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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第32話 白陀の鱗 その②

雪原に散る

3


「これは、白陀の鱗・・・!」


「知っているんですか?」


「知っているのか? 姉さん・・・?」


「・・・、ええ」


クロナは手の中の鱗を握りしめて頷いた。


(どうして・・・!?)


鼓動が速くなる。冷や汗が頬を伝う。


力を込めすぎて、鋭利な鱗がクロナの手を傷つけた。


「クロナさん、血が・・・」


クロナの指の隙間から血が流れ落ちる。クロナは痛みを感じないほど動揺していた。


(やっぱり、ここには、お兄ちゃんを殺したUMAが潜んでいるの?)


呼吸が速くなった。


「はあ、はあ、はあ、はあ・・・」


視界が混濁する。


(嘘でしょう・・・?)


「はあ、はあ、はあ、はあ、はあ・・・!」


「クロナさん!?」


「おい、姉さん!?」


様子がおかしいクロナの肩を、架陰が叩く。


その時だ。


三人は、全身が泡立つような感覚に襲われた。


(っ!?)


「これは、殺気!?」


鉄平の野生の勘が作動して、反射的に目の前の森を見た。


木々の間を抜け、何かが近づいてくる。


枝が、折れて弾けた。


「っ!!」


「リザードマン!!」


なんと、二匹目のリザードマンが爪と牙を光らせ、三人の前に飛び出したのだ。


架陰は刀を握りしめる。


何匹来ようが、斬り捨てるまで。


「殺るぜ!」


「うんっ!!」


鉄平が鉄棍を握る。


クロナも反射的に拳銃を構える。


三人が同時にリザードマン二匹目に攻撃を仕掛けようとした、次の瞬間。


(っ!!)


(まだ、なにか来る!)


それは、山の中でひっそりとその時を待っていた。岩陰に胴体を横たえ、草むらに頭を隠す。獲物が来るのを今か今かと待ち焦がれ、胃酸の混じった唾液を滴らせる。


そして、その時が来た。


目の前に飛び込んできた獲物。


迷うことなく、岩をも砕く大顎で食らってやる。



「キジャアアアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!

シャアアアアアア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アアアア!!!!」


前方で爆発が起こった。


根っこごと木々が吹き飛ばされ、砂利が散弾銃のように降り注ぐ。


全てをその巨大な体躯でなぎ倒し、目の前のリザードマンを一口で呑み込んだ。


「リザードマンが!?」


「食われた!?」


「こいつは!」


三人の前に現れたのは、巨大な蛇だった。











ーーーーーーーーーーーーーーーーー

UMA図鑑【白陀】


ランクA

体長十メートル

体重二トン

そのなのとおり、アルビノの白蛇が突然変異で巨大化したもの。戦闘能力は不明。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


クロナは目を見開き、太陽の光に純白に輝く化け物を見た。


身体中の血液が一瞬で凍りつく。


(お兄ちゃんを、殺した・・・)


そして、反射的に叫んでいた。


「逃げるわよっ!!!!」


戦闘態勢に入っていた架陰と鉄平が振り返る。


「どうしてですか!?」


「そうだ、さっさと倒しちまった方が!!」


クロナは威嚇射撃をすることはしなかった。咄嗟の判断で、着物の袖から、【煙玉】を取り出す。


「ここでは私が上よ!!」


煙玉を地面に叩きつけた。


「煙玉!!」


ボンッ!!


一瞬で辺りが白い煙に包まれる。


「早く逃げるわよ!!」


クロナの必死の形相に、架陰は反対することも出来ず従った。架陰がクロナについていくので、鉄平もそれに続く。


三人は、白陀から逃げた。


「クロナさん、どうして逃げるんですか!?」


「無理よ!!」


クロナは金切り声をあげた。


「勝てっこないわ!!あれは化け物よ!!」


ギリッと歯ぎしりをする。


これ程、総司令官のアクアが憎たらしいと思ったことはなかった。


(読めたわ。アクアさんのやろうとしていることが・・・!!)


とにかく、今は白陀と戦うべきでは無い。あのUMAは、今まで戦ってきたもの、吸血樹よりも、バンイップよりも、リザードマンよりも強い。その全てを超越した、化け物。


(響也さんと、カレンさんと合流しないと!!)


その瞬間。


ドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッドンッッッッ!!


白煙を突き抜け、無数の鱗が三人に迫った。


「えっ!?」


三人の背中に、強い衝撃が走る。


まるで、銃で撃たれたかのような痛み。


そして、背中から血が吹き出した。


「ぐああっ!!」


(これは、白陀の能力!!)


クロナ達に、痛みでうずくまっている暇は無かった。


「走れ!!」


力を振り絞り、地面を蹴る。


走りながら、自分の背中に手を回した。やはり、何かが刺さっている。


(白陀の鱗・・・!)


「無理に引き抜かないで!! 返しが付いてるから、肉を抉られるわよ!」


架陰は「そんなこと言われても・・・」と、背中に走る痛みに耐えながら地面を蹴る。深く突き刺さった鱗が、動く度に体内で暴れて、鋭い痛みを伴うのだ。


後方から、ズシン! ズシン! と、まるで怪獣が迫ってくるような地響きがした。


クロナは逃げることしか考えていなかった。


(お兄ちゃん、お兄ちゃん、お兄ちゃん!!)


決して、復讐など、考えていなかった。


「とにかく、逃げろ!!」











その③に続く



その③に続く

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