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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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夜の秋穂 その③

世界に一つだけの秋穂


「大丈夫? 八坂くん!」


先に走っていった架陰が慌てて戻ってくる。


八坂はライフルの銃口を下ろすと、すくっと立ち上がった。


「はい、大丈夫です…」


「そう…、よかった」


「すみません」


八坂は素直に謝った。


「気配を感じたと思ったんですが…、勘違いだったみたいです」


「ううん、この山にはUМAが出るって話だから…、おかしくない話だと思う」


「いや…」


そういうことにしておいた。


やりきれない感じでライフルをバックにしまっていると、にやにやした真子が彼の肩をポンポンと叩いた。


「うひひひ、八坂さん、張り切っているんじゃないッスか?」


「そんなことないさ」


「張り切りすぎて、私の足を引っ張んないでくださいッスよ~」


「お前…、撃ち殺すぞ」


「おお、怖いッスね」





念のために、八坂が「視線を感じた」と呼ばれる茂みの中に足を踏み入れてみたが、やはり、何もいなかった。


逃げたのか…。


それとも、八坂の勘違いだったのか。


はたまた、「姿を消せる」能力でも持っているのか。


「とにかく、今は移動しよう」


「わかりました」


心の中に、小さな棘が刺さっているような不快感と共に、三人は再び歩き始めた。


すると、前方から二代目鉄火斎の声が聞こえた。


「おーい、何やってんだよ!」


顔を上げると、岩場の上に昇った鉄火斎が、炎を纏った刀を振ってこちらに合図を送っていた。


「こっち来いよ! 身を隠せそうな場所が見つかったぜ!」


「はい、わかりました」


架陰はこくっと頷くと、歩く足を速める。


八坂はうんざりして、俯いた。


(あの二代目鉄火斎って男…、馬鹿そうだな…)


先ほども、自分勝手に飛び出して行った。きっと、ろくな奴じゃない。


身を隠せる場所を見つけたって言ったって、どうせ、岩陰だろう。


(岩陰なら、他のUМAも寄ってくるからな、見つかりかねないぞ…)


とりあえず、呼ばれた岩場に向かった。


案の定。


と言うべきか、二代目鉄火斎が三人を案内したのは、岩場にぽっかりとあいた洞窟だった。


奥行きは、五メートルほど。地面が湿気ているものの、雨風は難なく防げそうな場所だ。


架陰も八坂と同じことを思ったのか、二代目鉄火斎に言った。


「二代目鉄火斎さん、もしかしたら、他のUМAの住処かもしれませんよ?」


「いや、大丈夫だな」


何故か自信満々に頷く。


「臭いが無い」


「臭い?」


二代目鉄火斎はにやっと笑って、自身の鼻を指した。


「オレは、十四年間山の中で暮らしているからな、鼻が発達しているんだよ」


「へえ、初耳」


「うん、言ってなかったからな」


「それで、鼻がいいと何ですか?」


「だから、この洞窟からは、獣の臭いがしねえんだよ」


二代目鉄火斎は地面の湿気た土を掬った。


「オレの嗅覚舐めんなよ。とにかく、暫くここに生き物は近づいていない。逆に、ここを出て少し歩いたら獣道になっているんだ。下手に動き回るよりも、確実にここを拠点にした方が一番だと思うぜ」


「そうですか」


架陰は振り返って、八坂と真子に意見を求めた。


「どう思う?」


「どう思うって言ったって…」


八坂は歯にものが挟まったような気分で頷いた。


「そうするしかないでしょうが」


真子もこくっと頷く。


「そうッスね! そうしましょうッス!」


ということで、その日の拠点は、その洞窟となった。


四畳ほどの空間に、四人が入る。


窮屈だったが、十分収まった。


「まあ、確実にUМAが襲って来ないとは限らないから、見張りは付けた方がいいかもな」


「ああ、そうしましょう」


架陰は、二代目鉄火斎の意見に素直に頷くと、サバイバルバックの中から、白いメモ帳を取り出し、手で四等分した。


「無難に、くじで決めましょう」


昼間はいいとして、獣たちが活動を開始する夜。


「二時間交代でいいですね」


「はい」


「それでいいッスよ」


四等分した紙に「一」「二」「三」「四」よかき込み、小さく折りたたんで、手の中でかき混ぜる。


そして、適当に全員に配布した。


くじを開ける。


「あ、僕は三番ですね」


架陰は「三」の数字を。


「僕は一だな」


八坂は「一」の数字を。


「お、オレは二か」


二代目鉄火斎は「二」の数字を。


「私は四ッス!」


真子は「四」となった。


「じゃあ、夜になったら、この数字の順番に、二時間ずつ見張りをしましょうか」






第141話に続く










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