってなさい!」


怒り狂ったクロナは、架陰の首を切り落とす勢いだった。


「二度と言うなっ!! 前に言ったでしょうが!! UMAハンターになる人に、まともな人間は居ないと!! 誰だって、探られたくない過去はあるのよ!!」











その②に続く

その②に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ