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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
516/530

格の違い その②

山を登れど


空には遠く


雲に登れど


天には遠い


翼を焼かれても


僕たちは何処へも行けない


水の弾丸が飛んできて、嬉々島の手の甲を穿つ。


「っ!」


嬉々島が攻撃が飛んできた方向に目を向けた。


そこには、手を構えたアクアが立っていた。


嬉々島はにいっと笑った。


「総司令官が手を出すか!」


「出すに決まってんでしょうが!」


アクアは半ばやけくそでそう叫ぶと、能力【水操作】を発動した。


彼女の手からゴボゴボと透明の水が湧き上がり、大砲程度の大きさとなり、勢いよく射出される。


「水砲撃ッ!」


「愚かな!」


嬉々島は、迫る水の攻撃に向かって手刀を振り切った。



「【幽鬼羅刹寒風の断り】ッ!」



彼の手から風で構成された斬撃が放たれ、水の塊を消し飛ばす。


さらに嬉々島は、脚に風を纏わせて加速すると、アクアとの間を詰めた。


アクアは咄嗟にバックステップを踏む。


しかし、それよりも先に彼がアクアを捉え、アスファルトの上に組み伏せた。


「くうっ!」


アクアの首を締めながら嬉々島は言った。


「なるほど! 部下を守ることは総司令官の仕事だ! だが! スフィンクス・グリドール様の命で貴方達を捕らえに来ている私の目の前で! その行動は賢明な選択ではないですよ! 総司令官!」


キリキリとアクアの首が締まっていく。


アクアは声を出すことができず、ただ顔を青くするだけだった。


それを見た架陰は、血まみれの身体に鞭を打って立ち上がった。


「あ、アクア…、さん…」


刀を握りなおす。


傍を見れば、ココロもふらつきながら立ち上がっていた。


「てめえ…、アクアを放せや…」


ココロが口を悪くして嬉々島を睨んだ。


嬉々島はアクアの首を締めたまま続けた。


「放してほしかったら、おとなしく降伏してください。アクア様の命は助けて上げましょう」


「……」


架陰の脳裏に二つの選択が現れた。


嬉々島の提案を呑むか、呑まないか。


だけど…、降伏することでアクアの命が助かるなら…。


そう思い、頷きかけた時だった。


アクアが濁った目を二人に向け、口パクで「ダメよ」と言った。


スフィンクス・グリドールは「マッドサイエンティスト」だ。


もし、彼のもとに連行されようものなら、「死」よりも残酷で恐ろしいことが待っている。


それが目に見えたのだ。


「でも…」


架陰が狼狽える。


すると、ココロが「なにやってんだよ、センパイ」と、斬り込むように言った。


「男だろうが…、覚悟、決めろよ」


「ココロ…」


ココロが刀を握りなおし、中段に構えた。


彼女の握る【名刀・秋穂】が黄金色に輝く。


「刀を握っているんだろうが…、だったら、刃に命賭けなよ。誓えよ…、『守り切る』って」


「…ッ!」


ココロは嬉々島を見据えたまま言った。


「『アクアは護る』…『嬉々島も撃退する』。二つに一つじゃない。二つともやるんだよ…、男なら…、刀を握るやつなら、それくらい覚悟決めろ」


「……わかった」


ココロに諭された架陰は、汗を拭い、頷いた。


そして、ココロに合わせて、自らも刀を構える。


「アクアさんを…、助けよう…」


刃を向けてきた二人に対し、嬉々島は冷静だった。


アクアの首を締めながら笑う。


「向かってきますか…、それでもいいでしょう…。いずれにせよ…、私も二つを遂行するまでですから」


嬉々島の反射神経は異常に高い。


おそらく、下手な攻撃を仕掛ければ、すぐにアクアを盾に使うだろう。


ならば、彼が反応できないくらい速く斬り込めばいい。


「これしかないか…」


架陰はゆっくりと息を吸い込むと、【名刀・夜桜】の切っ先に意識を集中した。


ピリピリと、刃の先に、黒い閃光が駆け巡る。


(魔影を…、一点に集中させる…!)


攻撃ではなく、素早さに振り切って…。



その瞬間、アクアが動いた。



手の中に出力した水の塊を、嬉々島の脇腹に押し付けたのだ。


ボンッ!


と、水が炸裂し、嬉々島がよろめく。


一瞬、一瞬だった。


その一瞬の隙を突いて、架陰は刀を虚空に向かって突いた。



「【悪魔大翼・閃天】ッ!」



黒い斬撃が、まるで槍のような形となり、空間を貫きながら放たれる。



そして、無防備になっていた嬉々島の脇腹を抉った。







その③に続く

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