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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第27話 消えない残像 その①

頬に差し込む


黒い影


纏いて歩む


修羅の道


「さて、着いたわよ」


約40分ぶりにキャンピングカーが停車した。


「ああ、疲れた」


運転席でアクアが伸びをする。アメリカでは車線が違うので、日本の車を運転する時は神経をすり減らすのだ。


「みんな、出ていいわよ」


アクアの合図で、桜班の子供たちは、外に出た。響也、カレン、架陰、クロナの順に砂利の地面を踏みしめていく。


「ここはどこだ?」


「蛇山よ」


そんなことはわかっている。


架陰は太陽の眩しさに目を細めながらも、辺りを見回した。


目の前に、雄大な山が聳えていた。


(高いな・・・)


標高は300メートル程だろうか。いや、振り向けば街が小さく見える。もっとありそうだ。


ローペンと戦った時の山はもっと低かった気がする。


アクアは架陰が見上げている山を指さした。


「今回、あなた達に狩ってもらうUMAの目撃情報があったのは、この山よ・・・」


「ま、そうだろうな・・・」


行動が早い響也は、もうThe Scytheを握り、山の中に入っていく準備をしていた。


「さっさと入ろう。私がカフェイン不足になるまでに・・・」


「あら、心配しなくていいわよ」


アクアはニヤリと笑うと、キャンピングカーの助手席の扉を開けた。四人分のナップサックを取り出し、砂利の上に置いた。


「これは?」


「もちろん、サバイバルセットよ。今回は長い戦いになりそうだからね。二日分の食料が入っているわ」


架陰は自分の名前が書かれたナップサックを手に取ると、中身を確認した。


「固形食にミネラルウォーター、包帯に、あ、桜餅も入っていますね。あとは、ライターに・・・」


各々、自分の名前が書かれたものを取っていく。


響也のナップサックには、エナジードリンクが入っていた。


「舐めてもらっちゃ困りますね。たった二本で足りると思うんですか?」


「二日分と言ったはずよ。エナジードリンクは一日一本まで」


「これじゃ一時間も持たないな・・・」


響也は諦めのため息をついた。いずれにせよ、早くしなければならないことには変わりがない。


クロナは、アクアの用意周到な行動に疑問を抱いた。


(なんで、『長い戦いになる』ことを予期していたの?)


それに、疑問なことは他にもあった。この山、何かがおかしい。


見れば鉄柵で囲まれているではないか・・・。野生動物が外に出るのを防いでいるかもしれないが、かなり高い鉄柵。五メートルはあるだろう。


(まるで、UMAを閉じ込めているみたい・・・)


架陰が手を挙げた。


「あの、今回狙うUMAの特徴は、どんなものなんですか?」


「それが、分からないのよ」


「分からない?」


「ええ、付近の住民から、色々な情報が寄せられるの。『斧を持った大男』だったり、『巨大なトカゲ』だったり・・・、もしかしたら、UMAは一匹だけじゃないかもしれないから、気をつけてね」


「わかりました」


とにかく、あの山の中に入ってみないと、UMAの正体は分からないということが分かった。


架陰は腰に、あの木刀を差し、ナップサックを背負う。周りも見れば、先輩の三人はもう準備を完了していた。


響也がThe Scytheを砂利の地面に突き立てる。


「じゃあ、行くか」


「はい」


アクア「あそこから中に入れるわよ」と言って、山を取り囲む鉄柵を指さした。確かに、あそこの部分だけが開閉式になっている。


四人はその鉄扉を体が通るくらい開けて、山の中に足を踏み入れた。


「じゃあ、私はここで待っているから。頑張ってね」


当たり前のことだが、アクアは鉄柵を隔てて手を振る。


「行ってきます・・・」


四人は総司令官の見送りに一礼して、山の奥へと歩みを進め始めた。


(なんか、嫌な気分だ)


架陰は本能でこの山の中に漂う異様な雰囲気を感じ取った。それは、架陰だけでなく響也やカレン、クロナも同じだった。


特例管轄地域が存在するということは、UMAハンターになった時から、頭の片隅には入れていた。だが、これまでにそんなところでUMAハントなんかしたことが無い。


この場所の存在など、もはや伝説の扱いになっていたのだ。


心做しか、気温が低い気がする。湿気が肌に張り付いて来るようだ。


「どうやって、UMAを探しますか?」


無言があまりにも違和感だったので、架陰は口を開いていた。


「そうだな・・・」と響也が反応する。「とりあえず、痕跡を探そう・・・」


「痕跡ですか」


アクアの情報によると、UMAはかなりの大きさになるらしい。ならば、糞尿や餌などの痕跡も目立つところにあるだろう。


「にしても、歩きにくいですね・・・」


架陰は木刀を山の斜面に突き立てながら登った。響也も、The Scytheの刃をスパイクのようにして身体を支えている。


クロナとカレンは登るのに一苦労だ。


「あなた達、いいもの持っているわねぇ」


「ああ、長物がここで役に立つとはな・・・」


しばらく緩やかな斜面を登り、後方の鉄柵が見えなくなる頃、四人は削られて出来た小道に出た。


「ここ、明らかに人の手で整備されていますね・・・」


「ああ・・・」


アスファルトのような舗装はされていないが、斜面が削られ、土が踏み固められている。格段に歩くのが楽な道だ。


「獣道でしょうか?」


「いや、違うな」


響也は辺りを見回して断言した。


「雑草までもが刈り取られている。ここは人の手入れが入っている場所だな・・・」


なんにしてもありがたかった。


「ここを歩きましょう。私、疲れたわぁ」


翼々風魔扇では身体を支えられないカレンは、這いつくばるように登ってきたのだ。体力の消費は多かった。


四人はこの人二人が並んでギリギリくらいの小道を歩くことにした。












四人が蛇山に入るのを見届けたアクアは、小さく「ごめんなさいね」と呟いた。


「特に、クロナ。あなたには、見たくない現実を・・・、思い出したくない真実を、見ることになるわ・・・」










その②に続く

その②に続く

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