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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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嬉々島VS架陰&ココロ その③

晴天にさようなら


土砂降りに乾杯


風吹け鳴る神白蛇の行進


嬉々島の背中から、墨汁を水に溶かしたような黒いオーラが湧き立ち、空気中で生きているかのように蠢いた。


その物質に、架陰が既視感を覚えていると、嬉々島は得意げに言った。


「これが私の能力…【魔獣・風神】ですよ」


「魔獣…、風神?」


背筋にぞくっとしたものが走った瞬間、架陰の精神に取り憑いている【悪魔】が、彼の脳内に語り掛けた。


(気ヲツケロ…、架陰…、コイツハ、【悪魔】ダ…)


悪魔…?


架陰は視線を少し上げて、嬉々島の背後の黒い影を凝視した。


架陰の視線に呼応するように、黒い影は蠢く。


(スフィンクス・グリドールト戦ッタコトハ覚エテイルカ?)


「は、はい…」


悪魔の問いかけに対し、架陰はこくっと頷いた。


思い出すのは、ハンターフェスで、四天王の一人であるスフィンクス・グリドールと戦った時。


スフィンクス・グリドールの能力は【千里眼】と言って、その名の通り、半径四千キロの空間全てを視認することができる力だった。


そして、その常識外れの能力は、スフィンクス・グリドールが人工的に自身に宿らせた、【下級悪魔】の恩恵によるものだったのだ。


「もう気づいているかもしれませんが…」


嬉々島は白衣を揺らしながら言った。


「我々、スフィンクス・グリドール一派は、全員身体に【悪魔】を宿し、悪魔が保有する能力を使用することができます。そう…、架陰様、貴方の【魔影】の能力のように…」


嬉々島が指をパチンッ! と鳴らすと、指先に白い竜巻が発生し、渦を巻いた。


「最初に教えておきましょう…、これは、私が私の身体に宿らせた【魔獣】の能力…、【風神】です。風を収束させて飛ばしたり、自身に風を纏わせて、高速移動だってすることができるんですよ」


「魔獣…?」


その疑問には、架陰の悪魔が答えた。


(架陰…、魔獣トハ…、ソノ名ノ通リ、【悪魔の獣】ダ。ワシノ様ニ、口ヲ利クコトガデキナイ分、能力ノ出力ガ高イ)


「それって…、お前よりも強いってことか?」


「それはありませんよ」


まるで架陰と悪魔の精神内の会話を盗み聞いたように、嬉々島が答えた。


「私に宿らせている【魔獣】は、低級悪魔に分類されるものです。確かに、他の低級悪魔と比べれば、能力値は高いですが…、十年前に、【目次禄の再臨】を引き起こし、世界を滅亡させようとした、【悪魔の王】には敵いません。月と鼈でございます」


「………」


嬉々島は目を細めて続けた。


「まあ…、それも、肉体があっての話ですが…」


その挑発するような言葉に、悪魔は舌打ちをした。


架陰は「そうか…」と思う。


詳しくはわからないが、彼の精神に取り憑いているこの【悪魔】は、十年前に、目次禄の再臨を引き起こした。つまり、「弱いわけがない」…、むしろ「最強」なのだ。


だが、今の悪魔は、架陰の身体を借りていないと生命活動を維持できない、弱体化した存在。


スフィンクス・グリドール一派しかり、悪魔の堕彗児しかり、こうも自信満々に架陰を襲撃してくるのはそのためなのだ。


「さあ、続きと行きましょう」


嬉々島が手首から生えた刃を構える。


「能力の種明かしもしました…、これで【平等】です」


ダンッ!


と、アスファルトを踏みしめ、嬉々島が低い姿勢を維持しながら迫ってくる。


架陰は一度考えるのを辞めて、【名刀・夜桜】を中段に構えた。


秋穂を握ったココロが、架陰と嬉々島の間に割り込んだ。


「てめえ! ボクを除け者にすんなッ!」


ギンッ!


と、耳を劈くような金属音を響かせながら、ココロが嬉々島の刃を受け止めた。


嬉々島が目を丸くし、「おっと」と声を発す。


さっと、右脚をココロの股下に滑り込ませ、素早く払いのけた。


ココロは大きく体勢を崩す。


「くそが!」


ココロはすかさず上体を捻ると、アスファルトに左手をついた。


腕力の反動を利用し、嬉々島の顎を蹴り上げる。


思わぬ反撃に、嬉々島は呻き声を上げて後ずさった。


その隙を突いて、架陰が斬り込む。


「悪魔…」


至近距離で黒い斬撃を放つために、握った刀に力を込める。


嬉々島の眼球が、赤く光った。


その瞬間、通りを冷たい風が吹き抜けた。


嬉々島の姿が、一瞬にして二人の視界から消え去る。


「な…、消えた?」


反射的に上を見ると、足裏に竜巻を纏わせた嬉々島が、満面の笑みでこちらを見下ろしていた。


能力【風神】による、飛翔能力…。


「ああやって応用もできるのか…!」


いや、驚くべきことはそれじゃない。


嬉々島は、攻撃を仕掛けようとした架陰の視界から、一瞬で消えた。つまり、架陰やココロが目で追うことができないほどの加速力を持っているということだ。


「少しずつ気づいてきましたね」


「……」


嬉々島は楽しそうに言った。


「私の能力は、単に風を起こすだけではありません。風をを応用し、加速…、斬撃、防御…、戦闘に置けるあらゆる局面で有利に働かせることができます」


すると、空中に浮かぶ嬉々島の刃の周りを、白い竜巻がとりまき始めた。


「これが、貴方たちヒラのUМAハンターと、我々、四天王に仕えるUМAハンターの違いですよ」






第156話に続く


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