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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第29話 架陰VSリザードマン その③

限りなく


燃ゆと知りせば皮衣


思いのほかに


置きて見ましを

3


(どうする?)


架陰は木刀を握りしめた。


木製の刃は、まるで蜘蛛の肢が這ったように亀裂が入っていた。


リザードマンが迫る。


「くそっ!!」


架陰は地面を蹴って躱す。


(どうする!?)


流石木刀と言うべきか・・・、手に入れて初日で壊してしまった。


少し動くだけで、ヒビが軋んだ。


架陰の武器の損失を好奇に、リザードマンが攻撃してくる。


(どうする・・・!?)


架陰は再び身を翻して躱した。だが、躱すだけでは、リザードマンを倒すことは出来ない。


いや、そもそも、木刀を握っていた時点でリザードマンの首を落とすことなど出来なかったのだ。


この戦いの敗北は、決定事項。


「くそっ!!」


架陰はリザードマンの攻撃を躱しながら、湧き上がる苛立ちを隠しきれなかった。


(どうしてこんな刀を僕に持たせたんだ!?)


木刀の柄に掘られているのは、【刀匠・二代鉄火斎】。銘は、【名刀・赫夜】。


かっこいい名に対して、刀はなまくら。


(めいとう、かぐや・・・)


「かぐや」と言えば、日本最古の物語、【竹取物語】に登場する、かぐや姫をを思い浮かべる。


今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山に紛れて竹をとりつつ、萬の事につかいけり。なおば、さぬきのみやつことなむ言いける。


(あれ、そう言えば、かぐや姫って・・・)


架陰は、高校の古典の授業で習った、あの言葉を思い出した。







もと光る竹なむ一筋ありける。








身体がザワっとした。


名刀・赫夜。


かぐや姫は、竹の中からその姿を表した。


竹の中から。


木の中から。


(まさか・・・!?)


架陰はリザードマンから距離を取ると、ひび割れた木刀の刃を見た。ヒビ割れの隙間で、何かが光る。


(木の中に、何かある!?)


驚きと困惑で、反応が遅れる架陰。リザードマンの攻撃が迫るというのに、防御動作が取れない。


「くっ!! これにかける!!」


架陰は木刀を中段に構えた。


躱せない。


ならば、迎え撃つしかない。


この、ボロボロにひび割れた木刀で。


(一撃で決めろっ!!)


いつの日か、クロナに教えてもらったことがある。


刀は横の力に弱い。


だから、対象に刃を垂直方向に当てるのだと。


そうすれば、切れ味は格段に上がる。


(もし、この中にあれが入っているなら!!)


リザードマンが鋭い爪を振り下ろした。


架陰は姿勢を低くして、リザードマンの懐に潜り込む。


(この木刀は、リザードマンを斬り裂く!!)


架陰は、低い姿勢から、ボロボロになった木刀を、リザードマンの右肩に押し当てた。


(今は昔、竹取の翁といふ者ありけり!!)


野山に紛れて竹をとりつつ、萬の事につかいけり。なおばさぬきのみやつことなむ言いける。


(もと光る竹なむ一筋ありける!!)


その名は。


「名刀・赫夜!!!!!!」


ザンッ!!!


その一撃で、木刀、いや、刃を覆っていた木の破片が砕け散った。


そして、中から、白銀の刃が姿を表す。


架陰が一振した瞬間、その刃は空間に白い閃光を走らせ、リザードマンの堅い皮膚を貫いた。


「はあっ!!!」


リザードマンの右腕が、空中に舞った。


血飛沫が降り注ぐ。 架陰の着物が赤く染まる。


だが、架陰の握る刀は、変わらず白い刀身を輝かせていた。


「これが、僕の新しい刀!!」


右腕を失い、激情するリザードマンに、刀の鋒を向けた。


「名刀・【赫夜】だ!!」


ーーーーーーーーーーーーーー


武器図鑑【名刀・赫夜(かぐや)


製作者・二代目鉄火斎


見た目はただの木刀だが、戦っているうちに、表面を覆う木が剥がれ落ちる。その時にやっと、この刀は完成する。

切れ味は極上。基本的にどんなものでも斬る事が出来る。

製作者の意向により、鍔や柄の装飾はされていない。シンプルなデザインは、【竹取物語】の和風なイメージと合っている。


ーーーーーーーーーーーーーー


リザードマンの肩から血が滴り落ち、地面の砂利の上で跳ねた。


「キシィッ!!」


リザードマンは自分の肩を斬り落とした架陰を睨む。蛋白眼は朱に充血していた。


(このまま、斬り刻む!!)


架陰が赫夜を握りしめ反撃へ転じようと踏み込んだ瞬間、リザードマンは地面を蹴って後退した。


「え!?」


逃げた訳では無い。距離をとったのだ。


そして、斬り落とされた右腕の断面に力を込める。


「キシャアッ!!!!!」


出血が止まる。


ズボッ!!


そして、断面の細胞が高速分裂をして、新たな右腕が生えた。


「右腕が生えた!?」


リザードマンは肩で息をしながら、新しく生えた腕の感触を確かめた。


(超速再生か!!)


トカゲの尻尾切り。


トカゲはピンチになると、自分の尻尾を切り落して逃げる。切り落とされた尻尾はまた生える。


トカゲ特有の、高い再生能力を有するのだ。


「くそ、厄介な戦いになりそうだ・・・」











30話に続く


架陰「これが僕の新しい刀ですよ!!」


謎の男「凄いね。素晴らしい切れ味だ」


架陰「名刀・赫夜!! これでUMAを狩りまくります!!」


謎の男「へえ、刀匠が【二代目鉄火斎】か・・・」


架陰「知っているんですか?」


謎の男「さあね。まさか彼が二代目を作っているとは思わなかったよ」


架陰「え、じゃあ、一代目と知り合いなんですか?」


謎の男「ふふ、それはまたのお話さ」


架陰「次回、30話【カレンの覚悟】」


謎の男「懐かしい名前だ。やはり運命か」

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