第24話 架陰と鉄平 その②
交錯する
二つの流星
衝突する
二つの太陽
2
「てめぇ、邪魔すんな!!」
「それはこっちのセリフですよ!」
いがみ合いながら戦う二人。
温厚な架陰さえも鉄平のペースに乗せられ、冷静さをかいていた。
一応、「バンイップを倒す」と言う目的意識はハッキリしているので直接的な殴り合いにはならないが、とにかく見ていられないものだった。
架陰の揚げ足を鉄平が取り、架陰もムキになってしまう。
せっかくバンイップの隙を突いても、それを無駄にしてしまう展開だ。
「ったく・・・、何してんだよ・・・」
二人の様子を見ていた響也は舌打ちを一つ。そして、The Scytheを握りしめると、電柱の上から飛び降りた。
「見てられん!」
静かにコンクリートを蹴り出すと、架陰が相手をしているバンイップBに接近する。
「死踏・・・、一の技・・・」
上体を捻り、勢いを付ける。
「命刈り!!!」
回転の力で威力を上げた斬撃が、バンイップの頭を斬り裂こうとした。
だが。
「コノヤロウ!!」
とにかく、邪魔をするものは気に入らない鉄平。響也の接近を感じると、鉄棍で防いでいた。
「!!」
ギンッ!!!!
鉄と鉄がぶつかり合い、火花か弾けた。
「これはオレの獲物だ!!」
「こいつ・・・、どこまで馬鹿なんだ!!!」
さすが班長。腕力は本物だ。
(受け切られた・・・)
「オレの邪魔はさせねぇ!!」
鉄平はバンイップから標的を響也に切り替えると、鉄棍を連続して振った。
「オラオラオラオラオラオラ!!」
「くっ!」
響也はThe Scytheを上手く振り回しながら攻撃をいなしていく。
好都合だ。このまま邪魔な鉄平に揚げ足を取られるよりも、引き付けた方がいい。
「架陰!! あとは任せた!!」
響也は先にこの馬鹿男を倒すことを決断する。
「分かりました!」
架陰は左手で魔影刀を握ると、バンイップBに一人で立ち向かった。
響也と鉄平は、刃を交じわせ続ける。
「こいつ! 強い!!」
「ハッハ!! そりゃそうだろ!! オレサマを誰と心得る!!」
響也がThe Scytheを横薙する。
鉄平は鉄棍で防ぎつつ、真上に跳躍した。
「喰らえ!!」
上空で、身体を捻り、勢いをつけてから振り下ろす。
「雷刈り!!!」
「!?」
まるで、雷撃のような高出力の攻撃を、The Scytheの棍の部分で受け止める響也。
だが、勢いを殺しきれず、後ろに吹き飛んだ。
(こいつ!?)
響也はバックステップを踏んで勢いを後ろに長す。
まだ攻撃を受けた手が痺れている。
「いや、それよりも・・・」
響也は黒い前髪の隙間から鉄平を見た。
「こいつ・・・、死踏を使っただと・・・!?」
間違いない。
少し精度に荒さが見られたが、あれは間違いなく響也の編み出した殺陣歩法・・・、【死踏】だった。
三の技・・・、【雷刈り】。
(どういうことだ・・・?)
自分が編み出した技だ。誰からも教わっていないし、教えてもいない。
響也はThe Scytheを構え直した。
今は、バンイップよりも、この男に興味が出た。
「もう一度行くぞ・・・」
「おら、来いやあっ!!」
「来い」と言いながら、鉄平が襲いかかってくる。
響也は鉄平の鉄棍を受け流すと、音もなく上空に跳躍した。
「何!?」
「本物を見せてやる・・・」
死踏は、The Scytheの両端から伸びる鎌状の刃の遠心力を利用することで、その真価を発揮するのだ。
身体を軸に。
刃を回転に。
「雷刈り!!」
雷のごとき斬撃が、上空から落ちる。
「くっ!」
鉄平は鉄棍で受け止めたが、The Scytheはそれを斬り裂いた。
まるで豆腐のように真っ二つになる鉄棍。
響也の猛攻は止まらない。
「まだだ・・・」
低い姿勢から二撃目。
「二の技・・・、【旋刈り】!!」
流麗な斬撃が放たれ、鉄平の右肩と左脚を斬り裂いた。
「うっ!!」
武器を失った鉄平に為す術は無い。
血を噴出させて、その場に倒れ込んだ。
(まだだ・・・)
まだ終わっていない。
響也は、直ぐに架陰が戦っているバンイップBに襲いかかった。
「死の技・・・、【首刈り】」
一瞬で、架陰とバンイップの間に割って入り、The Scytheを振り切る。
響也の武器の最大の利点は、その形状にある。
鎌状の刃が上手く首に引っかかり、ギロチンの如く切断するのだ。
「終わりだ・・・」
ストンっと、バンイップBの首が胴体から切り離された。
「殺れ!! カレン!!!」
バンイップBを倒しただけでは終わらない。バンイップAが生きている限り、蘇る可能性だってあるのだ。
「了解よぉ!」
カレンはバンイップAと戦いながら頷いた。
翼々風魔扇で竜巻の槍を作り出し、バンイップAに目掛けて発射する。
「風神之槍!!」
猛進してきたバンイップAの顔面に直撃。
視界を奪われたバンイップは、大きく頭をふって暴れた。
「さて、お願いねぇ」
「分かりました・・・」
山田がバンイップの頭を掴む。
肝心なのはタイミング。
バンイップが水化するよりも先に、バンイップの命を捩じ切る。
「死になさい!」
ブチンッ!!
痛々しく、鈍い音が響いた。
頭を失った胴体は、フラフラと千鳥足になったあと、アスファルトの上に倒れ込んだ。
「・・・、やりましたね・・・」
ドロドロと断面から血液が流れ出し、路地が鮮血に染め上げられてゆく。
「バンイップ討伐、成功です・・・」
その③に続く
その③に続く




