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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第137話】 魔影・伍式 その①

悪魔まであと六歩


「魔影、伍式…!」


その瞬間、架陰の周りを取り囲んでいた漆黒の魔影が、一斉に彼の身体を取り巻いた。


闇に埋もれる架陰。


その様子を、鬼丸は身構えて見た。


(魔影…、伍式だと?)


それはつまり、肆式のさらに上を行く形態ということか?


「よくわからんな…」


鬼丸は金棒を握り締めると、虚空に向かって振り下ろした。


その瞬間、金棒から、赤い衝撃波が放たれ、魔影に取り囲まれる架陰に迫った。


衝撃波が命中する寸前、架陰が魔影の繭の中で、【夜桜】を一閃した。


バシュンッッ!


と、今までに無い音を発して、魔影から黒い斬撃が放たれて、鬼丸の放った衝撃波を相殺する。


「……!」


鬼丸は静かに驚いた。

 

「見えていたのか…?」


いや、違うと確信する。


鬼丸ほどの武人ならば、目に見えずとも、相手の気配で状況を把握し、それに最適な対処を取る。


今、衝撃波が違づいた時、架陰はそれに近いことをやってのけた。


五感を全て活用した、超反射。


「面白い」


鬼丸はにいっと笑って、金棒を構える。


次の瞬間、黒い繭から、架陰が地面を粉砕する勢いで飛び出した。


「おらあっ!」


「っ!」


一瞬で鬼丸との間を詰めた架陰は、低い姿勢から、名刀夜桜の黒い刃を切り上げた。


ヒュンッ!


と、刃は空を切る。


不意を突いた一閃をギリギリで躱した鬼丸は、体勢を整え、右足を軸に回転して、架陰の脇腹に金棒を叩き込んだ。


むにゅりと、柔らかい感触。


そして、架陰は吹き飛ばされて、ビルの壁に突っ込んだ。


「なんだ…、今の…」


鬼丸は手の中に残る、未だかつて体験したことが無い感触に、額に汗を滲ませた。


手ごたえが無い。


正確に言えば、金棒を一閃したとき、架陰の脇腹にめり込んだ金棒が、彼の脇の肉とあばらを潰す時の感覚がなかった。


まるで、風船に手を押し付けているときのような、柔らかくも硬い感触だ。


「なんだ…」


鬼丸の不安は的中した。


架陰は身体に振り注いだ瓦礫の中から抜け出すと、天を仰ぎ、獣のような雄たけびを上げた。


それから、にいっと笑う。


「ひゃは、ははっはは、はあはははは…」


魔影とは、架陰の中に取り憑く悪魔と、ジョセフの、【悪魔】と【影】の能力が融合してできたもの。


悪魔が暴走しないように影の能力を使って、悪魔の力を抑制しているのが、ジョセフだった。


架陰が能力を発動して、「壱式」「弐式」「参式」と発動するたびに、彼の体は、一歩、また一歩と、悪魔に近づいている。


そして今、彼は魔影伍式を発動したことで、悪魔にさらに一歩近づいたのだ。


「さあ、行こうぜ…」


眼球は白目の部分が赤く染まり、どろっとした血の涙が頬に赤い線を走らせている。


刀。


腕。


脚。


そして、胴回り。


それらに、魔影が集結していた。


それはまるで、甲冑を身に纏った武士のようだった。


「魔影を纏わせる部位が増えただけか?」


いや、違う。と合点する。


肌を這うような寒気。これは、自身が本能的に恐怖している証拠だ。


「おもしろい…」


架陰が勢いよく斬り込んできて、鬼丸に向かって刀を振り下ろした。


先ほど同様、ギリギリで躱す鬼丸。


身を反転させて、架陰の腹に金棒を一突き。


だが、またあのぐにゃっとした感触が、鬼丸の手の中に残った。


「これは…!」


まるで結界のようだ。


彼の胴に纏わりついた魔影が、それ以上金棒を進ませまいとして、衝撃波で金棒を防いでいるのだ。


「くっ!」


腕を振り切って、架陰を吹き飛ばす。しかし、感触は皆無だった。


架陰は空中で体勢を整えると、身を捩った拍子に、刀を振った。


「悪魔大翼」


流れるような一閃。


刃から黒い斬撃が放たれ、空間を喰らいながら鬼丸に迫った。


(予備動作なしの一撃か!)


すぐさま防御姿勢を取る。


しかし、直前で思いなおし、その場から飛びのいた。


ボンッ!


と、魔影の斬撃が直撃した場所の地面から、粉砕されたアスファルトや赤土が勢いよくはじけ飛んだ。


空中に逃げた鬼丸は、その一撃に驚愕する。


「斬撃の威力が、上がっている!」


やはり、直前で感じた寒気は本物だった。あれをまともに喰らっていたら、タダでは済まないだろう。


「まだまだああッ!」


架陰は、目からどろどろの血の涙を流しながら、空中の鬼丸を一瞥した。


すぐさま、夜桜に魔影を纏わせると、天を突くような勢いで振り切る。


「悪魔大翼!」


再び放たれる、黒い斬撃。


三日月のような形をしたそれは、全てを飲み込まんとする勢いで、鬼丸に迫った。


「くっ!」


鬼丸もまた、金棒にエネルギーを蓄積して、迫りくる斬撃に向かって振り下ろす。


「鬼雷砲!!」


鬼の砲撃。


悪魔の翼。


二つの、強力な一撃が、空中で激突した。





その②に続く




魔影・伍式について。


架陰の能力の魔影には、全部で六つの形態があります。壱式、弐式と、数字が上がるたびに、自転車のギアのように、パワーや機動力が増加します。伍式はつまり、五番目ということです。魔影刀や、魔影脚などの部位強化を、一度に「四つ」まで発動することができます。性格も、悪魔に侵食されているので、かなり荒々しくなります。

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