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UMAハンターKAIN  作者: バーニー
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【第126話】 剣を握る処刑人 その①

僕たちは剣を握る


それが生きる術だと信じて


彼らは首を差し出す


それが救われる道と信じて


架陰が茨に囚われて、地面に叩きつけられる直前、白銀の刀が飛んできて、その茨を切断した。


「っ?」


拘束から逃れた架陰は、すぐさま身を捩り、魔影を身体に纏わせることで落下時の衝撃を緩和した。


と言っても、かなりの衝撃が彼の身体を駆け巡る。


「ぐう!」


息が詰まる感覚に耐えながら、地面を手で押すと、その反動で体勢を整え、カレンから距離をとる。


そして、自分の助けた刀を投擲した少女を見た。


「花蓮さん…!」


「ごめんなさい…、架陰さま…」


城之内花蓮は神妙な面持ちで謝った。


「やはり、見て見ぬふりはできません」


「でも、響也さんが…」


「あの方なら、架陰さまに頂いた【回復薬・桜餅】を食べさせてあります。腕は再生しませんが、止血ができるので、死ぬことはありません」


ぎっと目元に力を入れて、カレンを見据える花蓮。


「あの女の子は、私の、妹です!」


「妹…!」


架陰の身体を電気のような衝撃が駆け巡った。


(やっぱりか…!)


ずっとおかしいと思っていた。


桜班と薔薇班に、同じ名前の女が存在すること。さらには、顔も、体格も、戦い方も似ているということ。


そして、【西原】という執事が両者に仕えているということ。


「あの子の本名は、【城之内紅愛】です。私の双子の妹でした」


「それが、どうしてこんなことに…?」


「おそらく…」


花蓮は口籠りながら言った。


「完結的に言えば…、あの子は、父上に捨てられた子供です」


「捨てられた…?」


驚きのあまり、架陰が花蓮の方を見た瞬間、背筋を這うような殺気が二人を襲った。


はっとして、架陰は地面を蹴る。


そして、花蓮を突き飛ばした。


ドンッ!


と、激しい音と共に、城之内花蓮の立っていた場所に太い茨が叩きつけられた。


悪魔の堕彗子の【蜻蛉】の能力により、彼女の肉に覆われたアスファルトだったが、粉々に砕け、地面の土が粉塵として舞い上がった。


(殺気!)


茨の攻撃を回避しながら、カレンの方に目を向けると、彼女は見開いた目でじっと花蓮の方を見ていた。


そして、歯を食いしばると、心底、彼女のことが憎そうな顔になった。


「私は…! 私は…! 私は!」


私は…。の次の言葉が出ない。


みるみると、カレンの顔から血の気が引いていく。


発狂した。


「ああああああああッッ! ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああッ! ああ! あああああああああああああああああああああああああああああああああッッ!」


「カレンさん…?」


辺りの温度が、心なしか、三度下がったような気がした。


ざわざわと、空気中に黒い粒子が出現する。


それは、寄り集まり、生き物のように蠢き、そして、彼女の身体を覆い始めた。


何かが起こっている。


そんな漠然とした感覚が架陰の身体を突き抜けた。


「カレンさん、何を…!」


カレンの身体は、突如出現した黒い粒子によって覆いつくされた。


その姿は、まるで、魔影を操る架陰のようだった。


何が起こるのかわからず、ただカレンを見つめている架陰の耳元で、悪魔が囁いた。


(クソ…、アノ女、余計ナ真似ヲ…)


「あの女…、って、カレンさんのことか?」


(違ウ! 薔薇ノ女ダ!)


久しぶりに悪魔の怒鳴り声を聞いた。


彼がこうやって気を乱すということは、やはり異常事態ということだろう。


「悪魔…、教えてくれ! カレンさんに、何が起こっているんだ!」


(逃ゲロ!)


悪魔が叫ぶ。


架陰は、その声に跳ね飛ばされるように、その場から飛びのいた。


ボンッッッ!!


土煙が立つ、瓦礫が舞う。


(嘘だろ…? 地面が、抉れた!)


上に飛んで躱した彼が見たもの、それは、悪魔の爪が引っ掻いたような、深い深い溝だった。


(一瞬、カレンさんからものすごい殺気が放たれて…、地面が吹き飛んだ!)


(次ガ来ルゾ!)


「くそ!」


架陰は腰の刀を抜いて、衝撃に供えた。


「来い!」


次の瞬間、荒波に打たれるかのような衝撃が架陰を襲った。


メキャッ!


と、胸の辺りで何かが潰れた音がした。


「がはっ!」


血を吐き、踏ん張ることもできず吹き飛んだ。


「架陰さま!」


すかさず、花蓮が手を伸ばし、架陰の腕を掴んで引き寄せる。


「大丈夫ですか?」


「大丈夫じゃ、ありません…」

 

架陰の口の端からどろっとした血が流れ落ちる。喉の奥から、ヒューヒューと掠れる音が響いた。


「肋骨が、折れた…、それが、肺を潰して…」


「そんな…!」


こんな痛み、夜行に心臓を握りつぶされたときに比べたら幾分とマシだ。


そんなことより、架陰は、カレンの方を見た。


黒い粒子は、彼女を着物の上から覆いつくし、一着のドレスに変化していた。


さらに、カレンの頬に黒い粒子が集まり、「薔薇」の文様を作り出す。そして、彼女の身の回りを取り囲むように、一本の茨が浮遊していた。


「カレンさん…!」


(違ウナ)



悪魔が言った。






(モウ、化物ニナッテイル)






その②に続く




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