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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第31話 架陰と鉄平Part2 その③

黒い稲妻走る雨の道


黒い翼を羽ばたかせ君が舞う

4


「ほら、傷口見せてみな」


架陰は「自分で塗れるよ」と言いながらも、着物をたくし上げ、脇腹の傷を見せた。そこに、鉄平が椿油を塗り込む。


傷口がほのかに熱を持ち、直ぐに回復を開始した。


「本当に早いね」


「これが、軟膏型の回復薬の力さ」


軟膏型の回復薬。傷の治りが早いが、摂取型のような、体力回復の力は無い。


摂取型の回復薬は、傷の治りが遅い分、体力の回復も同時に行ってくれる。


(使い分けだな・・・)


架陰は脇腹の傷が完全に塞がったのを確認した。


「でも、助かったよ。鉄平くんが来なかったら、危なかった」


鉄平は満更でもない顔をした。


「いいってことよ。架陰のためなら、俺はなんだってするぜ!!」


「うん・・・」


何故だろう。気が重い。


脇腹にも椿油をなってもらい、架陰の傷は完全に治癒した。


身体が違和感無く動くのを確かめると、「じゃあ、戻ろう」と言って立ち上がる。


鉄平が首を傾げた。


「戻るって、どこに?」


「クロナさんのところだよ」


「ああ、姉さんか・・・」


(何故そんなにガッカリした顔をする?)



架陰はクロナの待機する場所へと戻った。


「クロナさん、ただいま戻りました・・・」


「ああ、おかえり」


岩陰に寝転んでいたクロナが身体を起こす。


「随分遅かったわね」


「UMAと戦っていたので・・」


「は?」


クロナの眉間にシワが寄った。


「あんた、まさか、リザードマンと戦ったんじゃないでしょうね?」


「戦いましたよ」


架陰は当たり前の事のように頷いた。その後ろから鉄平が顔を出し、「オレがサポートしたんだぜ!!」と胸を張る。


クロナは「呼びに戻りなさいよ!!」と声を荒らげた。


「私だって戦ったのに!!」


「ですけど、クロナさん、怪我してましたし・・・」


「治ったわよ!!」


実際は治っていなかった。しかし、後輩が戦っている間に、自分は寝転んで休んでいたと思うと、恥ずかしくなったのだ。


「どれ・・・」


架陰がクロナの胸を触る。


「おいこら」


クロナは反射で架陰の頭を殴っていた。


「なに流れる動作で人の胸を触ってんのよ」


「いや、肋折れていたんで・・・」


「治ったわよ。それに、触ってわかるもんじゃないでしょう」


「大丈夫ですよ。クロナさん、胸、な」


「なんて?」


架陰が言うよりも先に、クロナの拳が、架陰の口を塞いでいた。


「誰が貧乳って?」


「誰も言ってません」


架陰の胸ぐらを掴んだクロナは、彼が持っている刀に気がついた。


「あんた、それは?」


「ああ、これですね」


架陰は授けられた新たな刀をクロナに見せた。


「名刀・赫夜。僕の新しい刀ですよ!」


「へえ」


クロナは黙って架陰から刀を受け取った。品定めするように、刃を見つめる。


(木刀の中から出てきた?)


なんの混じり気もない、白銀の刃。見たことがない刃紋だ。装飾もされていない、シンプルなデザイン。


「ちょっと使うわよ」


クロナは赫夜を中段に構え、姿勢を低くした。


「ふっ!!」


目の前にある岩に、素早く切り込む。


キイインッ!!!


劈くような音が響いた後、岩は、真っ二つに割れていた。


「凄い切れ味ね」


「いや、凄いのはクロナさんですよ」


いとも容易く岩を斬ってのけたクロナに、架陰は顔を引き攣らせた。


クロナは「このくらい当たり前よ」と言って、刀を架陰に返す。


「私の得意分野は、居合。専門武器は日本刀よ」


「へぇ・・・」


架陰も試しに赫夜を振ってみたが、岩を前に弾き返された。


ちなみに、赫夜は全く刃こぼれしていない。


(刀もすごいけど、クロナさんも異常だな)


そういえば、初めてあった時も、鬼蜘蛛の肢を一瞬で斬り裂いていた。あれも、彼女の居合の力だろう。


(いつも思うけど、なんでこれで刀を使おうと思わないんだろ?)


クロナは自分の肋が治ったことを確かめると、上を指さした。


「どうする?」


「どうするって?」


「響也さんのところに戻るかどうか?」


答えは簡単だった。


「戻りましょう」


鉄平は、「え、戻るのかよ!」と頬をふくらませた。「今日は疲れたろうが。もう少し休んでからにしようぜ!!」


「そういう訳にもいかないのよ」


クロナは鉄平を無視して、落ちてきた斜面を登ろうとした。


「早く合流しないと」


そして、十メートルほど、壁のような斜面を登ったあと、転がるようにして落ちてきた。


「何してるんですか?」


「今のなし」


クロナは舌打ちと共に起き上がった。


「まずいわね。登れなくなったわ」


架陰と鉄平は、斜面の上を見上げた。


岩も見えるが、ほぼ細かい土と木の根。80度は傾斜していると言ってもいい。


「これ、登れるんですか?」


「無理っぽい」











第32話に続く

第32話に続く

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