初めての共闘 その②
蜥蜴を見つけたら
茂みに帰してやろうと思う
恩返しを望みながら
切れた尻尾を見つめながら
2
「で、どうするの?」
架陰はリザードマンを見ながら、隣のココロに聞いた。
「このまま、ワンマンプレイを続けるわけ?」
「言い方が悪いな」
ココロは舌打ち混じりに言った。
「ボク一人で十分だって言っているわけ」
「やられそうになったクセに」
「もう慣れたよ」
ココロは、足袋を履いた足で、軽く地面を蹴って跳ねると、刀を下段に構えた。
呼吸を整え、心臓の鼓動を制限する。
風が吹き付けたタイミングで、再びリザードマンに向かって斬りかかった。
「今度こそいける!」
「また勝手に…」
架陰もまた、ココロを援護するために走り出した。
ココロの接近に、リザードマンが爪を研いで身構える。
ココロは姿勢を低くして、ぬるりとリザードマンの懐に潜り込んだ。
「心響流…、一の技…!」
刀を斬り上げる。
「【一条】ッ!」
しかし、渾身の一撃は虚しく空を斬った。
リザードマンが上体をのけ反らせて躱したのだ。
「こいつ…! どんな動体視力をしているんだよ!」
リザードマンは、身体を戻すときの反動で、ココロに爪を振り下ろした。
咄嗟に防ぐ。
ギンッッ!
と甲高い金属音が響き、彼女の身体が数センチ後ずさる。
「この…!」
何とか踏みとどまったココロは、奥歯を食いしばると、強引にリザードマンの突破を試みた。
「ココロ! 無茶だ!」
すかさず、架陰がリザードマンの背後に回り込み、刀を振る。
しかし、リザードマンはそれに気づいて、上空に跳躍した。
「気づかれた…!」
「センパイ! こいつ、なかなかさどいですよ!」
上空に逃げるリザードマン。
差し込む太陽を背に、その黒光りの体表をうねらせ、鋭い爪を反射しながら二人に襲い掛かる。
ギンッ!
先に狙われたのは架陰の方だった。
「くっそ!」
何とか防いだ架陰は地面を擦りながら後退する。
その間隙を縫って接近するリザードマン。
自慢の爪を使い、連撃を架陰に叩きこんだ。
ギンッ! ギンッ! ギンッ!
と、甲高い金属音が立て続けに響き渡る。
「くそ!」
一撃一撃が重い。
防戦一方でいると、すぐさまココロが援護に入った。
「センパイ!」
「ココロ! 二人で叩きこむよ!」
架陰はココロの位置を把握すると、リザードマンの攻撃を受け流し、奴を茂みの方にまで追い込んだ。
一度離れる。
そこから、合流したココロと共に、二人同時で攻撃を叩きこんだ。
「魔影刀ッ!」
「一の技! 【一条】ッ!」
二つの斬撃が、同時にリザードマンに迫る。
リザードマンは紙一重のところで身を捩らせて、その攻撃を躱そうとした。
ボンッ!
と鈍い音が響く。
次の瞬間、リザードマンの右肩から脇腹にかけての肉が、斬撃によって痛々しく抉れた。
抉れた場所から、赤黒い血が吹き出す。
「やった!」
「まだだ! 叩きこめ!」
一度リザードマンと戦ったことがある架陰だからわかることだった。
リザードマンは優れた再生能力を持っている。この程度の傷、十秒もあればすぐに治してくる。
治される前に。
「止めを刺すッ!」
架陰はさらに一歩踏み出すと、刀の切っ先に魔影を纏わせた。
「【魔影】…、弐式…、【魔影刀】」
黒い刃を、リザードマンの首に向かって突き刺す。
「はあっ!」
切っ先から放たれた衝撃波が、リザードマンの首を吹き飛ばした。
その③に続く




