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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第31話 架陰と鉄平Part2 その②

逢うことも


涙に浮かぶ我が身には


死なぬ薬も


何にかわせむ

3


リザードマンの動きを見て、鉄平はあることに気がついた。


(そうか、こいつ・・・)


「一応言っておこう」


リザードマンから目をそらさず、架陰にあることを伝えた。


「このUMAは、人工UMAだ」


「人工UMA?」


その名の通りのUMAだと言うことはわかったが、どうしてそんなものがここにいるのか理解出来なかった。


鉄平はニヤリと笑う。


「お前の総司令官も、酷いことするねぇ」


「アクアさんが・・・?」


確かに、この蛇山に辿り着くまでのアクアの様子は変だった。


「特例管轄地域ってのは、半分嘘だな。ここは、SANA(未確認生物研究機関)公認の、【修行場】だ」


「修行・・・?」


「ああ、お前も見ただろ? 山を取り囲むあの高い柵を。あれは、UMAが外に逃げないようにするためのもの。つまり、この蛇山では、数多のUMAが、生け捕りにされているんだよ」


「そんなことして、何になるんですか?」


「手っ取り早くUMAと遭遇するためだよ。ランクを上げたい班が利用する手だ。この山に入れば、確実に強いUMAと遭遇できる。強いUMAを倒せば、ランクが上がるってわけだ」


話に興じる二人に、リザードマンが襲いかかる。


鉄平は「おっと!」と、身軽にその攻撃を躱した。


「そして、このリザードマンは、生物実験で作られたUMAだ!」


「実験!?」


「ああ、SANAにいるんだよ。こういうのが大好きなマッドサイエンティストが・・・」


リザードマンは標的を架陰に変え、架陰に攻撃する。


架陰は爪を受け流し、右腕を名刀赫夜で両断した。


「マッドサイエンティスト?」


「その名も、【スフィンクス・グリドール】。SANA四天王の、【多聞天】の称号を持つ男だ」


「四天王・・・?」


鉄平が発する言葉全ての意味が分からない。


鉄平は「分からなくていいさ」と言い、リザードマンの攻撃をいなし続けた。


「どうせ、俺たち下っ端のハンターには、一生会えない人だ!」


とりあえず、何か大きな力を持つ人が関わっているということはわかった。


鉄平の話が一通り終了すると、二人は本格的にリザードマンの攻略を開始した。


「頭を狙え!!」


「うんっ!!」


リザードマンは吸血樹をも凌ぐ高い再生能力を有する。ちまちまと鉄平の鉄棍でダメージを与える訳にはいかなかった。


狙うは、一撃必殺。


「オラァ!!!」


鉄平がリザードマンの攻撃を引き付け、その隙に架陰が攻撃を仕掛ける。


「名刀・赫夜!」


首を狙ったが、直前でリザードマンの尻尾が邪魔をする。


ザンッ!!!


尻尾が切断された。


「くそっ」


「それでいい、叩き込め!!」


鉄平の後押しの元、架陰は空中で身体を捻った。


(うっ、肋が痛い!!)


それに必死で耐え、新たらしく手に入れた刀を振り切る。


「やあっ!!」


ザンッ!!!


リザードマンの首から血が噴出した。


だが、リザードマンが身体を仰け反らせたおかげで攻撃が逸れ、首を落とすのに至らない。


「くっ・・・」


一瞬で再生したリザードマンの尻尾が、架陰を吹き飛ばす。


「架陰!!」


肋の痛みで受身が取れず、付近の草むらに突っ込んだ。


鉄平の気が逸れる。


「うっ!!」リザードマンの攻撃を交わしきれず、赤スーツの肩口から出血した。


「舐めんなよ!!」


鉄平は鉄棍を槍のように持ち替え、リザードマンの腹を突く。


「オラァ!!!」


普通の相手なら、胃を刺激され悶える。だが、リザードマンの堅い皮膚を前に、攻撃は内蔵に届かない。


ならば。


「架陰!」


「うんっ!!」


草むらから架陰が飛び出した。


赫夜を両手で持ち、魔影を発動させる。


「魔影・・・、弐式!!」


架陰の血液を触媒として、皮膚の表面から黒い霧が湧き上がった。


架陰のイメージで、魔影は自在に動き、形を変える。先程は、木刀の「斬れない」というイメージが先行して、リザードマンを斬るに至らなかったが、名刀赫夜の「斬れる」イメージをもってすれば。


(強力な刃になる!!)


刃に魔影が纏わりつき、漆黒の大剣と化す。


「魔影刀+赫夜!!」


架陰の接近に合わせて、鉄平がリザードマンから飛び退く。


「決めろ!! 架陰!!!」


「分かってるよ!!」


架陰は刃に極限の集中を向けた。


前回の刀、【鉄刀】を握っていた時と、明らかに感じが違う。イメージがしやすい。


もっと硬く、もっと切れ味よく。


架陰の脳裏に、全てを斬り裂く刀が浮かんだ。


(これなら・・・!!)


リザードマンが架陰を迎え撃つ。


(くらえ!!)


架陰はリザードマンの脳天に刃を振り下ろした。


ブシュッ!!


「っ!?」


刃が届く前に、リザードマンの爪が架陰の脇腹を抉る。


鋭い痛みに耐え、刃を押し込む。


「いけぇ!!」


ドンッッッッ!!!!


リザードマンの頭から股にかけて、黒い閃光が走った。衝撃波で地面が割れ、振動が辺りに木霊する。


土煙と血飛沫が舞い上がり、架陰と鉄平を包み込んだ。


「はあ・・・、はあ・・・」


右半身と左半身に両断されたリザードマンは、白目を剥き、その場に倒れる。


二度と、再生することはなかった。


「やった・・・」


架陰は安堵の息を吐いて、魔影を解除した。


黒い霧が、空気に溶け込むようにして消える。


力を抜いた瞬間。


「架陰ーーーっ!!」


架陰に鉄平が抱きついた。「おまえ、すげぇな!! Aランクを倒したぞ!!」


「あ、ありがとう・・・」


祝ってくれるのは嬉しかったが、肋が折れ、脇腹から出血している状態で抱きつかれるのは苦痛でしかない。


「そんなことより」


架陰は、やんわりと鉄平を引き剥がした。


「回復薬を持っていないかい?」


「ああ、持ってるぜ!!」


鉄平は胸ポケットから椿油の小瓶を取り出した。


「使わせておくれ・・・」


「ああ、親友の頼みだからなっ!!」


(僕達、親友だったんだ・・・)











その③に続く



その③に続く

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