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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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伝説 再び その②

氷に眠るのは英雄の像


抱きしめれば凍り


砕けば忘れる


目次禄の名のもとに


場面は移り変わる。


「はあ…、はあ…、はあ…」


百合班三席『三島梨花』がアクアを、百合班四席の『葉月』がココロを抱えて、舗装道路沿いに走っていた。


首だけで振り返ってみるが、スフィンクス・グリドールからの刺客である嬉々島や、豪島が追ってくる気配は無い。


「…このまま…、逃げられるか…?」


三島梨花がそう呟いた時、背中に負ったアクアが言った。


「…まずい状況ね…」


「え…?」


「スフィンクス・グリドールが来た」


数秒遅れて、ねっとりとした気配が辺りに充満し、四人の頬を撫でた。


背筋に冷たいものが走るのを感じた三島梨花と葉月は、思わず立ち止まる。


そして、気配が漂ってくる、崖下の森に目を向けた。


「…なにこれ!」


「こんな殺気…、初めてだよ!」


「そう言うことよ」


アクアがぐったりとした状態で言った。


「あんたたち…、逃げるなら、覚悟決めた方がいいわよ…。スフィンクス・グリドールは、架陰を襲った後、確実に私たちも捕まえに来るわ…」


「そんな…」


葉月が泣きそうな声で、三島梨花に訴えた。


「ど、どどどどど、どうしましょう! 梨花さん! 私たち、このままじゃ…」


「こら! 葉月! 女が半べそかくんじゃない!」


「だってえ…」


そういう三島梨花も、頬に玉の冷や汗を浮かべていた。


奥歯を噛み締め、舌打ち交じりに、殺気が漂ってくる方向を見つめる。


スフィンクス・グリドールは、おそらく架陰と逃げた香久山を追っている。


我らが班長、香久山桜は、「私のことは気にしないで逃げてね」と、この任務の前に二人に言っていた。


二人はその言葉を信じて、一心に逃げ続けるだけだ。


だが…。


「………」


もし、班長の香久山が捕まったらどうなる? すぐにでも追ってくるのか? 


その時、我々には勝ち目があるのか?


四天王の一人であるスフィンクス・グリドールから、逃げることができるのか?


どうすればいいかわからず立ちすくんでいた。


すると、アクアがふっと笑った。


「…アクアさん? 何がおかしいんだ?」


唐突に笑うアクアを見て、三島梨花も、葉月も不気味さを感じずにはいられなかった。


アクアは抱えられたまま、また、ふふっと笑った。


「あんたたち…、何とかなりそうよ」


「え…?」


その瞬間、崖の下に広がっている森のある部分から、バキンッ! という音が響いたと思うと、木々を突き破り、土を舞い上がらせながら、青色の氷の塊が突き出した。


「は?」


葉月が間抜けな声をあげ、遠くの森を眺めた。


地面から突き出した氷は、バキバキ、バキバキ…と音を立てながら巨大化していき、やがて空に届かんばかりの氷山と変化した。


冷気がこちらまで漂ってきて、走って火照った二人の頬を冷やす。


「…、おい、アクアさん、なんだよ、あれ」


「見ていたらわかる」


アクアは勝ち誇ったように言った。








「…なるほどね」


スフィンクス・グリドールが、ため息混じりにに言った。


「こりゃあ大変だ」


その時、彼は突如、地面から突き出してきた氷に呑まれ、その名の通り、「氷漬け」にされていた。


辺りには、冷凍庫に放り込まれたような冷気が充満している。


架陰、香久山は無事だった。


氷に、呑まれていなかった。


「…、な、なんだよ」


すっかり腰が抜けてしまった架陰は、その場で、氷漬けになったスフィンクス・グリドールとその氷を見た。


スフィンクス・グリドールが「あーあ」と声をあげる。


氷の塊から顔だけを出した状態で、森の奥に向かって言った。


「おい、そこにいるんだろう? 冷たいんだ。早く出てきておくれよ」


その声に呼応して、ざっ、ざっと、靴が地面を擦る音が近づいてきた。


架陰は思わず身構える。


だが、すぐに彼の精神に取り憑いている悪魔が、「気ニスルナ、敵ジャナイ」と言った。


「…敵じゃない?」

その言葉に、はっとして、足音の方を見た。


現れたのは、高身長の男だった。


年齢は二十代くらい。髪は純白。いたずらっぽい目をしていて、その口元は笑っていた。


すらっとした体格の上に、小麦色のマントを羽織っていた。それが、地面から湧き上がる冷気によってたなびいている。


その姿を見た瞬間、架陰の後頭部に電撃のようなものが走った。


「なん…、だ?」


初めて見る姿。


だが、初めてじゃない。


彼の頭の中で、悪魔が「久シブリダナ…」と呟く。さらには、ジョセフまでもが「ああ、彼か」と、納得したような声をあげた。


悪魔とジョセフ、二人の記憶の中に、その男はいたのだ。


「よお、久しぶり」


男がへらっと笑って手をあげる。


スフィンクス・グリドールが悔しそうに言った。


「現れたな…、十年前…、アクアと共に目次禄の再臨を止めた英雄が…!」


「英雄じゃないさ。『宝来風鬼』と呼んでくれ」




その③に続く

宝来風鬼は、前作『UМAハンターHIKARU』に登場するキャラクターです。


光、アクア、味斗、平泉と共に、十年前の目次禄の再臨を収めた英雄です。


本当は、この話を書く前に前作の話を進めておきたかったのですが、私の気力がありませんでした。


とにかく、「めっちゃ強い人」です。

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