表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
57/530

第22話 二匹いた!! その③

ひとつ話しをしよう

僕が君を抱きしめたら

君は僕の心臓を刺してくれ


ひとつお願いがある

僕が死んだなら

君は僕を土に埋めてくれ

4


「ここから約一キロ先・・・、○○地区の〇〇丁目の住宅地に生体反応を確認しました!」


バンイップの逃げた場所を見つけ出した平泉だったが、何故か、苦虫を噛み潰したような顔をした。


「椿班がいますね。これはめんどくさいですね」


「知っているんですか? 椿班のことを」


架陰の質問に、平泉は大袈裟に身震いをした。


「もちろん。同業者の中じゃ有名・・・というか、迷惑な班です」


「迷惑な班?」


架陰は先程一戦を交えた鉄平の顔を思い出していた。確かに、ガラが悪い印象しかない。


「ただガラが悪いだけじゃないんですよ。奴らの武器って、打撃系統が多いので、UMAの死体が研究施設に運ばれてくる時にはぐちゃぐちゃに潰れていたりするんですよ」


管轄が違うというのに、平泉はさも自分がやられたかのように言った。


「そうですか・・・」


話だけでも、彼らが問題児の集まりだということが明瞭に伝わってくる。


架陰はふと思い出したように言った。


「平泉さんが特定した場所の近くに椿班がいるってことは、そこは椿班の管轄ですか?」


管轄が違うと言うのなら、彼らに任せてもいいのではないか。と思ったからだ。


平泉は首を横に振った。


「残念ながら、彼らは桜班の管轄に侵入しています。血眼になって何かを探していますよ。多分、彼らも椿班の管轄のUMAを取り逃したんでしょうね」


すると、黙って聞いていた響也がThe Scytheを握りしめ、肩に掛けた。


ニヤリと笑う。


「こちら側の管轄に入ってきているのなら話は早い。ここで私たちに返り討ちにあおうが、それは奴らの責任」


「え、それってまさか・・・」


「行くぞ。奴らと喧嘩しに行く!」


言い終わる前に、響也は地面を蹴って、民家の屋根の上に降り立っていた。次の瞬間には、屋根瓦を「カツンッ!!」と鳴らし、響也はその方面へ駆け出す。


「え、響也さん!?」


いきなり動き出した響也に、架陰は出遅れる。もちろんカレンも。


「響也ったら・・・、なんだかんだ、クロナがやられたのが許せないのねぇ・・・」


カレンは背負っていたクロナを平泉に預けると、響也の後を追って駆け出した。


「え、ええ?」


架陰が取り残される。


平泉は架陰を見て笑った。


「大丈夫ですよ。言ってきてください。クロナさんは僕が見守っているので・・・」


「分かりました・・・」


肝心のバンイップとの戦闘は!? と言ってやりたかったが、仕方がない。どうせ、バンイップが潜んでいる場所の近くを椿班がうろついているのだろう。


「待ってくださいよ!!」


架陰も二人を追いかけ始めた。









5


「コノヤロウ! どこだあ!!」


鉄平は辺り一帯に怒鳴り散らしながら走っていた。


逃げたUMAは一向に見つからない。


その後を続く八坂は、気が気でなかった。


八坂は横目で電柱を見た。住所が、〇〇地区となっている。


「鉄平さん・・・、ここは桜班の管轄ですよ?」


「うるせぇ、俺の中を傷つけた奴は、管轄なんて超えて殺してやる!!」


と言っても、あの獣がここに逃げ込んでいるという保証も無いのだ。


心配する八坂の横に山田が並んだ。そして、ポンっと肩を叩く。


「安心しなさい。八坂。班長の【勘】の鋭さが誰よりも優れていることを知っているでしょう?」


「まあ、そうですけど・・・」


鉄平の【能力】と呼んでもいい力。それは、【野生の勘】だ。幼少期から喧嘩で鍛えた精神の強さや、仲間思いの強さ。それは、まるで群れをなすライオンのようでもあった。


実際に、八坂と真子が廃ビルにいた時、助けに来た鉄平は、ほぼ勘で二人の居場所を当てていた。もちろん、救助要請をした八坂のGPSを追跡する方法もあった。


鉄平は、「この近くにいるはず!」という勘のもと、桜班の管轄へと突き進んでいるのだ。


「信じますよ・・・」


「ええ、信じましょう。我らが班長を」


その時だった。



ボンッ!!と、走っていた路地の横の家の壁が爆発した。


「えっ!?」


「ほら当たりだ!!」


粉々に砕けた木の破片が辺りに降り注ぐ。


ぽっかりと穴が空いた壁から、黒い影が飛び出した。


「あの獣だ!!」


実体のある姿。


「全員、戦闘準備!!」


直ぐに発せられた鉄平の掛け声に、三人は後退して、戦闘態勢を整えた。


前線は鉄平と山田。


後方狙撃は、八坂の担当になる。


「グルルルルル・・・」


鉄平の前に、巨大な獣が降り立った。白い牙を剥き出しにして、低く唸る。辺りの気温が二度下がった。


「よし、行くぜ!!」


鉄平は鉄棍を構えた。


山田も、スーツの内ポケットから手甲を取り出して装備する。


「頭、ねじ切って差し上げましょう」


八坂もライフルに弾を装填するのだが、何か違和感を感じで、動きが鈍くなる。


(何だ・・・、この感じ・・・?)


三人の前に立ち塞がるのは、あの水と実体に変化する獣だ。


この獣に、八坂も真子も苦戦した。


だけど、何かが違う。


「まさか・・・!?」


ある違いに気がついた八坂は、直ぐに叫んでいた。


「こいつじゃない!!」


「えっ?」


「こいつは、さっきの獣と違う!!」


これが、八坂の野生の勘だった。


体長、唸り声、色。全てが、微妙に違う。


このUMAは、さっき戦ったものとは別のUMA。


つまり。


「二匹います!! この近くに、まだもう一匹がいる!!」












第23話に続く



平泉「僕の能力は、【眼力】。透視も簡単、望遠も可能さ!!」


架陰「へー、てことは、バンイップを見つけた時は、どう見えたんですか?」


平泉「もちろん、密集する住宅の数々を透明にしていき、そして、水道管に的を絞って探したのさ。そうしたら、不自然に動く水を見つけたわけ!!」


架陰「凄いですねー。てことは、僕の着物も透けているんですか?」


平泉「・・・・・・」


架陰「透けているんですね」


平泉「悪用したことはないよ・・・」


架陰「あるんですね」


平泉「無い無い。別に、響也さんのお召し物が黒色だとか、カレンさんのお召し物が赤色だとか!! そんなことはしてない!!」


架陰「詳しく話を聞かせてください」


平泉「次回、第23話【混戦!!】」


架陰「く、クロナさんは!?」


平泉「ふふふ・・・」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ