表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
508/530

【第154話】 スフィンクス・グリドール動く その①

命の味を知っているかい?


まずは舐めてみることだね

道端に停めてあったワゴン車に乗り込んだ三人は、帰るために走り出した。


アクアが運転席に座り、その後ろの座席に、ココロ、架陰が座る。


アクアは前方を見たまま、後ろの二人に言った。


「寝てていいわよ」


「あ、はい、ありがとうございます」


「言われなくもわかってら」


ココロはそう言うと、座席を倒してすぐに目を閉じた。


架陰もお言葉に甘えて、座席を倒す。


二人が眠り始めたのを確認して、アクアはワゴンのスピードを落とした。ここからは安全運転で帰るらしい。


ひと一人と見かけない山道を、シルバーのワゴン車が駆け抜ける。


三十分としないうちに、架陰とココロの寝息が聞こえた。


「寝ちゃった…」


アクアはバックミラー越しに二人の顔を見てくすっと微笑んだ。


「しかし…、最近、変なことばっかり起こるわね…」


そんな独り言をもらす。


悪魔の堕彗児らによる、城之内カレンの誘拐に始まり、今回の笹倉の襲撃。そして、突如現れた、ココロという、「一代目鉄火斎」と何か深い関わりを持っていそうな少女。


このすべてが、悪魔の堕彗児らが崇める『王』とやらに関係しているのか。


そして、十年前に起こった、『目次禄の再臨』と関係しているのか。


謎は深まるばかりだった。


「ああ、もう、めんどくさいわね…」


自分で考えをめぐらせ、自分で舌打ちを打つ。


それから、思い出すのはある人のことだった。


「早く帰ってきなさいよ…、風鬼さま…」


言った後ではっとして、後ろのココロと架陰の方を見る。大丈夫、聞かれていなかったようだ。


「ああ、もう」


赤面しながら、ハンドルを右に切る。


「まーた、初恋の相手、思い出しちゃったよ…」




その時だった。




ドンッ!


と、ワゴン車の屋根に、強い衝撃が走った。


ワゴン車はガタンと揺れ、制御を少し失う。


「え…」


アクアはスピードを緩めた。


なんだ? 何かが降ってきた? 落石か?


そう考えている間に、再び、「ドンッ!」と衝撃が走る。


音によって、眠っていた二人が目を覚ました。


「アクアさん…、今のは?」


「わからないわ」


アクアはブレーキを踏んだ。


その瞬間、アクアの頭上にある天井から銀色の刃が飛び出してきた。


「え…」


背筋がぞっとする。


瞬間、この衝撃が落石によるものではないと悟ったアクアは、身を捩りながら、ハンドルを切った。


ギャアッ!


と、ワゴン車のタイヤが地面を擦り、横向きにドリフトする。


辺りに焦げた臭いを漂わせながら、右側のガードレールに突っ込んだ。


ガシャンッ!


ガードレールが大きく歪み、衝撃で車の窓ガラスが割れる。


「二人とも、すぐに逃げて!」


言った瞬間、ワゴン車の屋根が、「ギャリンッ!」という異音を立てて吹き飛んだ。


アクアはすぐに拳に力を込めて、頭上に向かって放った


「【水拳】ッ!」


水を纏った拳が、屋根の上に「立っていた」者に直撃し、天高くに吹き飛ばした。


「あ、アクアさん…」


「よくわからないわ! でも、これは襲撃よ!」


何が起こっているのか理解できないまま、アクアと架陰、そしてココロは、慌てて大破したワゴン車から這い出た。


まだ山道は抜けていない。人の助けを呼ぶこともできない。


そんな中、三人の目の前に、一人の男が立ち塞がった。


「こんにちは、お三方…」


医者のような白衣を身に纏い、銀色の髪の毛はかき上げてオールバックに。眼球は、、カラーコンタクトのように赤く染まり、頬は病人のように白い。


人間なのか、それとも、悪魔の堕彗児なのかわからない見た目をしている。


「だ、誰だ…?」


架陰が真っ先に尋ねた。


こんな男、見たことが無い。出会ったことが無い。


「おっと」


白衣の男は恭しく頭を下げた。


「これはこれは、自己紹介を忘れていました。それなのに、突然の襲撃を、お許しください…」


顔を上げる。


にやっと笑った口元が気持ち悪かった。


「私の名前は…【嬉々島荒田ききしまあらた】…。ご安心を、皆さんが警戒する、悪魔の堕彗児とは関係がありません」


「じゃあ、一体…」


「我らが主…、【スフィンクス・グリドール】様の命令により、あなたたちの身柄を拘束に参りました」


「す、スフィンクス・グリドールだと…?」


架陰の脳裏に、あのマッドサイエンティストの顔が浮かんだ。




その②に続く


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ