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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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第18話 椿班登場!その③

夜を咲く

梟の目


5


戦いと聞いた途端、鉄平の目が、血に飢えた獣のようにギラりと光った。


架陰に鉄パイプを突きつける。


「てめーも刀を抜きやがれ!」


「えっ!?」


架陰はビクついて、反射的に刀に手をかけた。だが、抜く気にはなれない。


「ま、待ってくださいよ!」


「覚悟決めやがれ!!」


ドンッと地面を蹴った鉄平が襲いかかってきた。


「行くぜっ! 【鉄棍】!!」


鉄パイプの正式名称を叫び、架陰に振り下ろす。


「くっ!!」


架陰は何とか刀を抜いて防いだが、勢いを受けきれず、後方に吹き飛んだ。


(なんでだよー? 勝負を受けたのはクロナさんだろ!?)


腑に落ちないまま、路傍の植え込みに身体ごと突っ込む。


「オラオラぁっ!!」


鉄棍を振り回しながら鉄平が追撃する。


架陰は腹筋を利用して起き上がるが、目の前に鉄平が迫っていた。


「鉄刀!!」


「鉄棍!!」


ギンッ!!と激しい金属音を響かせて、架陰の刀と鉄平の鉄パイプがぶつかった。


架陰の身体がガクンッ!とふらつく。


(打ち負けた!!)


「遅せぇ!」


切り返した鉄平の鉄棍が、架陰の頬を打った。


「うっ!!」


「まだまだァ!!」


さらに連続で鉄棍を振り回し、架陰をなぶっていく。


脳が揺れる。歯が軋む。


(これは・・・、痛い!!)


「オラァ!」


鉄平の細長い脚が、架陰の腹にめり込んだ。


「ぐっ!!」


吐き気と共に胃酸が込み上げた。それを何とか堪え、腹筋に力を込める。


「へえ、いい体幹だな」


蹴りに耐えた架陰を、鉄平は素直に褒めた。しかし、「だがっ!!」と叫んで、架陰の頭を打った。


「がはっ!」


吹き飛ぶ架陰。


「弱いことに変わりはねぇ」










6


架陰と鉄平の戦いを、椿班副班長の山田は傍観していた。


坊主の頭に、堅いものが押し当てられた。


「あんた、副班長ね!」


クロナの拳銃だった。


山田は、銃を押し当てられても微動だにしない。


(何こいつ、気持ち悪い・・・)


山田は、架陰と鉄平の戦いを見ながら、ゆっくりと口を開いた。


「三席ですね」


「・・・、そうだけど?」


「私は、副班長でございます」


「それがどうしたのよ!」


階級の差から、まるで「私にはかなわない」と言われているようで、クロナは苛立ちを隠さなかった。


しかし、次に放った山田の言葉は、全く別のものだった。


「もう二人、いるんですよ?」


「!?」


何かが近づいてくる気配を感じとる。


振り返ると、先端が炎に包まれた矢が迫っていた。


「w-Bullet!!」


直ぐに引き金を引き、弓矢を撃ち落とす。


だが、さらに数十本の弓矢が遠くから打ち上げられ、丁度クロナの頭上から雨のように降り注いだ。


「これは!!」


「椿班の狙撃手の、一人ですよ」


山田は口だけでニヤリと笑い、跳躍して弓矢の射程距離から逃れた。


クロナは舌打ちをすると、アスファルトを蹴り出した。


「舐めないでよ!!」


一瞬で、火矢の届かない場所に移動する。


最初、架陰とクロナを襲った弓矢。てっきり、山田が放ったものだと思っていたが、「三人目」がいたとは。


(けど・・・、弓矢は遅い)


拳銃で撃ち落とした弓矢も、跳ぶことによってかわした弓矢も、クロナの動体視力なら容易に防ぐことができる。


クロナはパキリと指を鳴らした。


「まずは副班長を片付けさせてもらうわ!!」


弓矢の襲撃を気にしながら、山田に襲いかかる。


しかし、山田はまたしても微動だにしない。


「甘い・・・!」


次の瞬間、クロナの肩がカッと熱くなった。生温かい血が吹き出す。


「えっ!?」


山田は、ニヤリと笑った。


「四人目ですよ」


「ぐっ・・・」


クロナは肩を抑えた。手の隙間から、血がどくどくと溢れ出す。一瞬で視界がかすみ、意識が混濁した。


(麻酔銃・・・)


この威力とスピードは、ライフルによるものか。


力が抜けて、右手から銃が抜け落ちた。そして、その場に崩れ落ちる。


クロナが気を失ったのを確認した山田は、トランシーバーを取り出した。


「ご苦労さまです」








7


「ご苦労さまです」


副班長からの連絡を、狙撃手の二人は300メートル離れた廃ビルから聞いていた。


「・・・、了解」と、右目が隠れるくらいに伸ばした前髪の男が応答する。隈が浮いた左目で、クロナを狙撃したライフル【NIGHT・BREAKER】をうっとりと眺めた。


彼の名前は、椿班三席【八坂銀二】。


「やはり、ライフルが最強の武器だな・・・」


「こらぁ! 最強は弓矢っス!!」


自分の武器に酔いしれている男の頭を、お団子ヘアの女子が叩いた。身長は150センチ程で、下手すれば小学生に間違えられかねない体躯だ。


彼女の名前は、椿班四席【矢島真子】。


彼女は、襲撃に使った弓矢、【天照アマテラス】を八坂に見せつけた。


「相手の三席さんが、ライフルの射程に入ったのは、私のおかげっスよ!!」


「ハイハイ・・・、ありがとうございました・・・」


「感謝がこもってないっス!!」


適当に返事する八坂に、矢島は憤慨した。


「てゆーか、早く帰っていい? 新しいザバゲやりたいのよ・・・」


「ダメっすよ。まだ鉄平さんの目的を達成してないっス」


「目的?」


八坂はライフルから目を離し、首だけで振り向いた。


「なんの?」


「忘れたんすか? 『死神をおびき寄せる』って・・・」










第19話に続く






武器図鑑


椿班

班長 堂島鉄平【鉄棍】・・・ただの鉄パイプ。


副班長 山田豪鬼 【不明】


三席 八坂銀二 【NIGHT・BREAKER】・・・ライフル。夜でもバッチリ見える。


四席 矢島真子 【天照アマテラス】・・・撃つと、鏃に炎が出る。通常の矢も放てる。










次回19話「架陰VS鉄平」

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