表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
530/530

名刀・秋穂編 閉幕

それでも


僕たちは秋を求める


場面は移り変わる。


風鬼と一戦を交えた後、ヘリコプターによって撤退した『スフィンクス・グリドール』は、その後部座席にて、窓ガラスの外を眺めていた。


隣には、仮面を被った女が座っている。


女は仮面越しにスフィンクス・グリドールに聞いた。


「…どうして、戻ってきたのですか? もうすこしで、市原架陰を捕獲することができたのでしょう?」


「まあ、そうだね」


スフィンクス・グリドールは不機嫌そうに頷いた。


「少しだけ誤算が入った」


「誤算?」


「ああ、宝来風鬼が現れた」


仮面の女が息を呑むのがわかった。


「宝来風鬼って…、あの?」


「うん。かつて、アメリカの起こった【黙示禄の再臨】を沈め、そして、伝説となった男…のことだよ」


「貴方でも、倒すことができないのですか?」


「いいや」


スフィンクス・グリドールは窓の外を眺めたまま、にやっと笑った。


「まさかね。彼は、主戦力だった【悪魔の力】を失い、弱体化しているんだ。あの時、僕と彼が戦ったところで、勝ったのは僕だろうね」


「じゃあ…」


「だけど、戦うべきじゃなかった」


「え?」


仮面の女が声を上ずらせるのを横目に、スフィンクス・グリドールは顎に手をやって、含み笑いをした。


「なるほどね…、今まで海外にいた彼が、日本に戻ってきたか…。昨今の、悪魔の堕彗児の活動といい…、市原架陰の急速な成長といい…、うん、何かが起ころうとしているんだろうな」


「何かって…」


「きっと、面白いことだろうよ」


スフィンクス・グリドールは目を閉じ、窓にもたれかかった。


「宝来風鬼…、何を企んでいるのか知らないけれど…、君が守ろうとするもの、君が戦っているもの、全部僕のものにしてやるよ…」


スフィンクス・グリドールを乗せたヘリコプターは、ゆっくりと上空を滑空していった。










場面はまた移り変わる。


薄暗い部屋の中、木組みの椅子の上に、誰かが座っていた。


黒く重厚な扉が開き、黒布を纏った小柄な男が入ってきた。


男は、椅子に座っている人影に向かって、恭しく一礼した。


「王よ…」


「…ドウシタンダイ…?」


しわがれた声が返ってきた。


「王よ。宝来風鬼が、海外から日本に帰ってきました。スフィンクス・グリドールと交戦した模様です」


「ソウカイ…」


人影は笑みを含んだ声でうなづいた。



「ソレデ…?」


「はい、隠密隊によると、軽く能力の打ち合いをした後…、別れたとのこと」


「アア…、成程ネ…」


黒い影が、黒い天井を仰ぐ。


「ソロソロダネ…」


「そうですね」


黒布を纏った男は深く頷いた。



「もうすぐで…、市原架陰の【悪魔】の力が手に入る」


そういって、男は纏っていた黒布を取り去った。


現れたのは、細身ながら、筋肉粒々の身体。面長で、目元は獣のように光っていた。



「ここは、しばらく様子を見ましょう。スフィンクス・グリドールの存在が、市原架陰の強さに影響する可能性は十分、いや、必然だ」


男は下唇を舐めた。





「最後にすべてを手に入れるのは、我々、【悪魔の堕彗児】だ…」






名刀・秋穂編 閉幕





次回より、【決戦・四天王編】開幕



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ