カレン その③
水面に沈む長靴
手を伸ばす始祖鳥
驚く蟹の泡
平原に望む隕石の来報
3
響也が、クロナと架陰に指示を出した。
「三人揃ったと言ったって、お互い、体力的にも、精神的にも限界が近づいている」
「はい…」
特に、一人でカレンの相手をしていたクロナの消耗が顕著だった。
クロナは「私は大丈夫です」と言って、頬を伝う玉のような汗を拭った。
クロナの強がりは無視して、響也は続けた。
「二人とも、カレンの能力はもう理解したな?」
「はい」
能力【茨】。
空間に茨を出現させて、それを自在に動かすことで相手を攻撃する能力だ。
「チャンスはあと一回と思え、この一回で、私たちの全てを使って、カレンを止めに入る…!」
響也は、そう言うと、自分の顔に手を触れた。
「行くぞ…」
「了解」
「わかりました」
目配せだけで、全てを理解する。
「能力【魔影】発動!」
架陰がそう宣言した瞬間、彼の体表から、闇から抽出したような黒いオーラが湧き立つ。
架陰はそれを操り、両足、両腕、そして、名刀【赫夜】に纏わせた。
「肆式…、【魔影脚】+【魔影拳】+【魔影刀】!」
クロナも、自身の能力を発動する。
「能力…! 【黒翼】!!」
叫んだ瞬間、背中の肩甲骨辺りから、架陰の魔影にも似た、漆黒のオーラが飛び出し、身の丈ほどの大翼を形成した。
さらに、響也も能力を発動した。
「能力! 【死神】発動!」
地面から、魔影のような黒いオーラが湧き立ち、響也の華奢な身体を覆う。
形を形成し、黒いマントとなった。
響也の変化はそれだけじゃない。黒いオーラは彼女の顔面を覆い、白い骸骨の面となった。
架陰の【魔影】。
クロナの【黒翼】。
響也の【死神】。
三人同時に能力を発動した。
「さあて、一瞬で決めるぞ! 気を引き締めろよ!」
「「了解!!」」
死神の姿になった響也は、ぬらりぬらりと地面を音も無く這うと、カレンに向かって斬り込んだ。
「手順通りに行くぞ!」
響也の接近に、カレンは空間に茨を出現させて応戦した。
響也は、自身の愛刃【death scythe】を強く握り締めた。
(まずは、私がカレンの攻撃を全て引き受ける!)
しなやかな足で上手くステップを踏むと、長物の遠心力を利用して、滑るように茨を躱していく。時には切断し、確実にカレンとの間合いを詰めていった。
(さあ、カレン、お前はどうでる?)
距離を詰める。
カレンは、地面を蹴って後退した。
「やっぱそう出るよなあ!」
予想通りの行動に、響也は歓喜の声を上げた。
「今だ! 架陰! クロナ!」
「「了解!!」」
カレンを止めるには、この茨の攻撃をかいくぐり、確実の彼女の意識を奪うことができる者が適任だった。
残念ながら、火力に特化した響也の能力ではそれが難しい。
だが、魔影で上手く立ち回ることができる架陰なら。
翼を持ち、立体的な動きができるクロナなら。
(カレンを止められる!)
「行きますよクロナさん!」
「わかってるっつーの!」
架陰は、魔影を纏わせた脚で、地面を思い切り踏み込んだ。
衝撃波が発生し、彼を一気に加速させる。
圧倒的機動力で、彼はビルの壁を駆け抜けた。
クロナもまた、背中に生えた翼を仰ぎ、自身の身体を上昇させる。
二人同時に、後退したカレンの背後に回り込んだ。
「「響也さんっ!」」
「わかっている!」
響也は、カレンとの距離が空いたまま、装備している【death scythe】の三日月のような刃を、地面と平行になるように構えた。
上体を捻り、腰から腕に掛けて、エネルギーを蓄積させる。
すると、響也の身体が青白く発光した。
「死踏…、一の技…【命刈り】…!」
上体を捻り、遠心力を発生させながら、刃を一閃した。
刃から白い斬撃が放たれ、下がったカレンに迫る。
(攻撃を受けたお前が次にとる行動は…!)
カレンに響也が放った斬撃迫る。
カレンは虚ろな目でそれを認識すると、指を鳴らした。
「【薔薇の牢獄】…」
すると、彼女の前の前に、無数の茨が出現して、彼女を守る盾となった。
「やっぱりそうなるよなあっ!」
すべて、手のひらの上の行動だった。
「決めろ!」
「はいっ!」
カレンは今、意識を響也の方に持っていかれている。その証拠に、茨はカレンの前に集中して、背後の防御がおろそかになっていた。
「これなら…!」
「打ち破れる!」
架陰とクロナは、空中で体勢を整えると、それぞれの刀を、カレンに向かって振り下ろした。
「【悪魔大翼】っ!」
「【明鳥黒破斬】ッ!」
第131話に続く




