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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
44/530

第18話 椿班登場! その②

離れないように

血管を搦め

骨を繋ぎ

手を合わせよう

4


「弓矢!?」


突然、空から飛来した矢に、架陰は困惑した。もしあれが刺さっていればと思うと、背筋がゾッとする。


その時だ。


「おいおい! なかなかやるじゃねぇか!!」


反対車線の方から、男の声がした。


ハッとして見てみると、二人組の男が歩いてくる。


一人は、筋肉隆々の巨大な体躯を持った、坊主頭の男。


もう一人は細身ながらも鷹のように荒ぶる眼光を放っている。


両者、赤いスーツに身をまとっていた。


架陰は、片方の巨漢には見覚えがあった。


(僕に、吸血樹について注意喚起した人だ!)


クロナの目が見開かれ、瞳孔が震える。


「やっぱり、椿班!!」


「椿班・・・?」


クロナの声が聞こえていたらしく、細身の男がニヤリと笑った。


「光栄だねぇ・・・、桜に覚えられているとは」


大男がボソリと言う。


「赤いスーツですからね。目立つんですよ」


クロナの肩が少し震えるのを、架陰は見逃さなかった。


(怖がっている?)


確かにこんな毒々しい戦闘服を着ているのだから、一目でヤクザの仲間を疑うだろう。


細身の男が、赤い革靴で、地面の赤い染みを指した。


「ここ、人が殺されたらしいな?」


「・・・? そうだけど? なに?」


震える声で、精一杯の虚勢を張るクロナ。


細身の男は、さぞかし不思議そうに首を傾げた。


「なんで、お前らがいるの?」


「えっ!?」


「ここ、俺ら、椿班の管轄だけど?」


赤スーツの男の言いたいことは、一瞬で理解した。この道路の中央で起きた、UMAによる殺人事件は、椿班が調査すると言いたいのだ。


だが、そんなの承諾できるわけがない。


クロナは首を横に振った。


「何を言っているの? ここは桜班の管轄よ!!」


細身の男は「やれやれ」と言った。


「わかってねぇな。お前、本当に管轄の地図を見てるのか?」


「見てるわよ!」


「じゃあ、ここが、桜班と椿班の管轄を隔てる・・・、境界線ってことは知ってんだな?」


クロナは歯ぎしりをした。


そうだ。ここは、桜班管轄地域ギリギリの地点。同時に、椿班管轄地域のギリギリの地点でもある。つまり、ここは境界線上にあるのだ。


まさかこんな所で事件が起きるとは思っていなかったから、心配もしていなかったが、実際に、「どちらの管轄か」という点で議論が巻き起こってしまったのだ。


だが、UMAの事件が起きた時、警察が情報提供してきたのは、「桜班」だ。この議論、結果など目に見えている。


細身の男は鼻で笑った。


「まあ、どっちでもいいんだよ。どちらの管轄かなんて・・・」


「どっちでも?」


「ああ、どっちでも、俺らは戦いに貫入する」


細身の男はすっと細い腕を後ろにかざした。丁度、リレーのオーバーハンドパスのように。


すると、沈黙をしていた巨漢が、背中に隠し持った何かを投げる。


「サンキュ!!」と言って受け取ったのは、鉄パイプだった。かなり使い込んでいるようで、所々に錆が浮いていた。


その鉄パイプを、クロナに向けた。


「選べ。ここで引き下がり椿にUMAハントを任せるか・・・、引き下がらず俺らにのめされるか」


「ちょっと待ってください!!」


架陰が横槍を入れていた。


「どういうことですか? あなた達に、そんな権限があるんですか?」


細身の男の高飛車な態度と、クロナに向ける鉄パイプが許せなくて、架陰は反論していた。


クロナが「やめなさい」と言う。


今まで見向きもされていなかった架陰に、細身男の視線が刺さった。


「なんだ、お前?」


ギロりと睨まれ、架陰は竦んだ。


(この人怖い・・・、だけど・・・、どこかで?)


細身の男は架陰に近づいた。そして、舐めまわすように、架陰の体を眺めた。


「貧相な体だねぇ」


架陰の身体付きを嘲笑う男に、「人のこと言えないのでは?」という言葉が浮かんだが、辞めておいた。キレさせてもいけない。


「あら、そうかしら?」


後輩を馬鹿にされて黙っていられなかったのか、クロナが口を開いた。


「あんた、吸血樹の事件は知ってるわよね?」


「ああ、知ってるよ」


「吸血樹を倒したのは、私たち桜班だからね」


「へえ、薔薇班が殺ったんだと思ってたよ」


もう少し驚いた表情を期待していたのに、男は何の反応も見せなかった。もう知っているのか、信じていないのか分からない。


悔しかったクロナは、さらに続けた。


「何を隠そう! 吸血樹のトドメは、この架陰が刺したのよ!!」


「!?」


初めて、男の口角がピクリと動いた。「へえ・・・」と言いながら、さらに架陰の身体を眺める。


「カイン・・・、どこかで聞いたような・・・」


細身男と、架陰の顔と顔が、数センチの所まで近づく。下手すればキスをしてしまいそうだ。


にらめっこで負けた時のように、細身の男が吹き出した。


「ワハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」


天を見上げて、大口を開けた下品な笑いに、架陰はムッとした。


その瞬間、男から放たれた拳が、架陰の溝落ちにめり込んだ。


「がはっ!?」


「架陰!?」


腹から背骨にかけて、突き抜けるような痛みが走る。


「反応が遅せぇよ」


細身の男は、地面に膝をついた架陰を見下ろして、ニヤリと笑った。


「俺の名前は、椿班班長【堂島鉄平】! 」


そしてこいつが。と、後ろの大男を指さした。


大男は、恭しく一礼をした。


「椿班、副班長、【山田豪鬼】でございます」


堂島と名乗った椿班の班長は、手に持っていた鉄パイプをくるくると回した。


「回りくどい言い方は辞めた」


ピシッと鉄パイプの回転を止めると、今度は架陰に突きつけた。


「俺らは、お前ら桜班を潰しに来たんだよ」


「!?」


「待ちなさいよ!」


クロナが反論する。


「UMAハンター同士の戦闘行為は禁止よ!」


鉄平は、「わかってないねぇ」と大袈裟に首を竦めた。


「知らねえの? お前ら桜班は【C】。俺らが【A】ランクってことを」


「・・・、知ってるわよ」


クロナは渋々頷いた。つい最近吸血樹を倒したばかりなので、申請しても、まだ桜班はCランクなのだ。


鉄平はにんまりと笑った。


「じゃあ、上位ハンターから、下位ハンターに命令だ。ここで、俺らに潰されろ!」


「くっ!」


架陰は吐き気を抑えて立ち上がった。


(何だ、この人・・・、めちゃくちゃなことを・・・言っているじゃないか)


こんなこと、ただの屁理屈でしかない。


だが、ただの屁理屈でも、言われていて心地よいものでは無い。特に、クロナがそうであった。


「じゃあ、確かめてみる?」


腰の拳銃に手をかける。


「クロナさん?」


「架陰・・・、我慢の限界よ・・・。舐め腐ったこいつら、ぶっ飛ばすわよ!!」


「いいねぇ!!」


鉄平は目をギラつかせて笑った。







その③に続く

その③に続く

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