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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第21話 刀を砕く牙 その②

僕の心は【剣】だと


触れれば傷がつくのだと


言えるのだとしたら


なんと悲しいことだろう

2


「カレン、一度竜巻を解け!!」


「了解!」


カレンは扇を振るのを辞めた。


バンイップを取り囲んでいた竜巻が弱まり、消える。


直ぐに、飛散していたバンイップを構成する水が集結し、水状態の獣の姿に変化した。


「外だ!!」


響也は足元のテーブルを蹴って跳ぶ。


パリンッ!!と窓ガラスが割れ、床の上に飛散した。


カレンも響也に続いて外に飛び出す。


「響也・・・、後で弁償しないとぉ・・・」


「中じゃ戦いににくいだろ・・・」


次の瞬間、二人が出てきた民家の壁が爆発し、バンイップが飛び出してきた。


貫通力を得るため、実体の姿に変化している。


「来たぞ!!」


民家が密集する路地の上に降り立った響也は、The Scytheを強く握りしめた。


「死踏・・・、一の技・・・」


真っ直ぐに響也とカレン目掛けて突進してくるバンイップ。


「命刈り!!」


響也の捻りの反動で、白銀に光る斬撃が弧を描く。


バンイップの額に、赤い線が走った。


「!?」


赤い血液が飛び散る。


だが、響也は「くっ!」と歯軋りをした。


「こいつ、堅い!!」


バンイップに手傷を負わせることができたものの、手にビリビリとした反動が残った。


斬れたのは、バンイップの表面・・・、薄皮一枚だ。


(頭を、割り切れなかった!!)


「カレン!!」


「わかってるわぁ!!」


カレンが翼々風魔扇を扇ぎ、すかさず援護に回った。


「風神之槍!!」


極細の竜巻の槍が発生し、バンイップの血走った右眼を穿った。


「グオオオオオ!!」とバンイップが苦痛の咆哮を上げる。


「目を潰したわぁ!!」


「よくやった!!」


響也はその間隙を縫ってバンイップに接近すると、再び、The Scytheを振り下ろした。


「命刈り!!」


刃がバンイップの頭を斬り裂く寸前で、バンイップが水に変化する。


「!?」


ドブンッ!!と、The Scytheの湾曲した刃は、柔らかい水を斬り裂いた。


そした、バシャッ!!と、まるでスライムのようにアスファルトの上に広がり、逃亡を開始する。


「逃げる!」


「逃がさないわぁ!!」


カレンが追撃の竜巻を放ったが、地面に広がる水を打ち砕いても、直ぐに元に戻る。


仕方なく、響也とカレンは、追跡することにした。


「追うぞ・・・」


「了解!!」


バンイップは、ザワザワと地面の上を這う。右に曲がり、左に曲がる。自動車に撥ねられても、元に戻る。


無敵の形態だった。


響也とカレンは必死に地面を蹴って追うが、少しずつ、少しずつ離されていく。


「くそっ!! 逃げ足は速いなっ!!」


「追いつけないわぁ!」


すると、前方から見覚えのある少年が走ってくるのに気がついた。


「架陰!!」


架陰もまた、前方から走ってくる響也とカレンに気がついて、手を大きく振る。


「どうもー!!」


「そいつを殺れ!!」


響也とカレンに、のんびりと手を振り返している暇は無かった。


架陰に向かって直進する、水状態のバンイップの足止めが先だった。


「えっ!!」


架陰の目の前で、地面を這っていた水が変形し、実体のあるバンイップに変化した。


「グオオオオオ!!」


「うわあっ!!」


架陰は、突然の襲撃に驚きつつも、反射的に腰の刀に手をかけた。


そして、架陰を噛み砕こうと襲ってくるバンイップに一閃する。





ガキイイイイインッ!!






と、耳を劈くような音が木霊した。


架陰の振り切った刀が、ピタリと止まる。押しても引いても、ビクともしない。


「止められた!?」


バンイップの大顎に、刃がピッタリと嵌っていたのだ。


ギシギシと、バンイップの白い牙が、銀の刃に圧力をかけていく。


(まずい、折れる!!)


刀の強度を、バンイップの顎の強さが勝っていることに気づいた架陰は、直ぐに刀を引こうとする。しかし、動かない。


バンイップの背後から響也が攻め入る。


「架陰!! じっとしていろ!!」


バンイップが架陰の刀を噛み砕く前に。


架陰がバンイップに噛み砕かれる前に。


(こいつを殺る!!)


響也は、バンイップの首に狙いを定めた。


だが、上体を捻った瞬間、「パキイインッ!!」と高い金属音が響き渡り、架陰の刃が粉砕した。


「僕の刀が!!」


「くそっ!!」


バンイップの頭がぐらりと動く。もう響也に、狙いを定め直す時間は無かった。


「命刈り!!」


横薙の斬撃を放つが、刃はバンイップのとんがった耳を掠めた。


(急所を外した!!)


バンイップの猛攻は止まらない。


バリバリと顎で口内の刃を噛み砕き、今度は架陰を喰らおうと大口を開けた。


「来るな!」


架陰は拳をぐっと握りしめる。


「魔影・・・弐式・・・」


精神を集中させると、皮膚の表面から黒い霧が染み出した。それを、右拳に纏わせる。


「【魔影拳】!!」


黒いオーラを纏った拳が、バンイップの額を殴る。その瞬間、額と拳の間で衝撃波が発生した。



ドンッ!!



とバンイップの脳天を衝撃が駆け巡る。


「グオオオオオ!?」


バンイップは白目を剥いた。


そして、プツンと意識を失うと、そのままアスファルトの上に付した。


気絶したバンイップを見て、響也は「脳震盪を起こしたのか?」と戦闘体勢を解除した。


The Scytheでコツコツとバンイップの頭を叩くが、バンイップは動かない。


「完全に気絶しているな・・・」


架陰の方を振り向く。


「何をしたか知らんが、よくやってくれた!」


「・・・、は、はい・・・」


架陰力無い声で頷いた。


架陰の手から、柄だけとなった刀がずり落ちる。カシャンッ!!と音を立てて、アスファルトの上に転がった。


「・・・、痛い・・・」


架陰の右腕が、青紫に腫れているのだ。


「架陰!?」


「架陰くん!?」


響也とカレンが慌てて駆け寄る。


「すみません・・・、魔影の威力に、僕の腕の骨が耐えられなかったみたいです・・・」


架陰の腕は、複雑骨折を起こしていた。








その③に続く








武器図鑑【鉄刀】


市原架陰が使用する武器。通常の刀の形をしている。軽さも、切れ味も、握り心地も「平均的」。SANAが開発した量産型の武器である。基本的に、新米のUMAハンターに支給される場合が多い。


だが、何故かクロナが使用していた。

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