表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
UMAハンターKAIN  作者: バーニー
440/530

悪魔の姦計 その③

秋休みに風そよぐ


石鎚山のふもとから


鳶鳴く鳴く


紅葉の白滝


「カレンさん!」


架陰は、カレンに巻き付いた触手に指の爪を突き立てた。


思い切り引き抜く。


強靭に巻き付いた触手はびくともしない。


「くっ!」


拍子に、彼の爪が剥がれた。


精神世界なので、実際に爪が剥がれているわけではないが、激痛が彼を襲う。


「くそお!」


血が滴る拳を握り締めて、さらに触手を引っ掻いた。


自傷覚悟でカレンの触手を解こうとする架陰に、カレンの悪魔はあざ笑うように言った。


「おやめなさい。それ以上すれば、自分の魂も削れることになるのですよ?」


「お前はうるせえんだよ!」


悪魔を無視して、カレンの解放に集中する。


「カレンさん! カレンさん! カレンさん! カレンさん!」


壊れたレコードのように、何度も彼女の名前を呼んだ。


何度も触手を引っ掻く。


「カレンさん!」


何度も引っ掻いたおかげで、触手の一部が切れて、カレンの顔が見えた。


「カレンさん!」


手を伸ばす。


その瞬間、架陰に巻き付いていた触手が彼の身体を強い力で引っ張り、カレンから遠ざけた。


「うわあッ!」


「それ以上はさせませんよ?」


「邪魔すんああッ!」


血まみれの手で、触手を掴む。


強く引っ張り、カレンの悪魔を引き寄せた。


「てめえは! うるせえんだよ!」


そのまま、白い顔面に拳を叩きつけた。


バキンッ! 


と乾いた音を立てて、悪魔の顔面が砕け散る。


「何が救済だよ! カレンさんが悲しんでいるだろうが!」


「甘いですね」


砕けが顔面が集結し、再び顔を形成する。


「彼女が元の世界に戻ったとしても、もう二度と、まともには生きられませんよ?」


触手を伸ばし、架陰に絡みつける。


「あなただって、あの子に騙された人間の一人じゃありませんか? あの子の名前は、城之内紅愛。城之内カレンは、自分の偽るための仮の名前です」


触手から消化液が染みだし、架陰の肌を焼いた。


「がっかりしたんじゃありませんか? 今まで共に戦ってきた仲間は、あなたたちを騙していたんですよ?」


「うるせえ!」


架陰は、力技で、その触手を振りほどいた。


「っ! 私の触手を!」


これには、悪魔も驚きを隠せない。


架陰は、泳ぐように悪魔に接近すると、再び、その顔面に拳を叩き込んだ。


「だからどうしたってんだよ!」


砕ける悪魔の顔面。


「カレンさんはカレンさんだろうが! 紅愛なんて知った事じゃねえんだよ!」


カレンに巻き付いていた触手が緩んだことに気が付いた架陰は、すぐに彼女の元へと飛んでいった。


「カレンさん!」


触手を解き、中に囚われていたカレンを引き出す。


「カレンさん! 帰りましょう! みんなが待っています!」


しかし、カレンは目を閉じたまま。肌は雪原に立たされたように白かった。


「カレンさん…」


「諦めなさい!」


背後から触手が飛んできて、架陰の腹を貫いた。


架陰は口から血を吐いて悲鳴を上げた。


「あああああああああああっ!」


触手はずぶずぶと彼の体内に食い込んで、彼の肉を抉った。


「痛いでしょう? 魂に直接傷を付けているのですからね」


「いい加減、おとなしくしろやあ!」

 

そう叫んだ瞬間、架陰の悪魔が俊敏に動き、カレンの悪魔の首を吹き飛ばした。


「悪イナ、コノママ、ヤラセテモラウ」


「目次禄の獣…!」


触手の力が弱まる。


その隙に、架陰はカレンの肩を強く掴み、上下に揺さぶった。


「カレンさん! 目を! 目を覚ましてください!」


「…………」


カレンは目を覚まさない。


覚まさないどころか、頬の辺りが黒く染まり始めた。


まるで、闇に溶け込むようにして、彼女の身体が黒くなっていく。


「カレンさん…!」


悪魔が慌てて叫んだ。


「架陰! 早クシロ! ソノ女ガ完全ニ取リコマレル!」


「取り込まれる…?」


架陰の手の中から、人の気配が消えつつあることに気が付いた。


「まさか!」


振り返って、生首だけとなったカレンの悪魔を見る。


心なしか、ニヤリと笑ったような気がした。


「カレンさんが、カレンさんじゃなくなるのか!」


だめだ。


そんなことはさせない。


カレンは必ず連れ戻す。そして、今まで通り、響也、クロナ、そして、架陰の四人で、UМAと戦う。


絶対に、失ってたまるか。


「城之内ッ! カレンッッ!」


次の瞬間、架陰は、爪の剥がれた手をカレンの胸に伸ばしていた。


ずぶっと、液状になりかけていた彼女の胸に、架陰の手が沈み込む。


叫んだ。


「帰って! 来いいいいいいいいいいッ!」







第132話に続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ