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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第28話 響也VSゴートマン その③

死神は生きていた頃を夢見る

3


今まで、死神と称され、数多のUMAの命を葬り去って来た響也の脳裏に、「死」の一文字が浮かんだ。


「こいつ、強い!!」


地面に斧を叩きつけたゴートマンは、舞い散る砂塵の中、素早く刃を切り上げる。


「!?」


ギンッ!!


死角から飛んできた攻撃を、響也は本能で防いだ。


(なんて強力な斧捌きだ!)


だが、響也だって負けていられない。


「殺してやる!!」


こちらの太刀筋を読んでくる斧を怖がっていては、あの山羊の首に刃は当てられない。


響也は、砂煙を突っ切り、ゴートマンに襲いかかった。


ぶつかり合う、二つの刃。


The Scytheと、ゴートマンの斧。


ギンッ!! ギンッ!!ギンッ!!


金属音と火花が立て続けに散った。


「くっ!!」


だが、一枚上手なのはゴートマン。


刃を合わせる度に、響也の頬や肩、腕、腹、脚に赤い線が走り、血が吹き出した。


「響也!!」


カレンが竜巻を放って援護するが、ゴートマンの巨体はビクともしない。


そして、ついに。


ギンッ!!


「しまった!!」


「響也の武器がっ!?」


ゴートマンがかち上げた斬撃により、響也の手からThe Scytheがすっぽ抜け、空中に打ち上がった。


「この野郎っ!!」


距離を取ろうとした響也の足首をゴートマンが掴む。


(捕まった!!)


そして、思い切り響也を壁に叩きつけた。


「ぐあああ!!」


響也の腰から背筋にかけて、痺れるような痛みが走る。


ゴートマンは響也の足首を握る力を強めた。


「響也!!」


カレンが翼々風魔扇で竜巻の槍を発射したが、ゴートマンは一瞬のうちに跳躍して、カレンの攻撃の射程距離から抜けた。


そして、響也を右、左、右、左、右、左と、地面に叩きつけていく。


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


響也は抵抗することが出来ず、まるでボロ雑巾のようにゴートマンに振り回された。


衝撃で、肋骨が五本折れる。肺に突き刺さり、喉元に血の味が込み上げた。股関節が外れ、右脚が数センチ伸びた。


「あああああああああっ!!!」


激痛が脳天を突き抜けた。


(まずい・・・)


意識が遠のく。このくらいの怪我、回復薬があれば直ぐに回復した。


だが、桜餅を摂取する前に死んでしまったら意味が無い。


(意識を、保て・・・)


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


ドンッ!!!


「あああああああああっッ!!!!」


ゴートマンは容赦しない。斧で簡単に首を落とさず、叩きつけるという攻撃だけで、響也をいたぶり続けた。


響也のThe Scytheを握ったカレンが、ゴートマンに襲いかかる。


その目は獣のようにギラリと光り、殺気を放っていた。


「響也を殺したらっ! 私があなたを殺すわよッッッ!!!」


ギンッ!!


振り下ろした刃は、虚しくゴートマンの斧に受け止められた。


「くっ!」


やはり太刀筋が読まれている。


カレンに意識が集中したせいで、響也を振り回す手が止まった。


ゴートマンは斧を振り切り、カレンをThe Scytheごと吹き飛ばした。


「きゃぁっ!!!」


そして、再び響也を地面に叩きつけようとした。


その瞬間。


「オラァッ!!!!」


響也が力を振り絞り、腹筋の反動で起き上がる。


そして、唯一自由な左脚で、ゴートマンの山羊の頭を蹴りつけた。


「六の技!!」


全神経と力を、左脚の筋繊維に集中させる。


「死神刈り!!!!」


ボンッ!!!


鈍い音が響ぎ、ゴートマンの首が直角に折れ曲がった。山羊の口から、赤黒い血が噴出する。


死神刈りは、響也の最強の技。


強力な脚力で、身体ごと発射し、強烈な斬撃を放つ。


その時に使う脚力を、ゴートマンの首を折ることに利用したのだ。


(やったか・・・?)


勢いそのまま、ゴートマンの拘束から抜け出した。


ドチャッと、血なまぐさい音を立てて地面に倒れ込む。


(くそ、動けん・・・)


無理矢理抜け出したせいで、右足首は握り潰され、ぐちゃぐちゃに変形していた。


左脚は、死神刈りの反動で肉離れを起こしている。


肋骨が肺に刺さっているので、息が出来ない。ヒューヒューと掠れた音が常に漏れている。


「ど、う、だ・・・?」


首を擡げて見ると、ゴートマンは動きを止めていた。


さすがに、首を折られて死んだらしい。


そのまま、グラりとバランスを崩し、崖の下へと落下していった。


「やったのか・・・」


響也は壁側に寄ると、外れた右股関節を下にして体重をかけた。


ゴキリと音がして、骨が元の位置に戻る。


痛すぎて、痛くなかった。


(まずい、アドレナリンが出てる・・・)


痛覚が鈍くなっていることが明瞭に感じられた。


「響也・・・」


死にかけている響也に、カレンが駆け寄った。


すぐ様、ナップサックから取り出した桜餅を響也の口に運んだ。


「ごめんなさい。私、役に立てなかったわ・・・」


「気にするな・・・、あの言葉、嬉しかったぞ・・・」


響也を殺したら、私があなたを殺すわよ。


普段温厚なカレンが放った激昂の言葉だった。


響也は桜餅を一口齧り、飲み込んだ。


(私の傷が治るのが先か、命が消えるのが先か・・・)


カレンは響也をそっと抱き寄せた。


「死なないでね」


「何を縁起でもない・・・」


カレンの声は震えていた。今に、その目から涙が零れんとしている。


「あなたに死なれたら、私は生きていけないわ」


「勝手に殺すな」


「だって、私たち、一緒に生きていくって決めたじゃない・・・」


(そうだよな・・・)


響也は痛みに耐えながら、昔のことを思い出していた。


走馬灯で過去が蘇るなんて、皮肉なものだ。


(私は、あの日、お前を・・・)










番外編【鈴白響也外伝】に続く

番外編【鈴白響也外伝】に続く

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