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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第27話 消えない残像 その③

山羊は狼の頭を喰らう

4


(どうして、お兄ちゃんの名前が・・・?)


歩き疲れ、小道に腰掛け休んでいる間も、クロナの気は休まらなかった。


あの道中にあった看板。


大量に印刷された「名前」。


その中にある、【雨宮黒真】。


(どういうことよ・・・)


ナップサックから固形食料を取り出し、一口齧る。元から美味しいものではないが、全く味を感じなかった。


(まさか、アクアさん・・・)


見たところ、あの看板は、立てられて間もない様子だった。苔もついていないし、劣化している様子もない。


何者かが、つい最近に立てたものとしか考えられなかった。


(あの刀のことを・・・)


脳裏に、二人の顔がチラつく。


一人は、桜班総司令官の、アクア。


そして、もう一人は、クロナの兄の顔。


思い出すのは、架陰が初めて桜班本拠地にやってきて、アクアと戦闘した時だ。


クロナは、自分の得意分野である刀を架陰に渡したアクアが気に入らなかった。


刀装備が二人いれば、陣形が崩れる。


そう述べたクロナを、アクアはあの言葉で一蹴した。


「もう一本あるじゃない」


もう一本。


「あの刀なら、近接にも、狙撃にも対応できる・・・」


(嫌だ・・・)


クロナは心の中で首を激しく振った。


あの刀だけは、使いたくなかった。


(お兄ちゃんの、あの刀だけは・・・)


クロナは強く歯ぎしりをする。アクアへの恨みが高まった。


まるで、胸の中に手を突っ込み、自分の弱みを根こそぎ抉り出されたような気分だ。つまり、不愉快と恐怖が入り交じった感情だった。


(なんで、こんなことするのよ・・・)


クロナが憎しみを込めて、固形食を噛み砕いた、その時だった。


「!?」


「これはっ!?」


四人の背中に、寒気が走った。


反射的に振り返る。


眼前に憚る傾斜の壁の向こうから、何かが近づいてくるのがわかったのだ。


草木をかけ分け、地面を粉砕させて跳躍する。


山に立ち入った不届き者に天誅を下さんと、その殺気と牙を研ぎ澄まして、化け物の襲撃が、四人の目の前に迫った。


「UMAだ!!!」


急勾配の斜面を下って現れたのは、異形の生物。


山羊の頭に、男のようなたくましい上体、そして、山羊の下半身。まるでキメラのような形をしていた。


名付けるならば。


「ゴートマン(山羊男)!!」


UMA図鑑【ゴートマン】

ランクA

体長2m

体重135キロ


頭は山羊の頭。体は成人男性の胴体。そして、下半身は、山羊の肢という、異形な存在。

何故か斧を装備しており、その太刀筋は一流の武人でも敵わないほど。


体躯二メートルはあろうゴートマンは、右手に持っていた、両手斧を横に薙いだ。


「!?」


ギイイインッ!!


響也のThe Scytheが受け止める。


「くそ、重い!!」


地面が柔らかいせいで、踏ん張りが効かない。響也の足が数センチ下がった。


「響也!」


カレンがすぐさま翼々風魔扇を振った。


「風神之槍!」


竜巻の槍が発生し、響也を追い詰めてるゴートマンに直撃する。


強烈な風圧と貫通力で、ゴートマンは吹き飛んだ。


木の根が張り巡らされた壁に衝突する。


「ナイスだ、カレンっ!」


斧の圧から解放された響也は、The Scytheを握り、ゴートマンに襲いかかった。


「終わりだよ!!」


だが、ゴートマンは直ぐに体勢を立て直し、響也の刃をいなした。


(!?)


さらに、切り返した斧で、響也の頬を切り裂く。


赤い血液が飛び散り、ゴートマンの白い羽毛を染める。


「っ!!」


「響也さんっ!」


架陰が腰の木刀を抜いて、援護に回った。


「やめろ架陰!!」


響也の斬撃を受け流す見切り。


切れ味の良い刃物。


響也は一瞬で悟った。


(架陰はこいつに敵わない!!)


ゴートマンの人間のような手が、なめらかに斧を振り回す。


約二メートルの両手斧が蛇のような動きを見せ、死角から架陰の首を狙った。


「えっ!?」


架陰は反応が出来ない。


直ぐにクロナが銃の引き金を引いた。


「w-Bullet!!」


山の静寂な空気を、硝煙と炸裂音が切り裂く。


鉄の弾丸が、ゴートマンの斧の軌道を逸らした。


「クロナさん!?」


「ボケッとするな!!」


クロナの狙撃で作り出したこの隙に、響也が身を反転させ、The Scytheの棍の部分でゴートマンを抑え込む。


「行け、カレンっ!!」


ゴートマンの動きを封じている響也は、The Scytheを振ることが出来ない。


トドメは、カレンが引き受けた。


「行くわよぉ!!」


翼々風魔扇で発生させた竜巻で槍を作り出す。ゴートマンの首を落とすために、さらに回転力を上げ、細く引き絞る。


「風神のっ!!」


それを放とうとした瞬間。


「キャアッ!!」


クロナの叫び声が響いた。


「えっ!?」


ゴートマンの方に向いていた三人の視界の隅に、ゴートマンとは別の影が飛び込んできた。


赤と緑の絵の具を混ぜ合わせたような体表に、硬質な鱗。ティラノサウルスを彷彿させる厳つい頭。太く強烈な尻尾。三本の爪。


二足歩行のトカゲが、クロナの目の前に立ち塞がっていたのだ。


(こいつはっ、【リザードマン】!?)


「UMA、二匹目っ!?」


次の瞬間、リザードマンは、筋肉の詰まった尻尾を畝らせ、クロナの横腹を殴った。


「がはっ!」


「クロナさん!!」


そして、クロナの体がぐらりと崩れる。そのまま、崖の下へと落ちて行ってしまった。


「クロナ!!」










第28話に続く

UMA図鑑【ゴートマン】

ランクA

体長2m

体重135キロ


頭は山羊の頭。体は成人男性の胴体。そして、下半身は、山羊の肢という、異形な存在。

何故か斧を装備しており、その太刀筋は一流の武人でも敵わないほど。

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